チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

スクータでラオス旅行(8)

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スクータでラオス旅行(8)

■周到な準備と決断
30年前、冬のマッキンレーで消息を絶った冒険家植村直己さんは、数々の冒険の成功から大胆不敵な面がクローズアップされているが、実際には人一倍臆病な性格で、十分な計画と準備を経て必ず成功するという目算なしには決して実行しなかったという。植村さんに影響を受けた登山家、野口健さんは、登頂を諦める決心がついたとき、今回の登山は成功だったと感じるそうである。周到な準備と引き返す決断、イモトのエベレスト登頂断念だって立派な冒険成功だ。

自分の場合、人生も旅も行き当たりばったりで自ら危険や失敗を引き寄せている感じがする。ポントン村に迷い込んだのは方向音痴でありながら、詳しい地図を持たず、焼き芋屋のお姉さんの身振りを自分に都合よく解釈して、だろう、よかろうで引き返す決断ができなかったせいだ。過ちて改めざる、是を過ちと謂う。これまでに何度過ちを繰り返したことか。孫のお守でのんびり暮らす年になっているのに全くと言っていいほど進歩が無い。

■美少女登場
ポントン村のスコールは1時間ほどで止んだ。だが山の方ではさらに降ったかもしれない。明日、とても同じ道を引き返す元気と自信が無い。自分とスクータを幹線道路まで運んでくれるトラックはないだろうか。チャンス―さんの言うにはそれは可能だろう、明日、朝10時に街へ向かうトラックがあるはずだから頼んであげるという。村を回った時に何台かトラックを見かけたので、何とかなるだろう。

そんな打ち合わせをしていると、女の子が2人やってきた。一人はモン族の民族衣装を着こんで唇に紅をさしている。なかなかの美人だ。チャンスーさんが「おお、来た、来た」とニヤニヤしている。ああ、そうか、この日、全身硬直の体験を何度も繰り返したため、体の筋肉がすっかり強張ってしまった。特に上腕三頭筋はガチガチだ。村にマッサージをしてくれる人はいませんか、と昼飯の時に尋ねたことを思い出した。チャンス―さんはうれしそうに「おる、おる」と言っていた。

その按摩さんが来たのだ。でも按摩さんにしては華奢だし、若すぎる。ソフトドリンクを飲みながら、少し雑談。名前はリンちゃんにミウちゃん(仮名)、タイ語ラオス語は似ているのでこみ入った話でなければ何とかわかる。すごいスコールだったね、大雨が降ると川止めになって何日も街へ行くことができないの、などと気の滅入る話をする。リンちゃんが、私、マッサージはあまりうまくないの、それに一晩だったら1000Bは貰わないと、などと言い始めた。えっ???? チャンス―さんがいいんだよ、一人でも二人でも部屋に連れていきなよ、と抱き寄せる仕草をする。明日帰れるかどうかで頭が一杯、とても女の子を連れ込むような気分になれない。それに年を聞いてみると19歳と16歳というではないか。神奈川県だったら立派な犯罪だ。二人はソフトドリンクの瓶に少し口を付け、包装の紙を剥がして「これ持って帰っていいですか」という。姉妹に中身を分けてプラスチック瓶は容器として再利用するのだろう。

なんで村に1000Bの経済援助をしてこなかったのですか、と友人にあとでからかわれたが、あの場面でそんなことができる人はいないだろう。

■三大欲望
GHの裏は川になっていた。5時過ぎになると女性たちが洗面器を持って川岸へ降りて行く。夕方の水浴だ。スコールで川の水がいくらか濁っていたが、特に気にしていない。布を胸から腰に巻いて優雅に水を浴びている。腰巻だけの女性もいるからカメラを向けることは躊躇われる。この風景は100年前から全く変わらぬものだろう。

チャンス―さんが、自分を鳥小屋の前に連れて行った。雌鶏とひよこがいる。あの雌鶏にするか、という。今晩のおかずのことらしい。あれを食べたらひよこが母無し子になる。次にバケツに入った20センチほどの小ナマズ、これにするか。ナマズのお母さんが泣いてしまう。夕飯はカオニャオとカチカチに揚げた豚肉だった。肉は歯が立たないので、カオニャオを少し食べただけだった。

電気が無いから暗くなったら寝るしかない。部屋は真っ暗だ。蝋燭が10本くらい用意されていた。1本で1時間ほど灯る。落語「死神」では、死神を騙した男が自分の寿命、蝋燭の火が消える場面に付き合わされる。三遊亭円生は死神の「けえるよ、けえるよ」の呟きで終わるが、小さんは主人公がくしゃみをして火を吹き消すところで終わる。

いずれにしても思い出すことは縁起の良くないことばかり。それでも人間の三大欲望の一つ、睡眠欲には勝てず、寝入ってしまった。(続く)




写真は村と村の子、村の川、野焼きの跡