チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ナボイ市郊外(8)

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サルミッシュ渓谷の岩絵 最終回

岩絵は大きく15グループに分けられ、それらの多くはサルミッシュ渓谷の2キロにわたる川岸の両岸の岩に描かれている。グループの中には天地を表し、明らかに祭祀に用いられたと考えられる岩絵もあるし、野生のヤギの岩絵が数点描かれていて、それらを組み合わせることによってある種のストーリーが浮かび上がってくるものもある。

馬上の人が手にムチを握り、家畜の羊、ヤギ馬を追い、草を食べさせている図もある。この岩絵は当時の典型的な牧畜の様子を表現したものと考えられている。人類が初めて牧畜を営み始めた頃の様子を伝える貴重な資料である。

岩絵はただ単に同じ方法で彫られたのではないらしい。雨が降ると初めて全体像が浮かび上がるともの、太陽光がある角度で差し込むとくっきりと見えるものなど、先史時代の人たちもいろいろ策を弄したたようだ。しかしなぜこのように手の込んだ方法で岩絵を制作したのかについては謎である。

古代岩絵を研究対象とする記載岩石学はまだ歴史の浅い学問である。ウズベキスタンにはサルミッシュ渓谷ばかりでなく、国内145箇所に岩絵が存在している。またカザフスタンキルギスタンタジキスタン、更にはウラル山中、アルタイ山中、パミール高原天山山脈コーカサスにも同様の岩絵の存在が報告されている。現在、考古学者、歴史家、哲学者、芸術家、化学者を含めた様々な分野の専門家が研究に取り組んでいる。どの時代に描かれたのか、なぜ描かれたのか、当時の人々の生活様式、世界観は?

岩絵には多くのミステリーが残されており、これからの研究の進展によっていろいろなことがわかってくるに違いない。
サルミッシュの岩絵にはサク人によって描かれたものがある。サク人とは紀元前2000年から紀元前500年にかけて中央アジアからインドで栄えた印欧語族の一つだ。スキタイ人の先祖と考えられている。パーリ語でサキヤ、サンスクリット語でシャーキャ、SとKの音でわかるように「サク」はゴータマ・シッダールタを生んだ釈迦族のことを表している。お釈迦様は釈迦族の王子として紀元前566年4月8日にインドで生まれた。どこかで岩絵と仏教がつながっているのではないか。サク人-釈迦族については、もう少し勉強して稿を改めてご報告できればと思っている。

さて、一行は博物館に戻った。ここで解散、どうもありがとうございました、でお別れかと思ったら、エガモフ館長が、これから宴会があるからぜひ参加して欲しいという。今日の打ち上げかな、と思い、「喜んで参加しますが、条件が一つあります」と切り出した。一瞬、館長やリポーターの顔に緊張が走る。
「今日の宴会費用をすべて私に支払わせてください。それが条件なんですが・・・」 全員吹き出して、貴方はゲストだから、と軽くいなされてしまった。

6時過ぎから博物館近くにある「ザラフシャン」というレストランで10人ほどの宴会、博物館職員の誕生日パーティーとのこと、館長、レポーターに続いてスピーチを述べる。昼間と違ってこちらもリラックスして、ウォッカをぐいぐい空ける。注がれたウォッカをちびちび飲むのはいけない。呑みたくてもじっと我慢して、「ウズベクと日本の友情のために」、とか「誕生日おめでとう」とか「素晴らしい岩絵のために」とか声をかけるか、声がかかるのを待ってぐっと飲み干すというのが礼儀だということがわかった。

宴会が進むにつれて、通訳のデリジョ君がまるで日向に放り出したホウレン草みたいに元気がなくなってきた。生まれて初めての通訳で疲労困憊したらしい。支払い(ペイ)、をパイ、パン(ブレッド)をブリードなどと発音する。間違いを指摘するとその度に髪をかきむしり、辞書をパラパラめくって、「初めてなんです。すみません、すみません」と謝る。誰でも初めての通訳はそうだから、気にせずドンドン話しなさいと励ますのだが彼の自己嫌悪を癒すには至らなかったようだ。

こっちも酔っているので「ね、ね、今あの人何て言ったの?」と何度も聞いていたら、話す元気もなくなってきたのか、辞書を引いて指で「政治」、「教育」などの単語を指さすだけになってしまった。そして、アー、明日の試験は勉強していないから合格点が取れないです、としょんぼりしている。

昼飯、午後の野外パーティ、夜の大宴会とすべてご招待、思いもかけない充実した岩絵見学と自分にとっては今年1年のツキの90%を消費した、と言われても悔いのない素晴らしい一日だった。しかし、デリジョ君にとっては変な日本人の通訳をやらされ、岩登りでは死にかけるし、試験勉強は出来ないし、今日は仏滅、三隣亡、全くツイていない一日だったようだ。(岩絵の話、とりあえず終了)