チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

本当に日本はいい国か

チェンライ土曜市

人気の寿司、数軒は出店している

フルーツ売り場 アボガドなど

骨董品、掘り出し物があるかも

揚げ物コーナー

 

人出が戻ってきた

 

本当に日本はいい国か

■失われた30年

日本はいい国だ、と常々書いている。ほんとかよ、と思われる方も多いと思う。確かに巷間よく聞く話は日本ダメダメ論だ。「失われた30年」、即ち、デフレ、低成長、低賃金、格差拡大、低生産性、中小企業の倒産増加、少子高齢化、地域の衰退化、といったネガティブな話ばかりである。

確かにここ30年、GDPも賃金もそれほど伸びていない。後期高齢者はいいよねー、高度成長、バブル時代を謳歌して、接待費を使いまくり、そして食い逃げしたんだから、などと給料が上がらない世代にやっかまれている。ネガティブな話にはこの老若の社会分断も加えるべきかもしれない。上記の話は全て事実であり、懸案でもある。問題解決には新たな政策が必要だ。

しかし、カリフォルニア大学サンディエゴ校のウリケ・シェーデ経営学教授は言う。日本の経済状況がそれほど悪いのなら、なぜ世界第3位の経済大国であり続けていられるのか。経済が破綻してGDPが世界20位に落ち込んだとでもいうのか。トヨタやホンダはフォルクスワーゲンGMのはるか先を行っているし、日本以外にプレーステーションや人を夢中にするアニメを生み出す国があるか。(因みにフォルクスワーゲントヨタを不倶戴天の敵と見做し、データ偽造のジーゼル車、欧州を巻き込んだ電気自動車に賭けたが、悉く失敗した)

シェーデ教授は著書、「再興THE KAISHA」の中で、文化から見た日本経済の特質と様々な分野で日本が世界をリードするであろうと述べている。実はこの本は読んでいないのだけれど、偶々、教授の対談ビデオを視聴した。今回はその受け売りである。

 

■経済活動と文化

日本の文化は謙遜の文化である。素晴らしいですね、と褒められた芸術家、職人、料理人等はおおむね「いや、まだまだです」と答える。「そうでしょう、世界中でこれができるのは私しかいませんよ」と言えば、あいつは天狗になったと爪弾きにあう。日本人は、自画自賛よりもう少しやりようはあるのでは、と考えるのが好きだし、そこに進歩がある。批判されるほうが褒められるよりも安心する傾向さえある。

戦後からずっと「日本経済は曲がり角に来ており、もうすぐ奈落の底に転がり落ちる」と経済誌は書き続けてきた。これは編集者が嘘つきだったわけではなく、日本の文化がそう言わせたのであり、日本人は悪くならないよう頑張るはずだ、と信じていたからだと思う。

シェーデ教授はシリコンバレーのような世界を変革させるようなイノベーションは日本では起こりにくいという。ドラスチックな変革は日本では好まれない。最近は転職とか自宅勤務が自由になってきたが、ここに至るには20年、今の若い人や転職市場が育つ時間が必要だったという。20年前の中途退職者(自分がそうだった)は脱藩者扱い、国境で切られても仕方ないくらいに思われていたし、試験的に自宅勤務を命ぜられた社員はおおむね鬱病になった。

日本は安定と協調を優先するから変革のスピードは遅い。シェーデ教授は、日本の企業社会とシリコンバレーとの文化の違いに注目し、文化であるからどちらが優れているとか遅れているかの評価はなじまないという。

 

小錦舞の海

日本経済が「重厚長大」を目指したことがあった。大きいことはいいことだの時代で新日鉄半導体や養魚事業に乗り出し、日立は1000社の子会社を抱えていた。重厚長大は相撲でいえば小錦だ、でもこれからの日本は舞の海で行け、と教授は説く。体を鍛え、技を磨き、俊敏に、小回りを利かせる。電子機器、自動車、機械等に使用される主要先端部品478品目を調査してみたところ、日本企業が50%以上のシェアを有していることが分かった。ニッチではあるが他の国々の追随を許さない分野がほとんど。たとえばフォトレジストは世界の生産量の9割を日本の3社で占めている。日本企業無しでは世界経済は回らない。経済安全保障の上でも注目されていい指摘だ。

現代の小錦は中国だが、小回りが効かず、鍛えてもいない、技は盗むというのだから、日本に敵わないのではないか。おかしなことに韓国も小錦を目指していて、部品工業が育っていない。

教授は先端部材開発に関して大企業と中所企業の協力関係とか積極的に社員に起業、独立、転職を勧めている大企業の存在に注目している。日本は社会を壊すことなくイノベーションを進めている。地震や台風の災害でも日本人はどう行動すればいいかを弁えている。様々な分野で日本は世界をリードすると教授は言う。しかし日本が他国のモデルになりうるかについては、経済行動が文化に根差すが故にそう簡単ではないとも指摘している。