チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

初めて教壇に

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タシケント・バンク・カレッジで初めて教壇に立つ

タシケント・バンク・カレッジ(写真)は生徒数4千人、教職員数100名ほどの「高校」である。日本と少し教育制度が違うので、9年の初等教育(日本の小、中学校課程)を終えた生徒と11年の初等教育課程を終えた生徒が入ってくる。はじめカレッジと聞いて大学かと思ったが、まあ高校か高専みたいなものだ。講演のため、来校されたことのある楠本大使が「カレッジと聞いていったのに講堂に集まった顔を見たら、子供ばっかりではないですか。あわてて話す内容を変えましたよ。」と言っておられた。ほんとにお兄ちゃん、お姉ちゃんばかりで初々しい。

銀行学部、会計学部、財務関係学部、経済法学部の4学部がある。夜学校もあるようだがよくわからない。一クラス30人。起業論を教える先生が10名位いる。その中の一人、スライヨ先生の授業を参観させてもらった。この国では中高等専門教育省が起業論のカリキュラムを決めており、先生たちはこのカリキュラムに沿ってみな同じ授業をする。学年は2年生、30名クラスで出席者は20名ほど。これでも出席率のいいクラスとのことだ。教科書はなく、生徒はノートとペンだけ持って座っている。

まず先生が前の授業で話した内容を生徒に質問する。生徒はノートをちょっと見ながら答える。一人2,3分はしゃべっているから、前の授業の内容がおおむね頭に入っているのだろう。先生は答えを聞きながら自分のノートに各人の成績をつけていく。

この日の授業は企業倫理の話だった。しきりに法律を守ることを強調している。スライヨ先生は50代の女性、エネルギッシュにまくし立てる。80分授業を週21コマこなしていると聞いたが、こんなに張り切って話して体力が持つのだろうか。授業の合間に中高等専門教育省作成になるテキストのコピーを先生が読み上げて生徒に書き取らせる。これならば10人の先生が同じ内容の授業をすることができるわけだ、と納得。日本だったら「先生、そのコピーを下さい。」というところだ。コピー用紙が高いこの国では先生も学校もコピーを配る余裕はないし、それよりも書いて覚えるという教育方法をとっているのだろう。

起業論とはいえレストランの設立を例にしており、いわゆるベンチャー論ではない。日本では「ベンチャー企業」はイノベーション、国際性、急成長、強力なリーダーシップ、高い理念とロマンなどのキーワードを使って説明するが、こちらの起業論はまさに小企業立ち上げのための実務知識といったもののようだ。

はて、これはどうしたものか、などと考えていたら通訳のベク君が「スライヨ先生が日本の会社、ビジネスについて授業をして下さいと言っています。」といって心配そうにこちらの顔をのぞきこむ。えっ、そんなこと聞いていないよ、と思ったが、すでにお兄ちゃん、お姉ちゃんの好奇の目が注がれている。

まず初めに、スライヨ先生の熱のこもった講義ぶりを褒め上げ、こういった機会を設けてくださったことに感謝をする。簡単な自己紹介のあと、日本の会社で知っている会社名を上げてもらう。ソニーパナソニックトヨタなど。「日本には確かに世界的な大企業がありますが それ以上にたくさんの中小企業があります。大体いくつ位あるかわかるかな?」
生徒が我先に数字を言っている。約250万社と言うとホー、とため息が漏れる。時間を稼ぐために、黒板に大きな三角を書き、とがった先端部分をソニーなどの大会社5,000社、その下が中小企業250万社と書く。先端部分の大会社は中小企業に支えられていること、開業する会社、つぶれる会社も多いが中小企業の活躍が、国の経済を押し上げるのだということをしゃべる。

働いた経験のない諸君に今すぐビジネスを起こすことは勧めない。起業は失敗のリスクが高いからだ。しかし、新しい会社がどんどん出てこないことには国の経済の発展はない。諸君の中にはリスクを省みずに起業に乗り出す人もいるだろう。自分でビジネスをおこしたいと思っている人はその夢を強く持ち続けて欲しい。強い意志が起業を成功させる原動力になるのだ、などと話していたらあっという間に時間切れになってしまった。

全員立ち上がって、お礼の挨拶をしてくれた。恥ずかしかったが、まあこんな調子なら9月からの授業もやっていけるかなと感じた。