日英、旅行案内書の違い
旅行中につき2015年8月17日書いたブログを加筆訂正の再録します。
■使える旅行情報
ウズベクで書き始めたブログのタイトルは「ウズベクのバザールから」だった。ミラバッド、チョルス、ヤンギオボド、イポドロームなど、タシケント市内のバザールを題材にした記事は少なくない。ウズのバザールにはそれぞれ特徴があった。ガラクタ市、衣類専門、豚肉を扱わない回教徒専門市場など、あの頃は好奇心が旺盛だったからただ歩くだけでも刺激的で楽しかった。
ウズで書いていたブログの訪問者数は1日数人、Y多くて十数人だったから、多分、ウズベク在留者、あるいは機会があったらタシケントやサマルカンドに行ってみたいと思っている人が中心だったと思う。そんなわけで、バザール見聞記は、もし、実際に行ってみようという人のために、バス、地下鉄での行き方、所要時間などを克明に書いたつもりだ。
英国人の紀行文は、XX教会から南に約6キロ歩くと右手に周囲10キロの○○湖が見える、ボートは湖岸○Xホテル右手のXXレストランに頼めば1日20ポンドで貸してくれる、といった風に、読者がその地を訪問する時に「役に立つ」情報の伝達を主眼としている。その点、日本人の書く紀行文は、「坂道をだらだらと登っていくと眼前にまばゆいばかりの花畑が広がっていた」と、情緒的で、読者が実際に同じ場所を訪問する場合にはあまり役に立たない。
■ロンリープラネット
ところでロンリープラネットは基本的な旅情報満載のガイドブックとして有名だ。この書物は英国由来ではないかと思っていたが、調べてみるとその通り。
ウィキから。
ロンリープラネットの歴史は、1970年に2人のイギリス人、トニー・ウィーラー(Tony Wheeler)とモーリーン・ウィーラー(Maureen Wheeler)がイギリス、ロンドンの公園で知り合うところから始まる。2人は旅行を趣味としており、直ぐに意気投合する。翌年に2人は結婚し、さらにその翌年の1972年7月4日に新婚旅行に出かける。この新婚旅行は、ロンドンを出発後、ヨーロッパから中東、アジアを抜けてオーストラリアのシドニーへ行き、しばらく同地で仕事をしながら滞在し、帰国費用を捻出した後、再び旅をしながらロンドンに戻るという計画であった。
2人は、ロンドンでミニバスを購入して、それで4ヶ月かけてアフガニスタンまで行き、そこでミニバスを売却した。その後、バスや鉄道を乗り継いでバリ島にたどり着いた。そこでヨットを所有していた人物と知り合い、オーストラリアまで同乗させてもらう。オーストラリア国内をヒッチハイクで旅をし、シドニーに着いたとき、2人の所有物は27セントの現金とカメラだけだった。
シドニーで、ウィーラー夫婦はヨーロッパからの旅についての質問攻めに会う。そこでシドニーでこの新婚旅行の間に書き留めていた日記をもとに、1973年に「Across Asia on the Cheap」という最初の旅行ガイドブックを自費出版した。全部で94ページ、ウィーラー夫婦等自身とその協力者で印刷して、単にホチキス留めしたものであった。しかし発売後1週間で1500部を売り切った。
その後、ウィーラー夫婦は18ヶ月間、東南アジアを旅行し、1975年にロンリープラネットの第2弾となる「South-East Asia on a Shoestring」(Shoestringとは、貧乏旅行の意味)を出版し、これも人気を博した。
1976年には、「ネパールとヒマラヤトレッキング」、1977年に「オーストラリア」、「アフリカ」、「ヨーロッパ」、「ニュージーランド」を出版。以後、順調に世界の各地域をカバーし、出版部数も伸ばした。
■地球の歩き方
日本でもロンリープラネットに範をとり、「地球の歩き方」シリーズが1979年から発売された。発売当初は、主に若年の個人旅行者をターゲットとし、バックパッカーを中心とした読者からの生の声をそのまま掲載するコーナーなどに特徴があった。一方で真偽不明の怪情報も少なからず記載されていたことから、かつては「地球の迷い方」と揶揄されていた。
ウズにいたころ、海外協力隊員が、頼まれて地球の歩き方(ウズベキスタン)の原稿を書いていたことを思い出した。彼はいい加減なことを書くような人間ではない。でも素人の書く現地情報は、しっかりウラをとらなければ、実際に行ってみて「ン、?」という内容になっている恐れがある。
ロンリープラネットには、ホモ専門バーの紹介、この店の支那ソバは醤油を薄めた汁にスパゲッティの麺が入っているだけ、といった性風俗やレストランの批判情報があるが、地球の歩き方にはこの手の記事はない。彼我の違いはどこに由来するのか、興味は尽きない。
(これを書いて7年、昨今旅行案内書を持って旅する人は皆無と言っていい。携帯ですべての用が足りるからだ。技術の進歩は旅のスタイルを変えてしまった。)