チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

アカ族の村を訪ねて 5

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

アカ族の村を訪ねて(5)

■メーチャンタイ村の仏教寺院訪問
国有林で村人達が作業している中に、ぽつんと黄色い僧服の坊さんが立っていた。山の草木を払う時、悪いことが起こらないようお経をあげるために呼ばれたそうだ。名前はパヤップ、年は40位か。トヨタに30日だけ働いたことがある、寺にアメリカ人が3日ほど泊まっていったことがあるよ、などという話をして、あとでメーチャンタイ村の寺に寄ってくれという。名前を聞かれたので「ナカと呼んでください。」と答える。タイ人には「ナカニシ」という発音は難しく、大抵「ナカニチ」か「ナカチ」になってしまうからだ。

メーチャンタイ村はパナセリから6キロほど山を登った所にある。村の人口は200人ほど。かやぶき、竹床の家ばかり、中には古くて傾きかけている家もある。パナセリよりさらに貧しい感じだ。ただ村の入り口にはアカ族特有の鳥居があり、古いアカ族の精霊信仰が残っていることをしのばせる。
集落から10分ほど急峻な岩山を登ったところに寺はあった。先に戻ったパヤップ師と弟子2名が迎えてくれる。寺といっても20畳ほどの板の間の本堂があるだけである。壁は吹き抜けというよりお金が出来たら板を張りましょう、という段階のようだ。テレビ、電燈のための携帯型発電機が動いていた。
カトリックであるミンツーもミンツーのお父さんもお坊さんにはワイ(合掌)して尊敬の態度を示す。
アカ族はもともと古来からの精霊信仰を持っていたが多くの村がキリスト教に改宗している。仏教のアカ族の村というのは珍しい。パヤップ師に聞くと「そうなんだよ、何といってもキリスト教のミッショナリーは金を持っていているからなー、村人に金を配って、子供達を町の寄宿舎にいれてアカ族の言葉や伝統を忘れさせたりするんだよ。俺は逆に村人からタンブン(お布施)を貰って凌いでいる有様だからなー」という。
彼はスクラップブックを持ち出してきて寺院の活動を説明してくれた。子供達をお寺に集めて、寺子屋を開いたり、村人に法話をするなど結構活発に活動しているらしい。

あるページには長いキセルを吸いながらうっとりと横たわる老人の写真があった。「アヘンだよ。結構吸っている人がいた。」次のページの写真では長さ1メートルくらいのキセルが20-30本、仏像の前に積み重ねられている。「みんな集めて燃やしちゃったんだよ。芸術品といってもいいきれいなキセルもあったんだけどナー」。パヤップ師の話はどこかとぼけていて心が和む。アカ族の民族衣装を着た少女達の写真があった。「この子たちは近郊7ヶ村アカ族民俗舞踊大会で優勝したんだ。ここの本堂で練習したんだよ。ナカタ。」とうれしそうに説明してくれた。私の名前はいつの間にかナカタにされてしまった。パヤップ師は熱烈なサッカーファンなのだろう。

■アカ族の誇り
今回、アカ族の村を訪問するにあたって、心の隅にあったのはアカ族の人々が伝統とか誇りをどう保持しているのだろうかという疑問だった。貧しさは仕方ないにしても、それにより人間としての誇りや自立心をなくしていたらいたたまれない気持ちになっただろう。
しかし、短い滞在であったが、それは全くの杞憂に終わった。

パナセリはカトリックの村ではあるが、いくつかの家の戸口には水牛の頭蓋骨が打ち付けてある。ある家を訪問した時、戸口に猫のミイラが2匹ぶら下がっているのに気づき、夜だったのでびっくりしたがこれも古来の風習を伝えるものだろう。
アダムもアカ族の伝統に従って先祖の名前を60代そらんじている。7代前までの先祖が一致しないことを確認しなければアカ族は結婚できない。

アダムの家にはテレビがある。夜になると親戚や村人が集まってアカ歌謡のDVD(カラオケ)を映して、子供も大人も声を合わせて歌う。
ビリーバンバンみたいな長髪肥満体の男性歌手が出てきて、「60代続く我々の伝統を大切にしよう、日々努力してがんばろう」などと歌いながら村人と一緒に高床式住居を建設しているとか、ギターを担いだ歌手が「ふるさとは最高だ、飯もうまいし娘は美しい、ああ誰にもふるさとはある」といった意味の歌を歌いながら村に帰り、民族衣装を着た美女達に迎えられ、餅つきに精を出すとか、主としてアカ族の伝統、文化を鼓舞する内容だった。チャイニーズ・アカと言われるハニ族のDVDのようだが、アダムたちは歌詞を理解できると言う。こちらも漢字がアカ語の下に出るので多少意味がわかる。民族衣装のお姉ちゃん4名がどの歌にもビリーバンバンのバックダンサーとして登場するが、4人のダンスがばらばらで全然揃っていないというのがご愛嬌だった。(続く)


写真は上から「パナセリの子供達」「パヤップ師」「メーチャンタイの子供達」「メーチャンタイ村」