チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ2年8カ月

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介護ロングステイ2年8カ月

■母のベッドで
今月で母は86歳になった。もう86歳になったんだよ、と耳元で言うと顔をしかめる。年のことを言われると不機嫌になる。
今日も元気でよかったね、というと「そうですね」、朝、お早うと声をかければ、お早うと答えてくれる。日本からもうすぐ兄が帰ってくるから、と何度も言うと「わかってるよ」という。

食事のとき以外は、ベッドに寝ていることが多い。添い寝して、自分が小さかったころの思い出話をしては「覚えてる?」と聞くのだがかぶりを振ることが多い。
60年近く前、今と同じように母と自分は一緒に横たわり、母が幼い自分にいろいろな話をしてくれたのだろう。今は自分が「わらしがえり」してしまった母の横で何か話している。

母が社宅の奥さんと立ち話をしていた。5,6歳だった自分が「早く行こうよー」と全体重をかけて手を引っ張るのだが、母はどっしりとして動かすことができなかった。
その手が今はすっかり細くなって、皮膚もたるんでいる。大きな存在だった母が今は縮んで、手を取らないと歩くこともできない。昔の話をしていると、若くて溌剌としていた頃の母のことを思い出し、切ない気持になる。

■大分衰えたが
こちらに来た当初、いくらか元気を取り戻し、一時は徘徊老人になるのではないかと心配になるくらい自分から家の中を歩き回っていた。
「この人が新しい女中さん」と紹介すると手を差し出して「ハウドゥユードゥー」と言って我々を喜ばせてくれたし、「そろそろ、失礼します。あっ、財布を忘れた」と、ホテルに泊まっている気分になっていた。
こんな大きなベッドのある部屋に長逗留して、と宿泊費が心配だったのだろうか。
「お母さんはお金持ちでね、この家もお母さんのお金で借りているんだよ、大丈夫だよ」というと安心するようだ。
「お母さんの口座にはね、貯金がいっぱいあるよ、だからボクに○百万円ほどくれない?」と聞くと不機嫌そうに頭を振る。そんな時、なんでもわかっているのだなあ、と少し嬉しくなる。

■通院は2月に一回に
月一回の通院日であるが、前月と同じく自分一人で薬を貰いに行った。
「特に変わったことはありませんか、それでは同じ薬を出しておきましょう」、スティ医師はすぐに処方箋を書き始める。付き添ってくれた通訳、勇気子さんが「クスリ、2月分欲しいですか」と宙を見ながら言うので、思わず「欲しいです」。
これで薬が2月分出るようになった。母の負担はもちろん、自分の負担も減る。

日本では医師が患者を診察したうえで、2週間分の薬が出る。本人が行かないと原則、薬は処方されない。神経科と内科の2つの医院に、月4回、母を車いすに乗せて通っていた。神経科の医院は自宅から2キロ以上離れており、通院日の天候が気になったものだ。

残念ながら認知症を治す薬はなく、処方されている薬は胃腸薬、カルシウム剤など穏やかな薬ばかりだ。健康状態に変化がなければ、病院に連れてこないでいい、という判断は合理的だ。

日本人の場合、熟年になると痛風、もしくは糖尿病のいわゆる生活習慣病にかかると言われている。生活習慣病にかかると、一生、尿酸値、血糖値をコントロールする薬を飲み続けなければいけない。それなのに、2週間毎に診察を受けなければ薬がもらえないのは患者にとって負担だ。また、診察の度に尿酸値や血糖値を検査するわけではない。

ま、そんな堅いこと言わずに、お互いラクですからそうしまひょ、というタイの気楽さが何とも心地よい。

■病院のポスタ-
バンコクチェンマイの大病院と同じく、シブリン病院にも日本語通訳が配属されている。
その「インターナショナル・カスタマー・サービス」のポスターが貼られていた。
日章旗と並んで英、米、中国、ミャンマーラオス、6カ国の国旗がトップにある。
その下に
・患者登録のお手伝い
・病院内のご案内、一般病院情報
・通訳サービス
・国際的医療機関とのコーディネーションサービス
・各種医療保険のお手伝い
・空港からホテル/病院の送り迎え、救急車の手配
などのサービス内容が英語で表示されている。
そして、一番下に勇気子さんと看護師さんがにっこりとワイをしている写真が出ている。
この看護師さんは元JALの客室乗務員、175センチのすらりとした美人だ。日本語、お上手ですね、というと「そうでもないでございます」というちょっと面白いスッチー日本語を話してくれる。

チェンライでの介護生活は益々便利に、また落ち着いたものになってきている。このまま静かな生活が続くことを願っているところだ。


写真は「インターナショナル・カスタマー・サービス」のポスター。