チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

カラカルパクスタン共和国 (4)

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ヌクス、サビツキー美術館 その3

ヌクスに到着してまずサビツキー美術館へ向かったのには訳がある。我々より3日ほど前にタシケントの友人が美術館を日帰り訪問している。そのときに美術館をガイドしてくれた学芸員アモット君に留学関連の資料を送ることを約束した。友人は待てよ、郵送するより中西さんに頼んだほうが早くて確実、と考えて資料託送を依頼してきたからだ。
この国では郵便物が確実に届くとは言えない。以前、日本語弁論大会を聞いた時、複数の学生が信頼の置けない郵便制度を例にとって、国家システムの改善を訴えていた。

空港から約5キロ、ヌクス中央公園の隣、ラシドフストリートに面して3階建て大理石の建物がある。これがサビツキー美術館だ。あたりには大きな建物がないのですぐわかる。ソ連時代の建築物に共通した特徴だが何か権威主義的仰々しさを感じさせる建物である。

入場料は政府発行の身分証明書を見せると、半額以下にしてくれる。多くの発展途上国に見られる現象であるが入場料や拝観料に外国人価格が設定されていて、同じサービスを受けるにしても外国人はかなり割高な金額を払う必要がある。JICA関係者の身分証明書には、この国に居住しているため内国人待遇を受けられる、と書いてあるらしい。
割引額はそれほど大きくはないのだが、とてもトクをしたような気になる。ナボイでは身分証明書を提示することにより、2万スムの宿泊料金が半額の1万スムに下がったから、嬉しかった。

美術館の1階は事務室やカフェ、ブックショップ、図書室、研修室などになっている。研修室では地元の小学生が沢山集まって写生をやっていた。

2階がロシア・アバンギャルドの絵画、彫刻、カラカラパクの民俗美術、衣装、貨幣などが展示されている。それほど混雑してはいない。それよりも労働力がありあまっているのか客よりも監視の美術館職員のほうが多く、展示室のあちこちにある椅子に所在無さげに座ったり、何人か固まっておしゃべりに興じている。

3階には古代ホレズム王国の美術品ばかりでなくシュメール、古代エジプト、古代ペルシアの彫刻がある。シュメール時代の彫刻には紀元前2150年と記されていた。スフィンクスアメンホテップ3世の頭部像、あるいはクメールの仏頭などがある。どうやって収集したものだろうか。圧巻は壁一面に展示されている古代ペルシアの「翼を持つ牡牛」のレリーフだろう。牡牛を挟むようにしてヒゲの祭司が左右に立っている。縦2メートル、横8メートルほどの巨大なものだ。これを見るだけでもここに来る価値はある。

美術館でもらったA4の白黒コピーパンフレットによると、7,452点の絵画、25,223点のグラフィック、1,322点の彫刻、7,562点の民俗美術、1,902点の古銭、8,618点の考古学的貴重品が収蔵されているとのこと。またパンフには「欧米の興味を惹きはじめた大量かつ興味深いロシアコレクションはウズベキスタン訪問者必見のものだ。地方文化を余すところなく示す文化的、歴史的展示品の数々は、この美術館が疑いもなくウズベクの、いや中央アジア最高の美術館であることを示している」というニューヨークタイムスの記事が引用されている。

グループのガイドをしていた学芸員アモット君が仕事を終えてやってきた。20代後半、小柄で知的な感じの青年だ。「はい、スペシャル・イクスプレス・デリバリー」と言って日本留学関係の資料を渡す。これでリュックの重さが半分になった。それでこっちは充分嬉しかったが、アモット君の感激ぶりは一様でなかった。やっぱり日本人は約束を守る国民だ、と思ったのだろう。御礼に展示品の説明をしてくれた。

美術館運営を日本の大学で学びたい、と目を輝かせていた彼の夢が実現すればいいな、と心から思った。
ー写真は美術館付近にて撮影
(サビツキー美術館の項、ひとまず終わり)