チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ランパンの陶器

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ランパンの陶器

■古都、ランパン
ランパンはチェンライから国道1号線バンコク方面に南下していくとパヤオ県の次に現れる北タイの県だ。チェンライから約260キロ。

ランパンは7世紀からモン族のハリプンチャイ王国の都が置かれていた。11世紀にはアンコールトムを建設したクメールのスーリヤバルマン1世に攻められてモン族はビルマへ逃れる。13世紀終わりにはクメールに代わってランナー王国のメンライ王がこの地を治める。そのあと、北タイがビルマに侵略されたのを機にビルマ領となる。タイ、ビルマの争奪戦が続いたが18世紀にビルマを駆逐し、チェンマイ王カーウィラの復興ランナー王朝に統治されることになった。

北タイの歴史はこのようにビルマ、タイ、カンボジアの民族が入り乱れて興亡を繰返し、たいそう判りにくい。スコタイのラムカーヘン大王がタイ文字を作ったのが13世紀末と言われている。だからいわゆる古文書が存在しない。タイは余りにも辺境にあるせいか、中国の「正史」にもほとんど顔を出さない。でもランパンが古来より各民族の争奪の場となった理由がわかる気がする。周りを山に囲まれた盆地でワン川という、チャオプラヤーに注ぎ込む川が流れている。この川沿いに発展した街である。20世紀初めには大量のチーク材が切り出され、ワン川から遠くバンコクまで運ばれて、タイの造船業を支えた。気候は温暖であるし、物資の運搬、中継の要衝であったと思われる。

カオリンが結ぶ姉妹都市の縁
ランパンはタイ最大の陶器生産地だ。日本でいえば益子か瀬戸といったところか。ランパンには200以上の陶器工場がある。ここで生産される陶器はEU諸国を中心に海外にも輸出されている。北欧で気の利いた珈琲セットを買ってみたら、メイドインタイランドだった、ということはありうる。昨年、中国江西省、景徳鎮市の幹部がランパン県知事を訪問し、同じセラミック都市として、相互に専門家や技術・文化の交流発展を目的に姉妹都市提携を結ぶことになった。

ランパンが昔から陶器の街だったかというとそうではない。1960年代、文化大革命を逃れてタイに来た中国人陶工が、ランパンで良質なカオリン(白陶土)を発見し、陶器製造を始めたことに始まる。せいぜい50年の歴史しかない。

カオリンは景徳鎮高嶺山から産出する粘土。長石質母岩の風化でできたもので、粒子は粗いが耐火度が高く、白色を呈する。カオリンは高嶺の中国語読みに由来する。

はてなの茶碗
ランパンの陶器は白色で厚め。焼成温度が低いのか欠けやすい。でも6客で100B以下の茶碗もあり安価であるから、消耗品と割り切って買う。陶器店はランパン市内、郊外にいくつもある。店を覗いて、好みの食器を見つけた時はうれしい。先日、高さ9僂曚匹療鯑歟穗劼鯒笋辰討い拭こちらでは初めて見る形だ。薄緑の釉薬が掛かっていて持った感じもいい。一つ買い求め、家で早速使ってみた。すると高台のあたりが濡れてくる。おお、これは落語にいう「はてなの茶碗」ではないか。


京都清水の音羽の滝のそばにある茶店で、一人の男が飲み終わった茶碗をひねくり回して、「はてな?」とつぶやいている。それを見ていた担ぎの油屋が店の主人に、あの茶碗が欲しいと言って1両という大金で茶碗を譲り受ける。
実は、茶碗をひねくり回していた男、茶金という有名な道具屋で、この男が興味を持った茶碗だからかなりの値打ちモノに違いないと思った次第。

その後、油屋は茶金の店に行き、出てきた番頭に茶碗を見てもらう。値打ちがないという番頭に、そんなはずはないと油屋が食って掛かると、茶金が出てくる。茶金が鑑定しても、これは値打ちのない茶碗とのこと。

油屋が、「これはお前さんが音羽の滝のそばの店でひねくり回していた茶碗だ」と言うと、茶金は「この茶碗はどこも割れていないのになぜか水が漏るのだ」と言って買い取ってやる。
その後、茶金がこんなことがあったと周囲に話すと、割れていないのに漏れる茶碗の話が一人歩き。あれよあれよと評判になって、しまいには帝の耳にも入り、そのお陰で何と千両の値がついて売れた。そこで、茶金は油屋を呼び、こういうわけで千両で売れたと、半分の五百両を油屋に分ける。油屋は大喜び。

我が茶碗をよく見るとヒビが入っていて、それに沿ってお茶が浸み出してくる。でもお茶の温度が茶碗全体に回ると漏れは止まる。ヒビも味わいがあるし、今も愛用している。

「シャム渡来の貴重な茶道具であるから、困ったときはこれを売りなさい」と遺言状に書いておいてもいいが、10Bで購入したと知ったら息子は激怒するだろう。




写真は上からランパンの陶器、ランパンで買った「はてなの茶碗」、日本の湯呑茶碗と急須。日本茶はこれを使用。