チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

塩の井戸 3

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塩の井戸(3)

■やってきました、ボークルア
井戸の前に「古代の塩井戸」とタイ語で書かれた看板があった。いわれや歴史が書かれたボードは見当たらない。丁度、若い男が井戸から塩水をくみ上げているところだった。仕事中だから邪魔、邪魔、どいててね、などと決して言わないのがタイ人のいいところである。井戸の中を覗き込む。

井戸の深さは10mくらい、ツルベの縄の先に5Lほど入るバケツが付いている。男はバケツをするすると井戸の中へ下ろす。井戸は途中でバケツの直径より少し広い円筒にすぼまっている。円筒の底、すなわち水面までバケツが達すると、長い竹棒を使ってバケツを塩水の中に沈める。そしてツルベを使って、塩水で満たされたバケツを水面から持ち上げ、縄を手繰ってバケツを取り出し、井戸の横に並んだ大カメに中身を注ぐ。

ボークルアの塩水は黒色だ、と書いているネットがあるが、バケツの中の水は少し鼠色がかっているが、底が見えるくらいには澄んでいた。薄墨色といったところか。バケツから垂れる水を指にとって舐めてみる。やはりしょっぱい。海水より少し濃いめだ。そんな様子を塩汲みのお兄さんがにこにこして見ている。

我々2人以外、お客も見物人もいない。あまりののどかさに脱力してしまう。

■塩の製造過程を見る
井戸の前に萱ぶきの小屋があった。多分、と目星をつけて中をのぞいてみる。2つの大鍋で塩水を煮詰めているところだった。大鍋の上にはざるがぶら下がっている。塩水を適宜加えながら煮詰めていくと、塩が鍋の底に溜まってくる。あまり煮詰めると塩の結晶が大きくなって、商品に向かなくなる。塩の煮詰め作業は24時間連続で行われる。かまどの向かい側には粗末なベッドがあった。夜間も鍋を監視しているらしい。煮詰めた塩が荒塩程度になったらざるに上げ、水分を落として最終製品にする。ベッドの横は2,3立方メートルの塩置き場となっていた。

ポリ袋に詰めた最終製品も小屋の片隅にあった。小屋に半裸のおじさんが入ってきた。人の職場に勝手に入るな、と文句を言われるのではないかと、一瞬緊張した。おじさんは愛想よく、この塩、買わない? 2キロ入り1袋で20B,もし3袋買ってくれたら50Bにおまけするよ、という。即座に3袋、6キロの塩を購入した。
あの幻のボークルアの古代塩がなんとキロ30円弱だ。日本の天然塩、岩塩の1キロ1000円以上という値段はなんなんだ。

実は1月前、ナーンに初めて来た時、OTOPの店でボークルアの塩を買った。150g入りの卓上瓶が35B、お徳用500g入りパックが50Bだった。高い買い物をしてしまった、悔しい、後悔で目の前が真っ暗になった、というのは大げさであるが、こんなタイのブータンと言ってもいいような秘境まで来る難儀を考えると、OTOPの塩の価格は妥当といえるかもしれない。

なぜこんなに安いのかというと、原料の塩水はただ、燃料の薪もほとんどただ、製造コストがほとんどゼロということにあるだろう。雨季は塩の生産はお休みになるというが、燃料集めが大変で、薪の発熱量が低くなるというためではないか。

おじさんはすっかり上機嫌になって、重い塩を車まで運んでくれた。50Bの買い物でこんなに喜んでもらえると、こちらまで幸せな気分になる。

■川魚の燻製
これでボークルア訪問の目的を達した。食事時だったので村の食堂に入った。客は地元の人と観光に来たと思しき数人の若い男女。このグループの何人かが、竹紐で縛った飴色の魚を持っている。囲炉裏で串に刺したアユやアマゴをから焼き、もしくは燻製にしたものを見たことがあるが、それに近いものだ。食堂を出て、近くの土産物屋をのぞいてみたが売っていない。
思い切って、それ、どこで売っていましたか、と聞いてみたが村の中で買ったものではないようだった。仕方がない。

彼らが店を出る時、若い女性が寄ってきて、貴方達は日本人か、と聞く。然り、と答えると、この干物を御所望なれば、原価でお譲りしましょう、私達は帰りにまた買えますから、という。道路沿いに山岳民族の露店がいくつか出ていたから、そこで売っていたのかもしれない。

おお、日本人と分かってのご厚意か、コップクンカップと、干物を押し戴く。

25儖未寮邉獷粒きが6枚あった。家に帰って食べてみたがカラカラに乾燥していて煎餅を食べているようだ。そこで酒と水を半々、海水くらいの濃さになるよう塩を入れる。この液に一晩漬けた開きは、しっとりとしてビールのおつまみに最適な一品となった。タイで味わう珍味、もちろん塩はボークルアの塩を使った。


写真上から「井戸と看板」「井戸の中」「塩製造中」「塩のストック」「ベッドと塩」「ボークルアの干物」