チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

片雲の風にさそはれて 4

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

片雲の風にさそはれて(4)

■見渡す限りゴム林
ラオス国境のモーハンから雲南省西双版納タイ族自治州の州都、景洪(ジンホン)まではバスで2時間余りの距離である。道路の両側は見渡す限り、また山のてっぺんまで整然たるゴム林となっている。植林して天に至る、といった塩梅だ。同じ高さの木が人工的に植栽されている。まことに殺風景で味気ない。どうしてゴムの木しかないのか。これだけの広大なゴム林から取れる生ゴムは中国の需要を満たすものだろうか。

■中国の天然ゴム消費
世界の天然ゴム消費量は2001年から拡大を続けてきた。2009年における世界消費量は955万トンとなっている。天然ゴムの消費量の多い上位5ヵ国を順に並べると、中国(366.9万トン、38.4%)、インド(90.4万トン、9.5%)、米国(68.7万トン、7.2%)、日本(63.7万トン、6.7%)、マレーシア(47.0万トン、4.9%)となっている。中国がダントツの1位だ。
中国の天然ゴムの消費量の伸び率は群を抜いている。この20年間における天然ゴム消費の増加分は300万トンを超え、その増加分は米国の年間消費量の4倍に達する。世界最大の消費国は2000年までは米国であったが、2001年に逆転して中国となった。その後の中国の毎年の急増により、2009年には米国の5倍以上に膨らんでいる。また、中国の天然ゴム輸入量は、1999年まで40万トン前後であったが、2009年には246.3万トンにまで増大している。

天然ゴムの用途の80%以上が車のタイヤ。チューブである。中国の2010年の新車販売台数は1800万台を突破、2年連続で世界一、モータリゼーションが中国の天然ゴム消費の原動力となっている。自動車の生産量が伸びるにつれて中国の天然ゴム消費はさらに伸びていくとみられている。

■天然ゴムの生産国
中国はゴムの最大消費国であるが、その国内生産量はどうか。2009年における中国の天然ゴム生産量は63万トンである。消費量の約6分の1を賄うに過ぎない。2002年の生産量は47万トンであったから、生産量は伸びているもののとても拡大する需要に追い付く量ではない。

急増する中国のゴム消費を支えた国はどこか。実は中国の輸入天然ゴムの50%はタイからきている、続いてインドネシア22%、マレーシア19%。
2009年における天然ゴム生産国トップ3はタイ(306万トン)、インドネシア(253万トン)、マレーシア(86万トン)、世界の生産量の70%をこの3カ国で占める。また天然ゴムの90%以上が東南アジアで生産されている。
なお、タイの輸出農産物価額の30%以上を占めるのが天然ゴムであり、米の16%、鶏肉関連製品6%をはるかに上回る主要輸出農産物となっている。

■天然ゴム価格上昇と中国の政策
中国の旺盛な需要もあって2000年にキロ100円前後だった天然ゴム価格は2006年に300円を超え、現在、キロ400円前後に高止まりしている。
価格が高くなれば作付けが増えるのが自然の流れである。ただゴムの木は気温5度以下になると枯死するので、作付けできる地域は限られる。亜熱帯気候に属する西双版納は中国では数少ないゴム栽培の適地である。中国で生産されるゴムの3分の2が西双版納で生産されるようになった。当初は国営農場が、近年では多くの漢人の民間業者が原生林を焼き払い、少数山岳民族を追い払ってゴム植林地の造成を進めている。森林破壊をメディアに告発した少数山岳民族は当局の取締に遭っている。チベットウイグルと同様の漢人による少数民族弾圧が雲南省でも起こっている。

西双版納は。50年前には65%が鬱蒼たる原始林におおわれていて、猿、象、豹、虎、孔雀、猪など野生動物の宝庫だったが、今や熱帯雨林は20%以下になり、希少な動物は姿を消しつつある。またゴム林は土壌の保持力が原始林の3分の1程度であり、土砂崩れ、鉄砲水などの自然災害を招きやすい。人民公社文化大革命下放された知青(インテリ青年)たちは争って森林を焼き、伐採してゴム園を開いた。その時、多くのタイルー族、山岳民族がラオスミャンマー、タイに逃れたというが、漢人のもとで金銭経済に従った人も多い。お金になるというので樹齢100年を超えるお茶の木を伐採してゴム園に変えた山岳民族もいる。現在、西双版納の人口は約100万人、漢人、タイルー族、ハニ族など少数民族のグループがそれぞれ3割ずつを占める。古来、西双版納は瘴癘の地と恐れられ、50年前に漢人はそれほど住んでいなかった。漢人流入増加は著しいものがある。ここ50年、ゴムのモノカルチャー制度のために西双版納の自然も人口構成も文化も激しく変わってしまったといえるだろう。


写真一番上はジンホン市内にて、他は車内からの風景