煙害
■童話も国により・・・
子供のころ読んだインドの童話。題名は覚えていないし、内容も定かではないが概略、こんな話だった。
女王様に3人の娘があった。女王様は王女達にクルミの実を分け与えたあと、こう言った。「貴女達に全部分けてしまったので、私のクルミがない。一つずつでいいから私に戻して下さい」。それを聞いて、長女は中でも一番しなびた小さいクルミを渡した。次女も形の悪い黒いクルミを渡した。末娘は一番大きくて美味しそうなクルミを母にさし出した。
3つのクルミを前にした女王は、まず長女に言った。「お前は情けを持たない性悪の子だ。将来は人に憎まれ、恨まれるものに生まれ変わるがいい」。長女は太陽になった。次女には「お前も心の狭い恩知らずな子だ。将来は落ち着きどころのない、不安定なものに生まれ変わるがいい」。こうして次女は風になった。
末娘に女王はこう言った。「お前はやさしい子だ。皆から愛され、人に安らぎを与えるものに生まれ変わるがよい」。こうして末娘は月に生まれ変わった。
太陽神、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を皇祖神とする国に生まれ、「お天道様に申し訳ない」といい聞かされて育った自分としては、太陽が疎まれる存在というこの童話に長らく違和感を覚えていた。しかし、インドでは、太陽は決して恵みだけではなく、旱魃や渇水をもたらし、人を苦しめる。ジリジリと照りつける太陽を恨めしく思う国があるのも当然かと納得したのは、大人になってからのことだ。
■タイの「いい天気」とは
タイで「今日はいいお天気ですね」と言ったら、どのような天候を言うのだろうか。日本ならばほぼ100%の確率で、太陽が出ていて日差しが暖かい日、東京オリンピックの開会日のように雲一つない秋晴れなどの日を「いい天気」というと思う。
しかしタイ人にとってはカンカン照りの日は決していい天気ではない。どんよりとした薄曇りの日が「いい天気」となる。日差しさえなければ日中の気温もさして上がらず過ごしやすい。それにタイ人は色が黒い割には日焼けを気にする。日傘をさしてバイクに乗る女性はよく見かける。傘を持たない人は書類や片手で日差しを避けながらバイクを走らせている。
テニスコートでもアルカイーダかターリバーンのように目出し帽をかぶってラケットを振っている人がいる。目出し帽だけならまだしも30度を超える中で長袖、長ズボン、こちらのTシャツ、短パンに比べるとかなり異様である。アフガンでこんな恰好をしていたら職務質問は必定だし、下手をしたら狙撃されるだろう。
■煙害
チェンライでは2月末辺りから、薄ぼんやりと太陽光が遮られる天気が続いている。本来であれば「いい天気」のはずだが、実はそうではない。
12月、1月は朝霧が立ち込める日があった。しかし朝霧は午前10時過ぎには晴れて、明るい乾季の陽光が降り注ぐ。ところが今、太陽の光を1日中遮っているのは山焼きの煙だ。
3月2日にチェンマイ総領事館から次のようなメールが来た。
1.タイ北部地域においては、本年2月下旬頃より山焼きや野焼き等に起因する煙害(ヘイズ)が深刻化しています。
2.タイ北部各県では、所により安全基準を大幅に上回る大気汚染を観測しており、健康被害を引き起こす可能性もあります。
3.つきましては、タイ北部に渡航・滞在される方は、報道等から関連情報の入手に努めるとともに、外出する際は、努めてマスクを着用する等の対策をとることが望ましいと考えます。
参考:3月2日、タイ環境省が発表したチェンマイにおける大気汚染状況(PM10値、安全基準は120マイクログラム(ug/m3)未満)
チェンマイ県庁付近
午前8時 171ug/m3
午後2時 164ug/m3
ユパラート学校付近
午前8時 149ug/m3
午後2時 145ug/m3
■チェンライも深刻
チェンライは山焼きが盛んなミャンマーに近いせいもあって、チェンマイより状況は深刻だ。山焼きをなぜやるかというと、雨季を前にして山の笹や下草を燃やすことにより、肥料いらずの畑が確保できるからだ。
この時期、テニスコートに行くと笹の葉の黒い燃えカスがコートにチラチラと降ってきて、ラリーをしていると黄色いテニスボールが黒ずんでくる。山間部を車で走るとあちこちの山で煙が上がっているのが見えるし、道路沿いまで炎が迫っている場所もある。目はチカチカ、喉はいがらっぽくなる。
いくら日差しが弱いといってもテニスやゴルフを心から楽しめる環境ではない。チェンライはいいところだが2月末から4月、この時期の滞在は余りお勧めできない。
写真は今日の道路、遠くが霞んでいます。下はテニス仲間のタイ人、普通はもっとプロテクトしています。