サッカーシーズン終了
■チェンライ・ユナイテッド
日本では一度も行ったことがないのに、チェンライに来てサッカーを見に行くようになった。地元チェンライ・ユナイテッドには日本人選手、村上一樹君が所属している。日本の若者が脚一本に賭けて、暑い国で頑張っている。これは応援に行かねば。
タイには日本のJ1にあたるプレミアリーグ、J2に相当するディビジョン1、さらにその下にディビジョン2があって、入れ替え戦をやりながら上を目指す。タイのサッカーチームには37名の日本人が活躍しているという。相手チームにばかに動きのいい選手がいるなと思ったら、日本人だったということも再々だ。
チェンライ・ユナイテッドは2009年の設立、その年にディビジョン2で無敗の好成績を収め、ディビジョン1に昇格、2010年にディビジョン1で3位の好成績で、設立から3年でプレミアリーグ入りを果たした。2012年にはチェンライ空港から徒歩5分のところにチェンライ・ユナイテッド・スタジアムが完成した。スタジアムの収容人員は1万5千人。
プレミアリーグは18チームある。しかし1チームは内部抗争でシーズン途中でチームが消滅した。来年からプレミアリーグは20チームに増えるのだが、それでも17位、つまり最下位になると降格になる。チェンライ・ユナイッテドはどうして、と思うくらい勝てず、10月6日時点では4勝14敗10引き分けで17位、つまり降格の危機にあった。あまりの不振にシーズン途中でブラジル人の監督がクビになった。そして実直そうなタイ人監督に代わってから、チーム全体の動きがよくなってきた。
前の監督はブラジル人選手を主体にしていたのだが、どうしても南米選手は個人技に頼り、パス回しでなく自分で中央突破を図ろうとする。結果、相手に囲まれて無理な体勢からボールを出さざるを得ず、それを相手チームに拾われる。
■村上君はチームの要
サッカーは一人でやるわけではないから、村上君もかなりストレスがあったのではないか。それでも孤軍奮闘、体を貼って相手ゴールを阻止する姿には感動を覚えた。試合のテレビ中継を見ていたタイ人によると、解説者の村上君に対する評価は高いものがあったという。サッカーは格闘技である。後ろからタックルされて、村上君の体が弓なりに反ったと思うとそのまま地べたに叩きつけられた。腰を痛めたようだ。
彼は試合終了後、律義に我々のところに挨拶にくる。見ると転んだ時ぶつけたのか瞼の上が腫れている。「大丈夫?」というと絞りだすような声で「言い訳になりますから」と答えた。負けたのが悔しいらしい。
それに引き換え、勝った時は満面の笑みで走ってくる。サッカー少年がそのまま大人になったような天真爛漫さだ。
彼は左のFDなのだが、時折、中央を守ってチームメートに指示を出している。1.78mと背が高いので、コーナーキックの時にはいつの間にかゴール前に詰めている。バックは村上君にボールを集めるし、キーパーも取りあえず村上君にトスする。チームメートから信頼が厚いのだ。チームも10月にはいって勝ち癖がつき望外の4連勝。
結局、シーズン32試合を終わって8勝14敗10引き分け、リーグ11位の成績だった。これでプレミアリーグ残留決定だ。
■ホーム最終試合
ホーム最終戦の対戦相手はバンコク・ユナイテッド、チェンライより順位が下のチームではあるし、チェンライ・ユナイテッドの調子は上向き、というわけで、スタジアムは超満員。
スタンド内での飲食は自由だが瓶、缶類は持ち込めない。場外には露店が立ち並ぶ。まず焼き肉、シュウマイ等を仕入れ、ビール入りのカップを持って入場する。リオビールしか売っていないが、スポンサーがリオビールの製造元だから仕方ないだろう。いつも座る場所は決まっている。周りの人とも顔なじみだ。
試合は前半20分までにチェンライ・ユナイテッドが立て続けに2得点を挙げ、スタンドは大喜び。ところがそのあとに相手チームに2点返され、前半は2-2で終わった。
後半に入って、チェンライが2点追加、2点リードのあとはボールを支配して全く危なげがなかった。
試合終了前から花火が上がり、まるで優勝でも決めたかのような大興奮、試合終了と同時に、次から次へと観客がピッチになだれ込んだ。警備の警官もお手上げ状態だ。ファンサービスのため、係員がチェンライ・ユナイテッドのTシャツを準備していたが、それもピッチのファンに奪われる。
選手もばらばらになってファンにもみくちゃにされている。村上君がこっちに挨拶に来るには時間がかかりそう、と混乱のスタンドを後にした。
写真上から「村上君」「おなじみさん」「大混乱」「スタジアム」「観客」