チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ16ヶ月

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介護ロングステイ16ヶ月

タイで日本人向けの老人介護施設を作ったら、ロングステイ後期に差し掛かった年配者や介護が必要な老親を日本に残してきているロングステイヤーに喜ばれるのではないか、と考える人がいる。北部タイは気候が温暖であるし、日本食も食べられるし、近くに温泉やゴルフコースもある。日本に比べ施設の建設費、物価、人件費が格段に安い。

日本人向けの介護施設がタイにないわけではない。昨年12月にSという高齢者介護、看護施設がチェンマイにオープンした。人から中西さんも見学しては、と誘われたが行かなかった。介護はやはり家族が傍にいるのが本人にとって一番幸せだ思っているし、ネットでみる限りでは費用もそれほど安くは無い。

介護施設Sのシステムは1人の場合、入所金が40万バーツ(約110万円)である。それに月々の費用が4.4万バーツ(約13万円)。24時間体制の完全介護が必要な入所者(多分、母はこれに該当する)については介護士3人X 1.2万バーツ、3.6万バーツの追加費用が要る。そうなると月々の経費は8万バーツ(約22万円)となる。入所金は日本の施設に比べれば安いが、月額の費用は日本とほぼ同額だ。でもこの施設では海外にあるということを考慮して、入居者が亡くなった場合、葬式の面倒を見てくれる。また元気なうちは付属のプール、テニスコートグランドゴルフ場でスポーツが楽しめるし、施設内にはサウナやカラオケ設備もある。近隣のゴルフコースや温泉への送迎サービスもある。コストエフェクトを考えればそう高くないという人もいるだろう。

海外にある介護施設の問題点のひとつは、完全介護とはいっても、やはり日本語で意思疎通が出来ないということである。いくら認知症でも年をとっていても人間としての感情、感受性があり、時にはこちらがはっとするような反応を示してくれる。介護をしている側が幸せを感じる時だ。いくら美味しいゴハンを食べさせてもらえ、夜は柔らかいベッドに寝かせてもらえたとしても、周りはほとんど理解出来ない言葉しゃべる人ばかり、という環境に放り込まれたらどう思うだろうか。自分の言うことは理解してもらえない、相手のいうことはわからない、どれだけもどかしいか、どれだけ疎外された気持ちになるか。人はただ生きているだけではなく、何らかの形で周りの人と言葉を通じ、心を交し合って暮らしているのである。

ここしばらく日本から息子が来ていた。「おばあちゃん、俺、孫だよ」、と結構母の面倒を見てくれた。我々も母に話しかけてはいたが、息子は暇があれば母に付き添っていた。母は彼を孫だと認識することはあまり無いようだったが、彼が一生懸命話しかける努力は理解していたようだ。彼が来てから、母はよく喋るようになったように思う。女中さんは四六時中、母の傍について面倒を見てくれるが、簡単な日本語しか喋れない。これからも出来るだけ母に話しかけ、傍にいつも居ることが必要だと思った。

月末は月一回の通院日である。以前は9時半から診察、と病院から貰ったカードに書いてあれば9時半にはシルブリン病院に行っていた。しかし、よく見るとカードには9時半から11時までに来てください、と書いてある。また女中のブアが構わないと言うので、朝、8時から9時過ぎまでテニスをして、帰宅してからシャワーを浴び、10時に病院に母を連れて行くようになった。今回もチャック、クリス、チェンライ警察のお偉いさん、タニさん達とたっぷり1時間半テニスをしたあと、病院に行った。いつものプルーム医師に診察してもらって、いつもと同じ薬(8種類もある)を出して貰って帰宅する。病院通いもすでに生活の一部となっている。

今夜も母はビールを一缶飲み、女中さんが用意した食事とデザートのマンゴーを食べた。食後にはシャワーを浴びさせてもらった。シャワーのあと、兄の押す車椅子で散歩に出かけた。パターン化した穏やかな毎日だ。

病院に行くのも食事もタイ人の女中さんの介助が必要ではあるが、家族がいつも傍にいるということは介護される側にとっては安心だろう。幸い、我々兄弟には可処分時間が沢山ある。介護はいろいろな人の助けがあれば決して辛いものでも苦しいものでもない。見た目は変らぬ毎日ではあっても笑いもあれば感動もある。だから安いからとか、よく面倒を見てくれるからといった理由だけで母をチェンマイの施設に入れるつもりはない。それに母を施設に入れてしまうのではタイに来た意味がないではないか。

写真はアカ族の子供達