チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

タイの政治について

 

タクシン首相の娘、ペートンタン氏

言うことは誰でもできる、本当にできるのは我が党だけ、と書いてある

平成25年、インラック首相と安倍さん

徴兵制廃止、軍の縮小の改革をします、と書いてある

プラユット首相は人気ないので目の部分が切り取られている

背景の色で政党がわかる仕組み

 

 

タイの政治について

■下院の解散

3月に入ってからだと思うが、顔写真入りのタテカンが目に付くようになった。軍服のおじさんに交じって、インラック元首相によく似た美人が目に付く。選挙用のタテカンか、それにしても総選挙が行われるという話は聞いてないがなあ、と思っていたら3月21日付のニュースクリップに「プラユット首相兼国防相20日、議会下院(定数500、任期4年)を解散したことを受け、タイ選挙委員会は21日、会合を開き、下院選の投票日を5月14日とすることを決めた。下院選は小選挙区400議席比例代表100議席で争われる」という短い記事が載っていた。

どうも解散、投票日の告示の前に選挙運動が始まっていたようだ。交通取締りの日時が事前に漏れる国だから、解散の前に事前運動をすることは当たり前なのかもしれない。

今回の総選挙の焦点は9年続いた軍政が終止符を打ち、タクシン元首相の次女ペートンタン氏を首相候補として担いだ野党「タイ貢献党」が復権を果たすかどうかだ、という。

4年前の総選挙でタイ貢献党は、下院500議席のうち最多の136議席を獲得し第1党となったものの獲得議席数で第2党だった国民国家の力党の多数派工作に敗れ、政権樹立には至らなかった。タイの首相選出は下院だけでなく、上院250名の議員も参加する。

上院議員250名は、まず50名が、多様な社会集団などから選ばれた候補者200名から選出され、次に194名がタイのNCPO(国家平和秩序評議会)に直接選ばれている。そして残る6人は、3人は軍の最高指導者3名、残り3人は最高司令官、国防長官、国家警察長官が選ばれる。要するに軍政の息のかかった集団である。タイ貢献党が下院で過半数を取っただけでは首相を出せるとは限らない。

軍政に有利な首相選出法であるからタイ貢献党復権を果たすためには、下院で310議席以上を獲得する必要がある。4年前総選挙の獲得議席数136の倍以上の議席というわけで、いくらプラユット政権に人気がないとはいえ、政権交代が実現するかは予断を許さない。

ともあれ、3月初めから幹線道路沿いに立っていた看板の女性はどうやら、タイ貢献党党首にして次期首相候補、タクシンの末娘、ペートンタン氏のようだ。インラック元首相の姪にあたるわけで、顔もなんとなく似ているのも当然のことであった。タテカンの写真は20代後半に見えるが、実際は35歳、インラックさんほどではないが美人ではある。

 

■赤と黄のごたごた続き

タイに自分が移り住んだのは2009年の1月だった。タイへ母を連れて行っていいものか、と兄と事前調査に来る予定であったが、2008年11月に黄シャツ党(王様派)がバンコク空港を占拠し、兄の予定便がキャンセルになったので独りでチェンライ、チェンマイの介護学校や病院等を回った。2009年4月には赤シャツ党(タクシン派)がASEANサミットの会場になだれ込み、会合を中止に追い込んだ。

2010年3月からは、赤シャツ党が政府に国会解散を求めてバンコクの繁華街を2ヶ月あまり占拠した。最後は軍によって制圧されて、多数の死者や怪我人が出た。この時には日本人ジャーナリストからも死者が出たと記憶する。2011年の総選挙で赤シャツのタイ貢献党が下院の過半数を制し、黄シャツのアビシット首相に代わり、タクシン元首相の妹であるインラック氏が首相となる。しかし、黄シャツをバックとする憲法裁判所により、インラック首相が訴追され、更には下院総選挙無効の判決が下された。混乱の中、2014年5月にプラユット陸軍大将によるクーデタが起きた。クーデタ勃発当日、友人、息子とホアヒンへ移動していたのでよく覚えている。以来、8年プラユット首相による軍政が続いている。

 

■混乱の底には差別意識がある

タイの政治は簡単に言うと、北タイ、東北部の貧困層を支持母体とする赤シャツ党、都市富裕、中間層、軍部、エリート集団の支持を受けた黄シャツの対立構造の中にある。金持ちより貧乏人のほうが多いから、選挙では赤シャツが勝つ。でも黄シャツはクーデタで政権転覆をはかる。タイの政治はこの繰り返し。

黄シャツにしてみれば北タイの貧乏百姓の1票と、都市のエリートである自分の1票が同等であることに我慢がならない。多数決よりよりも頭や家柄のいい人が政権を担う賢人政治がタイの民主主義に合致すると考えている。

国民間で強烈な差別意識が存在しているので、一致点は中々、見つからない。何度か書いているが、個人的には強圧的であっても軍事独裁政権のほうが、政治混乱で死者、負傷者が続出するいわゆる民主政権よりずっといいと思う。この意見には多くの批判があることと思うけれども。