■ 一通の書き込み
チェンライ日本人会のホームページに掲示板がある。そこに次のような書き込みがあった。
「今月からチェンライに来ました。 チェンライユナイテッドというサッカーチームで働いています。
日本語しか喋れないし、ストレスやホームシック、うつ病かと考えてしまい、夜中も吐き気がとまらず、寝れません。
交流がとりたいです。情けなくわがままで申し訳ないが、助けてほしい。」
書き込みの主は、村上一樹君、25歳、愛媛県西条高卒、広島大学工学部を経て、2010年から昨年まで2年間、J2のFC岐阜で活躍していた。ポジションはDF。
タイのサッカーリーグでは30名を越える日本人選手が活躍している。村上君も新天地を求めて、岐阜からチェンライユナイッテッド（CHUTD)に移籍してきたらしい。
ネットによれば、村上君は広島大学工学部大学院に合格していたが、あえて好きなサッカーの道に入ったとのこと。
FC岐阜に入団した時のインタビューでは、暑いところは嫌いです、などと答えているから、タイの気候が合わなかったのだろうか。言葉の通じない異国で体調不良とは辛い。チェンライであれば日本食くらい奢るにやぶさかではない。
■2年ぶりにサッカー場へ
3月下旬にCHUTDとバンコク・グラスFCとのホーム試合があった。日本人会の何人かが村上君を応援しに行こうじゃないかと、チェンライ空港近くのサッカー場に足を運んだ。自分は大きな日の丸の旗を持ち込んだ。
ところが村上君の姿が先発オーダーにない。プロ野球でいえば外人助っ人であるから、彼なら当然スタメン出場と思っていたがそうでもないらしい。仲間がタイ人に聞き回ってくれたところによると、村上はマイ・サバイ（病気）でこの日はベンチにも来ていないことが分かった。
わかってたら来なかったのによー、と思ったが、試合は結構盛り上がって、楽しかった。CHUTDが少ないチャンスをものにして2-1で競り勝っていたのだが、終了間際に相手チームにセットプレーを決められ、結果は2-2の引き分け。タイの応援席ではビールが飲めるし、鳴り物も自由。どうせ周りはわからないのだからと日本語で「なにモタモタしてんだー」とか「パスがおせーぞー」とか怒鳴りまくる。おかげでストレス発散ができた。
■ホーム試合
4月7日はまたホーム試合が予定されていた。今度こそ村上君が出るだろう、と会場に車を走らせたが、何かおかしい。前回は空港近くの道路は路上駐車の車で一杯だったのに、今日は閑散としている。サッカー場にも誰もいない。スタンド入り口にある大きな試合予定ボードがあるが、本日の試合日程に赤いテープが張られている。どうやら中止となったらしい。
タイでは1部リーグでも日程がすぐに変更されるようだ。これがタイ、とあっさり諦めて帰宅した。
■3度目の正直
4月20日にホームの試合があった。今度こそ出るだろうと何人かの邦人が駆け付けた。
村上君が我々を見つけ、挨拶に来た。すみません、帰国していて先週チームに合流したばかりで今日は試合に出ないんです。彼はハーフの休みにも試合終了後も邦人応援団のところに足を運び、試合に出られないことを詫びていた。礼儀正しい好青年だ。前回は風邪をひいてベンチにも入れなかったとのこと。大した病気でなくて良かった。この日のブリラム・ユナイテッドとの試合結果も2-2の引き分けだった。村上君が復帰すれば、失点を防ぎ2-1で勝てた試合ではなかったかと思う。次のホームは5月11か12日という。彼の活躍が楽しみだ。
■小川君その後
タイでサッカーを見るきっかけとなった小川選手はどうしているか。
『タイ１部リーグのパタヤユナイテッドＦＣに所属していた小川圭佑（２６）がラトビア１部のＦＣユルマラと契約を結んだ。
小川は２月中旬からＦＣユルマラのトルコキャンプに参加し、練習試合で対戦相手のベラルーシのクラブからもオファーを受けるなど高く評価され、契約に至った。
移籍について小川は「ユルマラと契約することができ、大変うれしく思います。この度、契約できたのも支えてくださった方々、応援してくれている方々のおかげだと感じています。皆さんへの恩返しはここで活躍し飛躍することですので見ていて下さい。ラトビアの街と女性は本当に美しく、日々それらを眺め勉強し、芸術性のあるプレーも磨いていきたいと思います」と語り、ラトビアでの飛躍を誓った。』
自分の力を信じて、活躍の場を世界に広げる若者は多い。
欧州デビューを果たした3月以降、小川君のブログへの書き込みが多くなった。元気にやっているようでなにより、と思っている。
写真一番上が「村上君」以下は試合の様子。
