チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

クーデタ以後

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クーデタ以後

■一応、話し合いがあった
先月20日戒厳令が発動され、22日にクーデタが起こった。茶番という向きもあるが、クーデタに先立って、反政府側(野党、野党系デモ隊、上院、選挙管理員会)と政府側(タクシン派政府、与党プアタイ、タクシン派団体)との話し合いが、プラユット陸軍司令官のもとで開かれた。
やり直し選挙を求める政府側、負けることが分かっているので総選挙を阻止したい反政府側、結局妥協はできず、プラユット陸軍司令官が会議室の全員にこう告げる。「申し訳ないが、これより私が全権を掌握させてもらう」。事実上のクーデタ宣言である。彼が退席した後、どやどやと完全武装の兵士が入ってきて、会議室にいたメンバーは全員拘束された。話し合いで解決するなら、昨年12月の下院解散以来6カ月、その間に解決しているはずだ。

タイは1932年の立憲革命以来、何度もクーデタが繰り返されてきた。これで確か19回目だ。この軍政下で19回目の憲法改正が行われる。当面、軍政が続き、民政に移管して総選挙が行われるのは来年後半以降、少なくとも15カ月先とのことである。

■妥協のない対立
タイの政治はタクシン派と反タクシン派に分かれる。北部、東北部の貧困層を支持母体とするタクシン派、都市富裕層、中間インテリ層の支持を受けた反タクシン派という色分けだ。日本人から見れば、総選挙で多数を占めたタクシン派が組閣して政権を運営するのが民主主義の基本、もし現政権に不満であれば次回の総選挙で野党が過半数を取り返せばいいではないか、と思うであろう。そういかないところにタイ政治の難しさがある。
朝日新聞5月24日の社説では「タイの政変 力ずくでは解決しない」と題して、「日本を含む国際社会は、選挙を尊ぶ民主主義への道筋からこれ以上逸脱しないよう、軍などに働きかけるべきだ」とごもっともな意見を述べている。

軍政下で採択される新憲法では、タクシン派が過半数を取れない仕組みの選挙法が採択されるだろう。そうでなければクーデタをおこした意味が無い。95%の議席が確定した今年2月の総選挙を無効とした憲法裁判所、それに選挙ボイコットに手を貸した選挙管理委員会の努力が報われない。
ある勢力が初めから勝つ、という選挙が行われるとしても選挙さえ行われれば朝日新聞は支持するのだろうか。

■安心と安全が優先するなら
タイにはタイの民主主義があるとタイ人は主張する。特に都市部インテリにこういった意見を持つ人が多い。ただその実態はよくわからず、自分たちに都合のいいことが民主主義だと言っているように思える。
もし、いわゆるタイ民主主義により、一人一票の原則の総選挙は実施されない、ということになれば、はなから負けが決まった赤シャツ党はデモを繰り広げ、銃を撃ったり、爆弾を投げあう騒ぎになる。それに両派のデモ参加者の多くは1日500Bで雇われた北部、東北部の貧困層だ。金でどちらでも投票する人達でもある。これが尊ぶべき選挙といえるだろうか。
昨年11月以来、バンコクではデモ隊が市内の交通をマヒさせ、官庁を占拠し、反対派と小競り合いを繰り返し、死傷者も多数出た。経済に影響はないと政府は言ってきたが観光客の伸び悩み、消費の落ち込みなど影響が無いわけではない。

少なくとも行政がスムーズにいき、安心して車で移動でき、爆弾や銃弾の恐れが無ければ、軍政の方がよっぽどいいという国民は多い。事実、タイ国立大学が20-21日に行った世論調査では回答者の76%が戒厳令発令に賛成と答えている。

■気になること
これまでクーデタがおこると、必ず王様がお出ましになってクーデタ関係者の恩赦の勅命を出されたのであるが、今回に限り、ご動静が伝えられていない。この国では王様のご健康のことを書いただけでも不敬罪となって禁固15年の刑が下される。「タクシンはタイを民主主義国家と誤認した、それが彼の追放の原因だ」と書いたロンドンエコノミストの記者は国外追放となった。タイのマスコミはもちろん、邦人のブログでも書けないことがあるから、情報を集めようにも隔靴掻痒の感がある。

もう一つ気になることは、欧米各国がクーデタに対し、非難声明をだしたのに対し、中国が全くコメントしていないことである。タクシンはもともと親中国派と言われている。そのタクシン派が追われたのであるから、クーデタを非難してもおかしくない。

非難するとすれば「民主主義の原則に反し、力による支配は許されない」ということになろうが、それはそのまま自分に返ってくるからであろうか。



写真は警備の軍隊と兵士と記念写真を撮る市民(ニュースクリップより)