同上、翡翠
商の時代か
故宮博物院展示品
同上
同上
気概を取り戻す旅
■老後にしてみたいこと
毎日、汗水たらして仕事をしている人でも、65歳になるとやってくる「定年退職」。今から、「あれやりたい、これやりたい」と、なんとなく計画を立てている人も少なくないはず。では、特に人気なのはどんなことなのでしょう? 今回は、3629人の「老後にしてみたいこと」をランキング化します!
アンケート団体「みんなの声」が2019年1月に行った調査によると「老後にしてみたいこと」の第1位は約半数の49%が回答した「国内旅行」、続く2位には、「世界一周」が21%でランクイン。そして3位には、「新しい仕事」、一億総活躍社会であるし、定年後も再雇用で頑張る人もいるのだろう。以下、4位「習い事」、5位「農業」でそれぞれ10%前後、最下位は「スポーツ」で、わずか3%という結果だった。
老後の過ごし方に関するアンケート調査は何種類もあるが、老後やりたいことのトップには常に趣味も含めて「旅行」が来る。
自分の場合、60歳で働くことをやめた。世界一周の経験はまだないが、タイの国内各地、東南アジア中心だが国外旅行にはよく出かけた。ある意味で大半の退職者が羨むような生活をしてきたといっていいだろう。旅をするにはまず健康、そしていくばくかのお金が必要だ。定年後、配偶者と旅を楽しみたいという男性は少なくないが、亭主と行くのだけは真っ平御免という奥さんが多い。そういうデータもある。健康並びに懐に余裕があっても、危ないから、無駄遣いだからと言って旅に出ることを阻止する配偶者もいるに違いない。自分の場合、思いたったらスクータに跨って、「しばらく帰んないからね」という旅ができたことは幸せだった。
■里帰りの自粛
幸せだった、と過去形で書いたのは今、旅行が制限されているからである。独り身であるし、スクータもある。新幹線も国内便も運航しているがやはり、昨今の流行病で東京人はウィルス媒介者として地方で疎まれる存在らしい。嫌がられてまでねえ、といった地方人に対する忖度がある。都知事も里帰り自粛などと言わず、こういう時だからこそ故郷に戻り、先祖の墓参りをして、日本人の絆を深めてください、くらいのことを言ってほしかった。
2年前の8月に母が亡くなった。今年は3回忌ということになり、娘と自分の二人でささやかな法事を営んだ。流行病のせいで法事も激減しているそうだ。一部にはオンライン法事も行われていると聞く。本来であれば久しぶりに親族が再会して、墓参りをし、近況を聞き、亡き人の思い出話に花を咲かす。もちろん、ビールや酒も出る。子供たちはまとめてスイカなどを食べ、虫取りや川遊びを楽しむ。今、自分たちが生きているのは先祖がいたお陰であり、一族の繁栄が子々孫々、続きますように、里帰りはこの願いを新たにする機会ではなかったか。また、子供たちがもう亡くなった人のことを聞き、祖父母、父母もこの墓に入ると聞き、生とか死を朧気ながら認識する機会でもあると思う。
人は木の股から突然ポッと生まれてきたわけではない。人には父母が、父母には祖父母が、祖父母には高祖父母が、更に先祖がいて一人欠けても自分はこの世にいない。そう考えてみると人は多くの人のおかげで生まれ、成長し、生きている。それに気づけば、伝統の大切さにも思いが至るかもしれない。
■先人の気概に触れる旅
最近旅した外国というと昨年10月の台湾、今年1月のミャンマー、2月の台湾、それにトランジットで3月に1泊の台湾である。台湾には日本統治時代の建物や史跡が残っている。現代の日本人は腰抜けか、武士道を忘れたのか、と亡き李登輝元総統は日本を叱咤激励していた。
李登輝さんが称賛してやまない日本人の足跡を台湾にたどってみた。台湾が清から割譲されたその年、明治28年に数人の教師が台湾に渡り、台北の芝山巌に学堂を開いて現地人教育にあたった。不幸なことに翌年、6人の教師(六氏先生)は蛮族に虐殺される。六氏先生の慰霊碑がある芝山巌学堂に詣でた。戦後、慰霊碑や墓は国民党政権の下で荒廃していたが、李登輝総統の時に公園として整備された。芝山巌魂は引き継がれ、六氏先生の殉難があった直後に全国から数百人の教師が名乗りを上げ、そのうち46名が希望通り、台湾に赴任してきたという。明治の人々の気概を思うと胸が熱くなる。
不毛の嘉義平野を豊かな穀倉地帯に変えた八田興一、金門島、古寧頭戦役を指揮した根本中将、信義を守り、公に尽くす、旅をすればここ、かしこに気概に溢れた先人の心に触れることができる。日本人の誇りはウィルスや無知な都知事の戯言に影響されない、と信じたいところだ。