チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

宝石

タシケントと宝石

前嶋信次先生の「千夜一夜物語と中東文化」(平凡社)を読んでいたら「タシケントと宝石」という一文にぶつかった。
今回はその受け売り。

タシケントとは「石の町」の義であるが、昔は「シャーシュ」と呼ばれていた。これもペルシャ語で「石」を意味する。中国では意訳して「石国」と呼んでいたが、よほど古い町と見え、隋の煬帝の大業5年(西暦609年)に石国王が使節を洛陽に寄こしたとの記録が随書にある。聖徳太子の摂政時代のことで、小野妹子が隋から帰ったのも同じ年のこと。奈良などよりももっと以前からあった都会だったことがわかる。

製紙の技術が中国から西アジアに、エジプトから北アフリカをへてヨーロッパへと伝わり、文化の進歩を大きく飛躍させたことについても、実はタシケントが大きな役割を果たしている。唐の玄宗皇帝の天宝9年のこと、将軍高仙之は長躯して石国に遠征した。石国はすぐ降参したらしいが彼は和睦と見せかけて、急に攻めかかり、国王を捕らえ、老弱は虐殺し、若い男女は捕虜にしたのみならず、金銀、宝石、駱駝、馬などを略奪してきた。宝石は透き通った青い石といい、それが十余石もあり、黄金は駱駝に56頭に積むほどであった。ひたすら恭順を誓う国王も玄宗皇帝のもとで殺された。
しかし、石国の王子は難をまぬかれて、諸胡国に走り、高仙之の貪欲乱暴の次第を訴えた。諸胡国というのがサマルカンド、ブハラなどを初めとするアム河、シム河の間の国々、そのころはいわゆる紫髯緑眼のイラン系の民が住んでいた。彼らは激怒してアラブ帝国に助けを求めた。

あたかもアッバース朝の初期で、創業の功臣アブー・ムスリムがホラサン地方で東方鎮台としてにらみをきかせていた頃である。早速に、これに応じ、宿将ジャードに数万の兵を与えて出征させた。この報を得た高仙之もこれまた数万の兵を動員して西に向かった。天山の険を越えて、タシケントの東のタラス河のあたりまで行軍し、そこでアラブ軍との大決戦が行われた。西暦751年のことである。結果は唐軍の大敗北に終わる。アラブ側の資料によると「約5万を殺し、2万ほどを捕虜にした」とある。

 この戦いの捕虜の中に製紙の技術をもつものがあったので、サマルカンドに工場を建てた。これが製紙法の西方に伝わったはじめであった事はよく知られている事である。

またこのタラス戦のとき、アラブ軍の将ジャードがすばらしい紅玉を手に入れて、アブー・モスリムに送り、アブー・モスリムから時のカリフ、アブール・アッバスに献上した。この紅玉には後日談がある。第三代のカリフ、マハディーはある日、次男のハルンにこの紅玉をあたえた。長男ムーサはねたましくてならず、やがて自分がカリフの位につくと弟からこれを召し上げようとした。ハルンは悔しがり、バグダード市内を流れるチグリス河の舟橋の上から宝石を投げ込んでしまった。それから半年ほどたつと、兄のカリフが急死をとげたので、弟ハルンがアッバース朝第5代のカリフになった。
即位すると、すぐにチグリスの舟橋に行き、大臣をかえりみて「あのあたりを探させよ」と宝石の一件を話した。大臣もこれはと思ったが主命ではある。潜水夫を潜らせて見た。アラビアの潜水夫の息の長いことは古来有名で、イブン・バツータの旅行記によると、ペルシャ湾の真珠とりの中には1時間半も潜っている、などとある。とても信じられぬ話ではあるが、それほどに言われるだけあって、そのときも潜水夫の一人が首尾よく紅玉を拾い上げて浮かび上がってきたから、カリフの喜びは一通りのものではなかった。このカリフ、ハルンとは千夜一夜物語で活躍するハルン・アル・ラシッドのこと。昔のタシケントは宝石の多いところであったらしい。

ということでタシケントは宝石が多いところであった、と前嶋先生は書いておられるが、市内にはそれほど貴金属、宝石を売る店は目に付かない。自分に興味がないからかもしれない。しかし、今でもウ国から日本への輸出品目で第一位を占めるのは金であって、金は外貨獲得の柱となっている。また、通貨や預金に信頼を置いていない国民性だから、金の需要は多い。多少のスムが溜まると、庶民はドルに交換するか、何グラムかの金を購入する。街で金歯の人が目に付くのはこういった形で、いざという時の備えをしているのかもしれない。

ウ国で出会ったKatsuraさん(女性)がウ国の写真を提供してくれました。
いい写真が沢山ありますので是非ご覧下さい。
http://www.flickr.com/photos/kaymiz/sets/72157594293562049/show/

Katsuraさんのアルバム
http://www.flickr.com/photos/kaymiz/