チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

チェンマイの養老院

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チェンマイの養老院
老人の面倒は家族や地域で見るから、タイには養老院がないのかと思っていた。しかし身寄りのない老人を世話する施設が北タイに2つ、全国には30くらいあることを知った。パヤオで老人福祉の活動をしているJICAシニアボランティアNさん、それから同じくシニアボランティアとして手芸教育に携わっているSさんとそのご主人、兄、計5人でチェンマイにある国立養老院を見学に行った。この養老院にはJICA協力隊員のMさんが派遣されている。

養老院というから、車を飛ばして、チェンマイ郊外にいくのだろうと思っていたがさにあらず。チェンマイは城壁と堀に囲まれた旧市街を中心に街が広がっているのであるが、本施設は何と堀に面した旧市街の角地にある。東京でいったら、千代田区中央区の一等地に養老院が位置しているわけだ。車で事務所の前まで行く。敷地は広く、大きな木が茂り、花壇もあり、まるで公園のようである。

Mさんは20代後半のしっかりした感じのお嬢さんだ。ま、とりあえず見学して回りましょうか、ということで事務所棟との裏側にあるリハビリ室に行く。懸垂機、歩行訓練台、固定式自転車など、使っている人はいないが、毎日、大学の先生と学生がボランティアで運動指導に来てくれるそうだ。運動参加は入居者の自由意志による。この養老院には120名ほどの老人が入所している。費用は無料。60歳以上で身寄りのない貧しいタイ人なら入れるらしい。村の空き地で寝ているおじいさんがいた、夫婦で杖をついてやってきた、などと入所に至る経過はさまざま、どうも年齢以外にははっきりした入居基準がないらしい。また、出入り自由というか、1週間とか1月とかふらりといなくなって、また戻ってくる、あるいはそのまま戻ってこない。Mさんによると1月に10人くらいの出入りがあるという。実におおらかなタイらしい養老院だ。

次に吹き抜けの大食堂に行く。2週間前の王様の誕生日の飾り付けがそのままになっていて、カラオケ会場のようだ。壁がない建物だから開放感がある。食堂の隅のベンチにおばあさんが三々五々座っている。ソーシアルワーカーのNさんが近づいて、肩に手を置きながら「お年は?、お名前は?」と尋ねる。40歳などと答えるおばあさんがいて、お袋と同じだなあ、と苦笑する。Nさんもここで働くMさんもそれぞれ、おじいさん、おばあさんにどうお、体の調子は?といった具合に声をかけて回る。老人達もニコニコと応対する。すぐに老人の心を掴むことができるのは、さすがプロである。

男性棟に行ってみた。講堂ほどの広い一室にベッドが40ほど整然と並んでいる。いくつかのベッドの上ではおじいさんがもぐもぐ何か食べていた。日本の養老院では許されないのではないか。ベッド室をでたところがトイレ、シャワー室、洗濯場となっている。
日本では寝たきりになると養老院を追い出されて、別の介護施設に転送させられることがあるが、ここでは介護棟があり、そこに寝たきりとなった老人、男女30名ほどが収容されていた。ここでもNさんがベッドの老人をさすりながら優しい言葉をかけてまわる。

半身をおこして微笑んでいる女性は102歳、ほとんど目が見えない。その隣のベッドには認知症のおばあさん、少数山岳民族出身だそうだ・・・介護棟も広い大部屋で職員がほぼ全ベッドを見通すことができる。日中4名、夜2名で紙パンツ、簡易トイレ交換、食事補助等を行なう。日中は大学や高校の実習生が手伝ってくれるというが楽な仕事ではない。天井が高いし、いつも窓は開いているから介護室特有の臭いはない。暖かいということは介護には何よりだなあと認識を新たにする。入り口には老人の写真と名前の一覧表が掲げてある。職員のオバサンは「あ、この人は2週間前に亡くなってね、あ、この人は3日前に死んだのよー」と明るく説明してくれた。何と答えたらいいのか困った。

職員棟の前で、入所しているおばあさんたちが造花の製造販売をしていた。バラのブーケを200Bで買った。花壺だけで60B、コストがかかってるからね、と値引きなし。カタコトの英語交じりでなかなか商売上手だ。おじいさん達の洗濯を引き受けて小遣い稼ぎをしたり、食事の時に出る牛乳を、私は飲まないからと、他の入所者に5Bで売りつけるおばあさんもいるとか。ここでもタイ女性はたくましい。国の施設であるから原則無料、それに結構タンブンに訪れる篤志家もいて、お小遣いには困らない。国の施設ではありながらすべてにわたってユルい。国柄、国民性が垣間見える何かほのぼのとした気持になる施設見学であった。

写真のベッドの上のおばあさんは102歳だそうです。