チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

海の幸は貧弱

ロブスターが主役

魚は右手のスズキだけ

転倒のカブトガニ、ひっくり返されている

日本のカブトガニ

三葉虫の化石

田ウナギ、サンサイ市場で



海の幸は貧弱

■魚はあまり食べない国
タイではあまり魚が食べられていないと思う。先ず、魚の種類が少ない。市場のおかず売り場ではテラピアナマズの炭焼きは必ず売っている。鯵に似たプラトゥーという魚の干物もよく見かける。これは鯵にそっくりだがサバ科の魚とのこと。ほぐしてお茶漬けにして食べると美味しい。あとはスーパーの冷凍のサバ、サーモンくらいか
サンサーイの市場では鮒、鯉、ウナギが食用ガエルと一緒に店頭に並んでいる。ウナギは田ウナギと言ってニョロニョロしているのはそっくりだが、色が緑がかっていて太さも細い。日本のウナギとは別種で、昆虫で言ったらカブトムシとチョウチョほど違うらしい。山岳民族の村でこの田ウナギをぶつ切りにして辛く煮込んだ料理を食べたことがあるが、あまり口に合わなかった。

海の魚が食べたいと思ってシャム湾に面した海浜リゾート、フアヒンに行った。海辺のレストランやナイトバザールのレストラン街を歩いてみたが、魚料理は少ない。タイレストランでスズキの醤油煮を注文した。この魚は偶にチェンライのビッグCで見かける。30センチほどの煮魚が出てきた。値段は日本円で2000円弱、日頃の食生活からすれば大散財と言ってもいいが、海の魚を食べたことに満足した。

■ロブスターが主役
フアヒンのナイトバザールでは氷を敷き詰めた屋台に伊勢海老、海老、ムール貝、シャコ、イカ、それにスズキを並べ、屋台の後ろのテーブル席に客を誘っていた。いくつも魚介屋台が続くが、載せてある食材はほぼ同じ。魚はスズキだけだ。ということはシャム湾に生息する魚の種類は少ないのではないか。伊勢海老はロブスターで40センチ以上ある。何処の屋台にもこの大海老が上座に鎮座していた。このロブスターは一匹で数千円はする。ファランの老夫婦がロブスターを前に、半分はこうして、半分はああしてと料理法を指示していた。爺さんの風体はランニングシャツに短パン、婆さんはムームー、見かけによらず金持ちなんだなあ、とチャーハンを頬張りながらその様子を見ていたが、彼らが金持ちなのではなく、自分が貧乏なだけだ、とすぐ気付いた。魚一匹でもお腹が一杯になってしまうからロブスターなんか食べきれない、と心の中で呟きながら、やはり一人旅はいろいろな料理を楽しむことができないな、と残念に思った。

実は昔、プーケットでロブスターを食べたことがある。夕方、海辺の市場を通りかかったら、ヒゲが一本とれた伊勢海老を売っていた。安くするからどう?と言われて購入。ポリ袋でガサゴソする海老をレストランに持って行って半分は炭火焼き、半分はパッポンカリーで、と頼んだ。伊勢海老の足が越前ガニの足ほどの大きさがあって、その足を割って中身をカミさんがずっと食べ続けていた。一時の静寂に包まれた空間ではあった。

カブトガニ
屋台で日本では絶対見かけない食材を見た。体長40センチほどのカブトガニである。カブトガニは数年前に友人のIさんとプラチュアップキリカーンで食した。カブトガニは日本においては絶滅危惧種に指定されている天然記念物である。

カニというがカブトガニカニではない。祖先は5億年以上前のカンブリア紀の海で大繁栄していた三葉虫である。三葉虫が進化して一つがカブトガニになり、一つがウミサソリとなった。ウミサソリはその後、陸上のサソリやクモにと進化し、約35,000種にも分化したが、カブトガニはわずかに4種だけが現存しているだけだ。生まれからしカブトガニは、蟹というよりクモに近い動物らしい。このカブトガニは2億年前のジュラ紀から殆ど形態が変化していない。生きている化石と言われる所以だ。日本のカブトガニの他に、北アメリカ、ユカタン半島にはアメリカブトガニ、東南アジアのシャム湾、ベンガル湾などに生息するマルオカブトガニ、ミナミカブトガニの3種がいる。

カブトガニの寿命は25年くらい、卵を産めるまでに成長するには15,6年かかるという。東南アジアのカブトガニはもう少し早く成長するそうだ。卵は2,3ミリの緑がかった粒で1回に300個ほど産卵する。カブトガニを丸蒸ししてひっくり返し、甲羅の裏に詰まったこの卵を食べる。食味については美味しくて病みつきになる、という人もいれば一度食べれば十分という人もいる。

数年前と同じく屋台に並んでいるのだから、日本のカブトガニより繁殖しているのだろう。瀬戸内地方の人にカブトガニ、食べたよ、などと言うと、氷河期を乗り切ってきた今は絶滅寸前の天然記念物を、と怒られるだろう。多少の罪悪感も味の内だっただろうか。