チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ザルツブルグの思い出 2

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ザルツブルグの思い出(2)

前回の続き
2.嬉しさから不安の極地へ
 昨年、化学会社から通産系のシンクタンクに出向し、大学教授、企業幹部、新聞社の論説主幹等、有識者十数名からなるグローバリゼーションに関する研究会の事務局を務めておりました。何回か研究会に列席しているうちに門前の小僧、習わぬ経を読むといいますか、グローバリゼーションについて興味が湧いてきました。それで昨年、経済広報センター(経団連の姉妹団体)で経団連傘下の企業からザルツブルグセミナーの招待参加者を公募していることを知り、研究会で勉強したことを小論文にまとめ、応募してみたところ、それが「当たり」になったという訳です。当たりになったときは無料でヨーロッパに行けると喜んでいたのですが、セミナー事務局から事前学習資料として英語論文のコピーがどさっと届いたころから「背伸びのしすぎだったかナー」と不安になってきました。
 さて、その不安はザルツブルグに着いてまず渡された書類をみて極度に高まりました。
参加者は38ヶ国から61名、ほとんどが博士号か経営修士号をもつ大学教授、官僚、国際機関に務める政策担当者など。また24時間オープンの図書館でセミナー期間中に読むべき本のリスト等々。ザルツブルグモーツアルト生誕の地として知られていますがまさに気分はレクイエムといったところでした。

3.びっくり仰天、突然のパネリスト指名
セミナーは、午前中は有識者による講演と質疑応答、午後は15人程の分科会にわかれての討議というかたちで進められました。何が大変かと言ってもとにかく朝から晩まで英語で、授業はもちろん、朝、昼、晩の食事、午前、午後のティータイムの計5回は必ず38ヶ国61名の誰かがそばにいてお話をしなければならない、正直言って始めはかなり辛いものでした。
 さて、セミナー2日目、日本から元大蔵省財務官で現国際通貨研究所理事長の行天豊雄氏がこられてWTOと世界経済についての講演をされました。行天氏は多忙で講演、質疑応答を終えたあとそのまま飛行場に直行されましたが、そのあと正にびっくり仰天のできごとが起こりました。議長の英国の老外交官、マイケル・パリサー卿が「いまここに日本から3人の友人が参加されておる、ついてはこのお三方にパネリストとなっていただき、『WTO、APECについての日本の立場』というパネルディスカッションをティータイムのあとやっていただこう」と言いだしたのです。英語で言われてなんだか実感が湧かなかったのですが、あとの2人(パリのOECDに出向中の外務省の参事官、ハーバード大学の博士号をもつ大蔵省の課長補佐)がやってきて大変なことになりましたな、と言うに及んで自分のヒヤリングが間違っていなかったことを悟りました。
以前、マニラで開催されたAPECに関する講演を聞いていたので手帳をみながら、まず5分程、今回のAPECの意義について説明することが出来ました。最後のまとめではこれもたまたま手帳に書き留めておいたルーバン大学の A. ジャックマン教授の文章を引用しながら、国際的枠組みを達成するには価値観を共有しつつ相互信頼を醸成していくことが重要であること、ウルグアイラウンド妥結までに9年かかったという例からもこれから強い忍耐心が必要であること等をつたない英語で呼びかけたところ、エジプトの教授が挙手して賛成演説をぶってくれました。90分に及ぶパネルディスカッションはこうして無事終了し、議長のパリサー卿から「グッドジョブ」といわれたときには体中の力が抜けていくように思いました。

4.社交の場、オイリーな西洋人
ザルツブルグセミナーは勉強ばかりでなく社交の場でもあります。お城のホールでのコンサート、ドレスアップしてのパーティ、250年前そのままにバロック様式の装飾のほどこされたホールで、当時と同じく蝋燭のあかりの下で音楽を聴き、ワイングラス片手に歓談するわけです。輝かしいハプスブルグ時代の栄光を暗い蝋燭の下で偲ぶといった雰囲気でした。4日目の午後は、授業はなく、みんなで歩いて20分程のザルツブルグの街まで楽しい遠足です。
 最終日の夜はこれまた、蝋燭の灯りのもと、大ホールに全員正装しての晩餐会、素晴らしい料理、年代物のワイン、講師とフェローのスピーチの応酬、ヨーロッパの重厚な伝統の一端に触れる思いでした。晩餐会のあとは暖炉の太い薪が赤々と燃えるホールでの舞踏会、曲はやがてアップテンポのディスコミュージックに変わり、スエーデンの外交官も、マケドニアブルガリアの女性教授も、欧州議会のベルギー人も、ワシントンの弁護士も、ネクタイを弛め、ドレスの裾を翻して腰をくねらせています。見ていると、踊っているのは南北アメリカ、東ヨーロッパ、EUからの白人ばかりです。「男」と「女」に戻って、激しいリズムに身をまかせて踊り続ける彼らを呆れたように眺めているスリランカの哲学博士に「彼らは脂っこいよね」といおうとしました。でもうまい英語が思い付かず「They are oily」といってみたところ、彼はニヤリと笑って深くうなずいてくれました。

画像はチェンライの市場で撮影