チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

アカ族の葬式 6

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

イメージ 7

イメージ 8

アカ族の葬式(6)

■写真撮影とアカの人
葬儀という厳粛な儀式の場に自分のような外人がやってきて無遠慮に写真を撮りまくるということは、決してアカの人々には好ましいことではなかったはずだ。自分としても初めは遠慮がちではあったが、サキ君、ピヤさんが高級一眼レフで写真を取っているし、アカ協会の人が儀式のハイライト部分を克明にビデオ撮影している。資料として残そうという気持が感じられる。こういったアカの慣習に則った葬儀に立ち会えるのはめったにあることではない。この機会を逃しては、という気分で自分も写真を撮り続けた。

アカの人はピマから始まって押し並べて写真撮影には協力的、というかレンズにはほとんど無関心のように見えた。ただ一度だけ、自分に険しい目が向けられた時がある。それはオイチョカブの賭博現場を撮っていた時のことである。暗いのでフラッシュが光ったのだが、その瞬間、見物していた男の一人が眉をひそめてこちらを見た。あ、ごめんなさい、と頭を下げたらすぐ彼も笑顔を返してくれたので助かった。考えてみれば賭博はお国の禁止行為である。故人の家の軒先にはタイ語で「賭博は犯罪です、やめましょう」と書いたプレートが下がっていた。

■一つ家に・・・
3日目の夜はレイモンド、アトゥ、それにバンコクからやってきたご婦人2名と食卓を囲んだ。お二人ともきれいな英語を話す。アトゥは遠路はるばる来てくれた客人をもてなすためか、市販のラオカオではなく、ビール瓶に入った、多分、密造のラオカオを出してきた。レイモンドとそのうまさに驚嘆、ひとしきりラオカオの話で盛り上がった。
自分はセンジャイパタナの村から20キロほど離れたドイメーサーロンまでラオカオを買いに行くことがある。いつもの荒物屋でラオを、というとお姉さんがレジの下からビニール袋に入った透明な液体をこっそりと取り出す。1袋15B。何処から仕入れるのかわからないがいつも一定の水準の味である。
但し、タイの流通の特徴でいつもあるとは限らない。バイクで山道を数十キロ走ってきたのに、顔を見るなり、お姉さんに「今日はないのよー」と言われると力が抜ける。

空にはアラビアンナイトのような三日月がかかっていた。葬儀は新月の日に始まるのか、と聞いたが別にそういうことはないようだ。
いくらうまい酒でも飲み過ぎてはいけない。レイモンドとアカセンターに戻り、いつもの民芸館で彼と枕をならべて寝ることになった。懐中電灯片手にトイレから帰ってきたレイモンドが「空を見てこいよ、星がきれいだよ」と興奮している。
「ひとつやに遊女も寝たり 萩と月」という句を脈絡なく思いだしたが、いくら満天の星の下でもひげ面のレイモンドと一緒ではロマンチックな気分にはほど遠い。

■タイガーマン(虎男)登場
葬儀4日目のハイライトは虎男である。朝から男達が、虎男の持つ竹のハンマーや腰に付けるY字型の飾り作りに余念がなかった。Y字の枝の付け根部分は太さ7,8センチ、長さ30センチほどの張り形になっていて、ご丁寧に竹で編んだ直径5センチほどの睾丸まで付いている。
レイモンドは張り形に眺めいるアカ衣装の女性達という絶好のショットを撮って、これはイタリアの読者が喜ぶ、とご満悦だった。やはり本職は違う。

葬儀会場から100mほど離れた家のテラスに若い男がパンツ一丁になって座っていた。若者にピマが祝詞をあげたあと、友人達(男のみ)が彼の顔や体に絵具で虎の模様を描く。それを村の子供たちや女達が遠巻きにして眺めている。ボディペインティングは30分ほどで終了。
菅笠をかぶり、腰に妙な突起物、竹のハンマーを持つ若者は虎男というより、ベトコンのゾンビのようだ。

虎男は時に奇妙な歓声をあげ、村の家や路地を駆け回る。遠くから虎男を見ていた子供たちがワーッと逃げまどう。走る「なまはげ」と言ったところか。逃げる幼児の顔が恐怖にひきつっているのが何とも可愛らしい。

外人の自分には向かってこないと思って写真を撮っていたら、虎男は奇声をあげて抱きついてきた。グリグリと突起物を押しつけられて、その方面の趣味のない自分としては奇声を上げるしかない。みんなに笑われ、とんだ見世物になってしまった。

なぜ葬儀に虎男が出るのか。サキ君やピヤさんに聞いてもわからない。昔からアカの葬儀には虎男が出る、と決まっているとのこと。アトゥの説明によると、虎は勇敢さの象徴であり、愛する人を亡くした遺族を元気づけるものだ、というのだがいまいちしっくりこない。(まだ続く)


写真一番上は「賭博禁止の看板」、「虎男メイク完成」「虎男見物人」、下から二番目「張りがた」、一番下が「アトゥとレイモンド」