チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

スクータでラオス旅行(7)

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スクータでラオス旅行(7)

■フラッシュバック
川には子供たちが20人ほどいた。水遊びをやめてみんな自分とスクータを凝視している。半数の子はスッポンポン、それで色が黒いものだから、本当に黒山の人だかりと言う感じだ。それほど深くはなかったので、川を渡る。
でこぼこの山道は続く。少し慣れてきたとはいえ、何処に大きな穴が、またスリップしやすいガレ場があるかわからない。この道は本当に幹線道路に通じているのだろうか。

60年も前なるが、迷子になったことを思い出した。鼻の奥がツンとしてくる心細さと絶望感。あの頃から方向音痴だったのだ。大きくなってもちょっと近道しようとしてとんでもない所に出たことが何度もある。車で遠出をすれば目的地に予定通り着けず、かみさんによく怒られた。

6年生の時、「今週の目標」をすっかり忘れ、全校児童の前で立ち往生した。大学入試の時、ペンで書くべき答案を鉛筆で書いていて、試験終了5分前に試験監督に指摘された。会社で送るべき書類をすっかり忘れていて、上司に怒られた。これまで人生で犯した失敗の数々が思い出される。こんな難行苦行をする羽目になるとは。一昨年アランとこけつまろびつ走った道と同じではないか。これはアランの呪いか、そんな悪い奴には見えなかったが。

少しでも気を抜くと、崖下50mに転げ落ちるという極限状態であるのに、妄念が次々に湧き上がる。人は死ぬ前にフラッシュバックのように自分の一生を思い起こすという。60半ばでこの生を終えるにあたって、知らず知らず自分の生涯を振り返っているのか。良きことはせず、皆に迷惑かけただけの人生だった。みなさんごめんなさい。母上、先立つ不孝をお許しください。

■ドン詰まり、ポントン村
もう一つ、小さな川を渡った。山岳民族の部落をいくつか通り過ぎた。罰金を払ったバーンスキアを出て2時間以上走り続けて、ある村に着いた。ともあれ、何か飲まなくちゃ。村の小間物屋にスクータを停めた。注文したファンタは生ぬるかった。冷たいのは?、ないわよ。

店のお姉さんや周りの人に地図を見せてこの道を行けば幹線道路に出るかどうか聞いてみた。異口同音にこの道は行き止まりになるという。やはり道を間違えたのだ。ウドンムサイに行くなら来た道を引き返さないといけないようだ。大きな道に出ることだけを頼りにここまで走ってきたのに嗚呼。とてもあの道を戻る元気はない。もう限界だ。

村人に案内されて、村に一軒だけあるGHに行った。GHでは40代の人の良さそうな主人が、まるで糸に絡まった獲物にすり寄る蜘蛛のように自分を迎えてくれた。昼食を用意するよ。この村に食堂はないという。選択の余地はない。異常に辛い卵焼きとカオニャオ(蒸しもち米)を食べながら主人(名はチャンス―さん)に聞いた。この村の名はポントン、住民は約200名、モン族が多い。この先は道が無いから、明日、来た道を引き返すしか手が無いという話は同じ。

注いでくれるビールが生ぬるい。氷はないの。電気が来ていないから冷蔵庫がない。この村には電気もなければ水道もないということが分かった。どうも部屋が暗かったはずだ。電燈もテレビもない。大きなベッドとトイレだけ。宿泊料は日本円で200円。まず妥当なところだろう。

■スコール襲来
意気阻喪していたので、昼食はカオニャオを少しつまんだだけ。それでも少し元気が出たので村の中を歩いてみた。また外人が迷い込んできたよ、という目で人が見る。軒先には糸繰り車や手織り機があって、女性たちがトントンと布を織っている。模様はモン族特有の格子模様だ。布地に興味のある人なら、即、価格交渉に入るのではないか。
広場には水道の蛇口があったが、錆びていて長いこと使われた形跡はなかった。トラックやピックアップを見かけた。トラックは「両備運送」のロゴがあった。岡山県からラオスの山奥にどうやって運ばれたのか。荒物屋が2,3軒あったので大きな街と行き来があることは想像できた。

蒸し暑く、どんよりした天候であったが、3時過ぎに大風が吹き始めた。スコールの前触れだ。GHを覆う大きなマンゴーの木からマンゴーが吹き落されて、GHのトタン屋根を直撃する。屋根を突き破るのではないかという衝撃だ。そして何も聞こえなくなるほどの豪雨が降り始めた。

この雨で川は増水しているだろう。渡れるだろうか。川の真ん中で転倒したら起こせないし、自分がメコンまで流されてしまう恐れもある。ポントン村に2,3日滞在する手もあるが、その間、またスコールが来るかもしれない。また鼻の奥がツンとしてきた。(続く)




写真は一昨年アランと通った道、渡った川、通り過ぎた部落、ゲストハウス、GHの部屋、モン族の機織り機