チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ7年2か月

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介護ロングステイ7年2か月

■老々から認々へ
チェンライに来て7年2ヶ月経った。浦島太郎が流れ着いたのはインドシナ半島あたりではないかと書いたことがある。月日の経つのも夢のうち、子細に観察すれば、タイにも季節の移ろいがあるのだが、暑いなあ、と漠然と暮らせば、1年も2年も7年も夢のように過ぎていく。他人の子の成長は早いとはよく聞くが、近所の小学生が、いつの間にか中学生や高校生なっている。それだけ自分たちも老化しているのだろう。
あまり変わりのない母の日常であるが、過去の記事を読み返してみると、確実に衰えていることがわかる。現在チェンライ滞在中の弟に、おふくろ、去年の暮れに比べてどこか変わっているかね、と聞いてみたところ、ちょっとしぼんだかな、と言う。

女中さんはいつも、ママさん、ケンレーン(健康)、と言っている。この1年は病院のお世話にならなかったし、その前から風邪薬、胃薬を含め、薬は一切飲んでいない。煙害の被害が伝えられる北タイではあるが、咳き込むことも熱を出すこともなく、毎日が平穏に過ぎていく。

ブアさんは、以前お籠りしていたお寺の住職から、ママさんは100歳まで生きる、というご託宣をもらってきた。あと10年はこの家にいることになるんでしょうか、と神妙な面持ちだった。ママさんが100ならこっちは80近い。今でも老々介護であるが、この分で行くと認認介護、即ち、認知症の親を認知症の子供が介護する、ということになりかねない。ブアさんはママさん一人だけでも大変なのに、更にお爺さんの面倒は見きれません、と笑っているが、笑い話では済まなくなるかもしれない。

■老人増殖中
長寿は一般的にはめでたいとされる。経済学によれば、供給が多ければ価値が下がり、逆に供給が少なければ価値が上がる。昔、老人が敬われたのは老人が少なかったからだと思う。古稀、つまり70歳まで生きる人は、古来、稀(まれ)だったから価値があった。傘寿(80歳)や米寿(88歳)となれば、一族でお祝いするほどの希少価値があったのだろう。今ではどこもここも年寄だらけ。週刊ポストは数の多い年寄をターゲットとして「60歳からがいちばん愉しい、セ●クスのない人生なんて」、「80歳でもセ●クス、生涯現役のすすめ」といった特集を組んでいる。そのうち、「老人会はタイギャルと裸踊り、ホアヒンは最高」といったツアーが組まれるかも。恐ろしい世の中になったものだ。

恐ろしいと言えば、昨年、100歳以上の高齢者が全国で6万人を越えており、これが団塊の世代が100歳を迎える2050年には60万人を越えるという
厚労省は今年度から9月15日に100歳のお祝いに贈る「銀杯」を純銀製から銀メッキなどに変更する方針だ。対象者の増加に伴って膨らんだ事業費を抑えるため、とのこと。この報道は、年金受給者は受給後10年くらいで死ぬことを前提として作られている年金制度が崩壊することを示唆している。

がんや循環器系疾患の制圧が進めば、誰でも100歳まで生きられるらしい。長寿によって少ないパイの奪い合いとなるのか。長生きも考えものだ。

■5人に1人
長寿の仲間入りをした母は今の状態をどう思っているのだろう。数年前には、長生きしたくない、来年には死ぬよ、などと言っていた。母は食事とトイレ以外はベッドで寝ている、本人にとっては不本意な生活だろうと思う。
女中さんに貴方がママさんのようになったら誰が面倒見るの、と聞かれる。メーコック川に行って身を投げると答える。そういうと、女中さんは自殺はバーブ(悪行)、ママさんだって自分で川に行けないじゃないの。伝統芸能ではないが、何度この問答を繰り返したことか。親が認知症ならば子供もやがては認知症になるのだろうか。多くの認知症にははっきりとした遺伝性は認められないという。確実なことは言えないが、「両親が脳卒中で亡くなったら、子供も脳卒中になりやすい」くらいの遺伝性は認められるかもしれないという程度とのこと。

昨年、政府が「認知症国家戦略」で示した推計によると、65歳以上の認知症の人は2012年時点で462万人。およそ7人に1人だ。これが団塊の世代が75歳以上になる25年には、65歳以上の5人に1人にあたる700万人前後に増えるという。ということは65歳以上の5人に4人は認知症にはならない、ということだ。

現在は文字通り「老々介護」状態。母、平均65歳以上の兄、自分、それに弟夫婦の5人がいる。5人のうち1人が認知症にかかっているのだから、確率的には母以外は認知症にならない。だから「認認介護」の心配はどうやらクリア。残る心配は年金の減額だけか。