チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ヤンギオボドバザール

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ヤンギオボドバザールへ行く

ヤンギオボドバザール(写真)はガラクタ市といってよい。昔の工場跡地で古物、古着、機械部品、動物など雑多なものが売られている。食料品、新品衣料はほとんど売っていない。在留邦人の中には古カメラ、古時計、ジュモーのフランス人形など「お宝」を買い求めに休みごとに訪れる人もいる。ウィークデーも開いているがやはり土日が賑わう。

ヤンギオボドバザールに行くには地下鉄ウズベキスタン線終点のチカロフ駅で下りる。市の中心部からチカロフ駅までは10分くらいの乗車時間だが、ここまで来ると急に田舎という感じになる。駅近くの原っぱでは牛や羊が草を食んでいる。チカロフ駅前からから15番または45番バスに乗る。バス代は200スム(20円)。

あまり裕福でない人たちが住んでいると思われる平屋住宅街を15分ほどバスで走ると、駐車中の車であふれかえっているところにバスが着く。そこがヤンギオボドバザールだ。バザールはどこでもそうだが周りを高い塀に囲まれていて、いくつかのゲートから出入りすることになる。夜中は盗賊に襲われないようにゲートは閉じられる。

まず門を通り過ぎると、動物売り場があった。セキセイインコ、ハムスター、モルモット、子ウサギ、犬、猫など。子犬を2匹抱えて立っているおばさん、2,3匹の子猫をダンボール箱に入れて座っている子供など、一般の人が自分のペットを持ち込んでいる感じだ。ハムスターやウサギは1匹1000スム(100円)くらい。犬はシェパードからハスキー犬、ムクイヌまで雑多かつ雑種である。成犬も売っていたがどうするのだろうか。朝鮮系の人が多く集まるアライスクバザールには犬の肉を食べさせる店が2軒あると聞いたがそういった需要もあるのかもしれない。猫はお国柄かペルシャ猫系統の雑種が多い。

そこを過ぎると機械部品売り場だ。ねじ、歯車、カム、自転車のチェーン、シャフト、スプリング、圧力計の表示部、ペンチ、はさみ、手術に使われる鉗子類まである。ほかにも鍋、釜、鋸、空き瓶、スコップ金属部分、鋤、クワ、古本、壊れたサモワール、欠けた茶碗、シャンデリアの部品、シンガーミシンの残骸、電子機器の基盤、真空管など、こんなものを買う人がいるのかと思うくらいのガラクタを所狭しと地面に並べている。落語の「道具屋」の世界だ。

ほかのバザールに比べて決して広くはないが道が狭く、曲がりくねっており、雑然としているので歩く速度は限られる。人と人がぶつかり合いながら通るため体感的広さは相当ある。歩くだけで消耗してくる。

圧巻はここだけ天井があるという倉庫内での携帯電話売り場だ。ちょっと古い機種、どこからか掠めてきたもの、新品など携帯電話を1個から数個持った人とそれを品定めする人の群れで山手線のラッシュアワー以上の混雑。タシケントばかりでなく全国から携帯の売買にやってくる。値段は新品で15万スム(1万5千円)から20万スム(2万円)もする。高額商品だから儲け幅も大きい。みな真剣だ。倉庫の外にも携帯を売る人、買う人がひしめいていて、歩くこともままならない。圧倒的に若い男性が多い。熱気と体臭で死にそうになる。ノキアが主流だがフォンネンという機種もある。値段が15万スムとすれば取引の札束の厚さは3センチくらいになる。スリが大活躍するところでもある。だからスリに札束の厚さを気づかれない「ドル」がここでも幅をきかせる。

古カメラを売っている屋台があった。ジャバラ式の懐かしい形をしているがロシア製ばかりである。時には「ライカ」のお宝も出るらしい。ここに通いつめて、古カメラを何点も買った人は購入価格よりも国外持ち出し許可申請にかかった費用のほうが高かったそうだ。

コインは結構売られているが値打ち物ではなさそう。人によってはレーニンスターリンのバッチ、CCCP(ソ連)のマーク入りの勲章やメダルも面白いだろう。ほとんど手に取る人はいない。

思ったより美術品、いわゆる古道具は少ない。お宝を探し当てるためには何度も来て、店のめぼしをつけておくことが必要であろう。フェルガナ時代のコインや帝政ロシア時代のイコンなどが出ることがあるかも知れないが、厳しい規制があって美術品、考古学的に価値ある品物を国外に持ち出すことはほとんど不可能。1991年のソ連崩壊時、この国も激動の渦に巻き込まれた。その折、ヨーロッパから来た旅行者に多くの貴重な美術品を持ち出されたという苦い経験があるからだ。

バザールのゲートを出てほっとするまもなく、バスに乗ろうと我先に群衆がバスに殺到する。生存競争は厳しい。あまりにも人の波がすごくて、どこのバザールにもいる物乞いの存在に気がつかなかった。物乞いも恐れをなす混雑といったところだろうか。