概ね1皿1000円
見た目、美味しそうでない
パッタイ、タイ焼きそば
ヤムウンセン タイ春雨
外人も絶賛
■日本で食べるタイ料理
東京にはタイ料理の店があちこちにある。値段を見ると、カオマンガイ、パッタイ、ガパオなどのタイの代表的一品料理が千円もする。チェンライなら30Bか40Bだよ、と思うと食べる気になれなかった。千円といえばタイの300B、300Bあればちょっとした晩餐が楽しめる。
3カ月ほど前、恵比寿で人と会った。先方が指定した店がタイ料理店、留学生が推薦してくれた店とかで、ここで帰国以来、初めてタイ料理を食べた。といってもタイ焼きそばのパッタイである。久しくタイ料理を食べていなかったので、とてもおいしく感じられた。洗練されているし、盛り付けもきれい、日本風にアレンジされたタイ料理という感じだった。値段はやはり1000円ほど。うーん、これなら日高屋の半チャーハン+餃子・とんこつラーメンセットのほうがいいかな、とも思ったが、日本で出会うタイの味、郷愁料込みと思えば高くはない。
武蔵小山にもタイ料理店があることに気づいた。このご時世、地元振興、試しに入って、カオマンガイを食べてみた。カオマンガイとはタイ米の上に蒸し鶏が載ったシンプルな料理。お好みで辛いタレ、甘いタレをかけて食べる。タイの専門店では刻み唐辛子、刻み生姜が卓上にあってタイ人は唐辛子を大匙一杯かけて食べる。
小山のカオマンガイは単純な蒸し鶏ご飯、可もなく不可もなし、スープとヤムウンセン(春雨)のサラダがついて1000円だった。チェンライにある行きつけの店ならピセ(大盛り)で50B、もっとうまいのになあ、とチェンライを恋しく思った。
■豊富で美味
夢の国、ニッポンに来ることができてほんとうにシアワセ、といった外人のユーチューブをよく見る。久しぶりに日本に住んでみると、日本を礼賛する外人の気持ちがよくわかる。とにかく、食べるものが美味しい。それほどお金を出さなくても水準以上の食物が食べられる。美味しいものは美味しい、この感覚は人種を問わないように思われる。特に欧米人は子供の時から旨いものを食べつけていないから、和食にハマってしまうのだろう。粗食の果てに極東の美食に目覚める、は小さなサクセスストーリーだ。
チェンライにも和食店がいくつもある。しかしながらその味は、といえば、永らく故国に戻れないロングステイヤーの郷愁をわずかに満足させるに足る、といった程度である。やはり日本で食べる和食は材料からして違う。それに種類が豊富だから選択肢が広い。
NHKのクールジャパンで日本食ベストテンという特集があった。ベストスリーを紹介したい。3位は「弁当」、ご飯にいろいろなおかずがカラフルに美しく詰められている。栄養バランスが取れていて健康的である。焼肉弁当、鱒寿司のように好みに特化した弁当もある。
2位は「回る寿司」、これは日本の発明、寿司だけでなく、ラーメン、うどん、アイスクリームなど多様な料理が楽しめる。子供から年寄りまで家族、友人同士、カップル、あらゆる階層の客で賑わう。
1位は「居酒屋」だった。ウズベクにもタイにも居酒屋はなかった。つまり、いろいろなツマミと料理と一緒にに多様なアルコール類が楽しめる。ウズベクの料理店では酒はビールかウォッカだけ。友好大飯店という中華料理店があったが紹興酒はなく、ビールの後はウォッカ、店で飲める酒はこの2種類だけだった。
■日本の文化、居酒屋
そもそも欧米には飲みながら食べながら、という店が殆ど無い。例えばロンドンのパブ。ベーグル、チップス、それに簡単な食事が出るところもあるが、焼き鳥、ナポリタン、エスカルゴ、サンマの塩焼きなんか頼めないし、ビールの後にワイン、バーボン、テキーラ、サワーが呑みたいと思っても呑めない。
暗い蝋燭の光の下で、高級ワインを啜り、コース料理を食べ、欧州の没落についてしみじみ語るのも悪くないが、オイ、このモツ煮込み、うまいぞ、食ってみろ、芋焼酎頼んでみろよ、いや、やっぱ、俺は麦のお湯割り、なんて会話が欧州のレストランで交わされることはまずない。
欧米やアジアでは飲む店は飲む中心、食べる店は食べる中心となっていて、飲み食いが混然一体化している居酒屋のような店はないそうだ。チェンマイにもイザカヤ(日系)はあるが酒と料理の品数が限られている。
日本にいれば世界中の美味が堪能できる。ウズでもタイでもまた西欧でも美味しい料理はあるが、日本のように食材が豊富で無数の選択肢の中から選べるという国はない。あと半年もすれば本物のカオマンガイが食べられるだろう。だから日本にいる間は和食を堪能したい。人間3大欲望の内、残っているのは食欲だけだし。