チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ブハラ、ヒバ7

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任国内旅行(ブハラ、ヒバ)その7

カラめぐり
カラは砦を意味する。紀元前10世紀にはホレズムに城郭都市の出現を見ており、ギリシャの歴史家ヘロトドスによれば、その数1,100を数えたという。今、発掘され、判っているだけでも300くらいのカラがある。まだ未発掘のカラも多い。世界遺産に指定されておらず、修復もままならないが、中央アジアのオアシス都市国家を偲ぶためには是非訪れたいところだ。ホレズム地方のカラめぐりをするには砂漠を300キロ以上走破するので運転手付きの車とガイドを雇う必要がある。薄給の教師の身ではあるが、この国の偉大な歴史を感得するためにはしみったれたことは言っていられない。
車はネクシアという韓国車で5人乗り、英語ガイドは20ドル、車はガソリン代コミで1日(9時半から17時半まで)60ドルとのことだった。乗客が3人いれば一人当たりの支払額は30ドル弱となる。シーズンオフということでカラめぐり参加者は自分ひとりだった。マンスールの知り合いである旅行代理店の人が、80ドルのところ65ドルに割引してくれた。

ガイドはジャロールさんという30過ぎの男性、JICAの招きで50日ほど日本に滞在したことがあるという日本びいき。9時半にヒバを出発してウルゲンチ市内から北西へ進路を取る。日曜だったので家畜市が開かれているのが見えた。牛、羊などがいる。牛や羊の値段は取れる肉の重量掛ける肉価格だそうだ。羊一匹の値段は大人の羊から20キロの肉が取れるので20x3000スムで6万スム、日本円で6千円、牛も同じような計算で1頭8万円くらいだろうという。安くないか?

車はほとんど対向車の来ない道を時速120キロで走る。道の脇には黄葉した桑の木、ポプラ、その向うは枯れた綿畑が広がる。時には最後の稲刈りを行っている田んぼもある。フナ釣りにちょうどよい用水路が流れていて、晩秋の越後平野を走っているように感じる。
2時間も走るとキジルクム砂漠へと入る。植物は白く枯れて茶色の単調な風景だ。そのなかに忽然と赤い要塞、キズル・カラ(写真)が現れる。BC2-1世紀ごろ建てられ、12世紀まで敵の侵入からホレズム王国を守るために使われた。厚さ8m、高さ15mの二重の壁に囲まれ、内部は2階建てだったが、現在は壁の一部しか残っていない。カラクム砂漠の入り口、王国を背にして3方を守る形となっている。夕焼けに生えるこのカラの写真はよく絵葉書になっている。

このキジル・カラから15分ほど走ったところにトプラク・カラがある。BC3-AD4世紀に築かれたと考えられている。1938年に発見された当初はソグド人の残した貨幣が散らばっていたと言う。ゾロアスター教の神殿を備えた王族の住む豊かなカラで古代ホレズム王国の都ではないかと考えられている。1940年から始まった発掘調査は1992年まで続いた。ここで見つかったフレスコ画は狩猟や果物を収穫する女性の図など、オレンジ、紫、青の鮮やかな色が残っていて当時の芸術水準の高さを感じさせた。発掘されためぼしい美術品はソ連に運ばれ、今、エルミタージュ美術館で見ることができる。
なぜ5世紀にこのカラが使われなくなったかは判っていない。アム河の氾濫によるものか、あるいは河の流れが変わって井戸が枯れてしまったのか、それから千数百年、砂漠の静寂さが廃墟を包み込んでしまい、ソ連の学者が訪れるまで世に知られることはなかった。

アヤズ・カラ。丘の上に築かれた2つの城址から成り、キジルクム砂漠の端にある。車を降りて高さ100m以上ある砦まで登っていく。ガイドのジェロール君はサッサと登っていくが、こちらは喘ぎ喘ぎだ。枯れたトゲトゲの草が点在している。と、砂の中を太さ1センチ、長さ50センチくらいの灰色の蛇がこちらの草むらからあちらへと素早くすべっていくのが見えた。えっ、蛇を見たんですか、私はガイドになって6年ですが未だ2回しか見ていません。運がいいですね。アロースネークと言って猛毒の蛇です、と言う。踏んづけないでよかった。「ガイドになってxx年ですが、蛇にかまれた人はたったの一人です」などと話題提供をするところだった。

この砦から360度砂漠が見える。地平線に黒雲のように湧き上がるギリシャ軍、ペルシャ軍、アラブ軍、そしてモンゴル軍を見たときの住民の驚愕、恐怖は如何ばかりであったろう。それほど広い砦ではないが5千人を収容し、2ヶ月間持ちこたえることができたという。土で出来たあのアーチの中でひっそりと住民が潜んでいたのだろうか。キジルクム砂漠からの涼風を頬に受けながら静寂の中で遠い昔に思いを馳せた。