在留邦人を救えない国
■自国民を守る
アメリカのチェンマイ総領事の講演の折、会場から質問が出た。例えば、中国とタイが交戦状態に陥り、一般の住民、在留米国人に生命の危険が及ぶとき、米国政府は何かしてくれるのか。
総領事は「アメリカは必ず、あなた方を助けます」と胸を張り、米軍の救援機がチェンマイやチェンライに飛来して来ることを説明していた。
日本人会の役員がチェンマイ日本総領事館の邦人保護担当官に同じ質問をしてみたところ、もぐもぐと口ごもってはっきりした答えは得られなかったという。
タイで非常事態が起こる可能性はそれほど高くない。しかし、韓国ではいつ北朝鮮が38度線を越えて攻め込んでくるやもしれず、中国では「日本人を殲滅せよ」というデモが起こっていて、今はラーメンをぶっかけられたり、殴られたりする程度(この程度でも許せないが)ですんでいるが、中国政府の扇動の仕方によっては、12万人以上の中国在留邦人がテロの標的になる可能性がある。
「国民の命を守る政治」と民主党は言っているが、現状はどうか
■11月4日の産経新聞から
『在留邦人救えない国… 世界常識通じぬ「平和ボケ」』
(引用開始)
平成19年6月、青森県・深浦港沖で、漂流する木造の小舟が発見された。乗っていた脱北者の家族4人は北朝鮮北東部の清津から「生活が苦しくて逃げてきた」と証言。これを機に、政府内で北朝鮮崩壊に備えるシナリオが検討された。
当時の政府高官は「ソウルを中心に韓国に長期滞在する邦人を日本に退避させる手順を確認した」と話す。外務省の統計によると、韓国在留邦人は当時約2万3千人。ソウルでは、携帯電話などを通じてソウル五輪のメーンスタジアム「蚕室総合運動場」に集合し金浦空港か在韓米軍水原空軍基地に大使館手配のバスで移動、政府専用機や民航チャーター機で脱出する方法が検討された。
政府は1991(平成3)年の湾岸戦争で邦人退避を直接支援できなかった教訓から自衛隊法を順次、改正。「安全が確保されている場合」に限るとの条件で、邦人の「輸送」手段を政府専用機、輸送機と拡大していった。平成11年の改正では護衛艦も追加し、空港・港湾など出迎え地点での邦人保護のため限定的な武器使用も認めた。
だが、19年の検討では、退避人数の多さから「搭乗数の少ない輸送機派遣は現実的でない」と判断。政治的メッセージの強さもあり、「自衛隊が出る必要はない」との意見が大勢を占めた。元高官は「議論は実現可能性に集中し、憲法上の問題にはたどり着かなかった」と振り返る。
「海外での武力の行使」を禁じる憲法への配慮から、自衛隊による邦人保護に慎重な政府の姿勢を表す好例といえる。だが、各国では在外の自国民救出に軍隊を用いるのが一般的だ。時には相手国の同意を得なかったり、武器を使用したりすることもある。
米国は1980(昭和55)年、イラン革命での米大使館人質事件で軍を投入。イスラエルは76(同51)年、ハイジャック機がウガンダのエンテベ空港に着陸した際、ウガンダ政府の同意を得ずに特殊部隊を送り込み、空港を武力で制圧して人質を救出した。
現状を各国なみに近づける努力がないわけではない。自民党は政権交代後の平成22年6月、「安全確保」条件を削除するなどした自衛隊法の改正案を国会に提出した。空港・港湾などの出迎え地点まで自衛隊の部隊が邦人を「警護」することを可能にし、警護に必要な武器の使用も認める内容だ。成立すれば、他国領内でより積極的に自衛隊が活動できるようになる。
議論の過程では「この法案では北朝鮮に拉致された日本人を救出できない」とのより強硬な措置を求める意見も出た。だが、当時の法案作成担当者は「緊急時に国民を見捨てるのかという問いと、憲法上の制約を比較考量したギリギリの判断だった」と話す。その法案でさえ与党・民主党が応じず、現在まで一度も審議されていない。(以下略)
■自分の身は自分で
わが国の自衛隊は海外で紛争や事件に巻き込まれた邦人の退避や救出に従事したことがない。「海外派兵」を禁じる憲法9条の解釈で、「他国の領域内にある日本人の生命、身体、財産は(中略)、武力行使等の手段によって保護をはかることは憲法上許されない」(昭和48年9月19日、吉国一郎内閣法制局長官答弁)ためだ。
中国にある企業の非常時マニュアルには「日本政府の支援を求める」という手続きはないという。これを政府は恥ずかしいと思わないか。自国民の命を守れない国が、どうやって「国際社会において名誉ある地位」を占めることができるのか。一日も早い憲法改正が待たれる。
写真はお馴染みの品々、市場で売っているものです「蛙の干物」「竹虫」「蜂の子」。竹虫のフライは私の好物の一つです。