チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

チェンライ発の海外旅行 4

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チェンライ発の海外旅行 4

1966年1月、朝日新聞社の後援を受けて、シルクロード踏査隊がナホトカ経由でソ連へ出発した。タシケントサマルカンド、ブハラなどシルクロードの要衝を探検するためである。隊長は「日本百名山」の著者で知られる深田久弥、4ヶ月に及ぶ旅であった。

当時ソビエト領であったウズベキスタン地方を旅行することは至難の業であって、まさに「探検」の名にふさわしかったのだろう。深田久弥は帰国後に著した「シルクロードの旅」の中でその見聞を書いている。アレクサンダーの通った道をなぞるように辿り、また明治初期の日本の有田焼の大壺をブハラのマハサ離宮で発見している。

井上靖深田久弥を魅了してやまなかったサマルカンドは「イスラムの宝石、青の都」と讃えられている。モスクやメドレセが立ち並ぶレギスタン広場、チムール・アムールの眠るグリ・アミール廟、11の廟が並び、ティムールの一族が葬られているシャーヒズィンダ廟群、1420年代に現代とほぼ誤差の無い1年の長さを計っていたウルグベク天文台など、見所は尽きない。

ウルグベクはチムール大王の孫に当たり、音楽、神学、歴史に造詣の深い賢帝にしてガリレオ以上の大天文学者であった。当時は遠くヨーロッパ、アラブから多くの学者、留学生が集まり、サマルカンド商業都市であるばかりでなく、文化都市としても有名だった。2006年に日本の首相として初めてウズベキスタンを訪れた小泉首相がウルグベク天文台跡を見学し、当時の学問水準に驚嘆したと伝えられる。また少しスケールが違うが、紀元前4世紀マケドニアアレキサンダー大王が、インドへの遠征途サマルカンドを攻略したが、その文明の高さに驚嘆し、賛辞を惜しまなかったと言われている。

サマルカンドは古くからソグド人のオアシス都市として栄えたものの、外敵の攻略にあって、往古の遺物は土の下に埋まったままだ。特にひどかったのは1220年のチンギス汗の攻略で、当時のサマルカンド市街は徹底的に破壊され、住民の4分の3が虐殺され、栄華を極めたソグドの街は荒涼たる平原に変わってしまった。14世紀末にチムール大王がサマルカンドを都と定めた時も、旧サマルカンドではなく、新しい土地を都とした。

井上靖は「若い日の夢」というエッセイの中で次のように述べている。

サマルカンドに空の一角から舞い降りたのは一九六五年の五月である。この年の五月から六月にかけての五十日ほどは、私の生涯でも最良といえる五十日であった。サマルカンド、ブハラ、タシケントといった往古の砂漠の城邑を回り、シル・ダリヤを見、天山を見、パミールを見たのである。私は学生時代、高安敬義君という友人と西域関係の旅行記を漁った時期を持ったが、その高安君は大陸で戦死し、私だけがそれから三十年後に西域の地を踏むことができたのである。この西域のたびから三年経った一昨年の一九六八年に、もう一度、私は西域にはいっている。亡き友のことを思うと、二度も西域にはいったことがすまなく思われるのである』(引用終わり)

自分にとっては、今回が6回目のサマルカンド訪問となる。6回もサマルカンドを訪問して今は亡き井上靖先生に対してすまなく思われないこともない。自分のウズベキスタン赴任は青天の霹靂で準備期間が短く、いろいろの資料を読み込むことができなかった。ウズベキスタンから帰国して、ゆっくりと先人の美しい文章に触れることができた。特に井上靖の「西域物語」は何度も目を通し、気にいった文章をPCに書き写した。サマルカンドを再訪するとなると、それはまた気持の高まりを感じざるを得ない。多少は井上靖の情熱が伝染しているのだ。

このブログがアップされている頃、多分自分はウズベクで悪戦苦闘していることだろう。これだけ先人が賛嘆してやまないサマルカンドに、またエキゾチックで歴史の宝庫であるサマルカンドにどうして日本人旅行者が年間わずか数千人しか訪問しないのか、遠いからか? 距離でいったらヨーロッパのほうがよっぽど遠い。もちろん、自分にはその理由がわかっているが書けない。このブログの第一モットーは「人の悪口を書かないこと」である。「人の悪口」には「その国の悪口」も入っている。独裁国家においては民主国家に暮した人間が書くちょっとした批判でも、充分、国外追放の理由になる。

サマルカンドから見る天山山脈の山並みと同じく、ウズベクは遠くから離れてみているほうが美しいのかもしれない。



写真上は雪景色

日本でレンタル可能なウズベキスタンの映画はこちらです。
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