チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

食べながら楽しむ

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都営地下鉄両国駅付近

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AIによる復元板絵

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ポーランド人画家による

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初日協会挨拶

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初日取組から

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誰だっけ?



食べながら楽しむ

 

■のんびりと
ソファに寝転がって、あるいは布団に包まって相撲観戦をする。取り組みの間にお茶を飲んだり、お勝手に行って缶ビール取ってくる。菓子盆からイカ燻の袋を取って破く。袋が手ごわいので、歯で喰いちぎる。入れ歯だったらこんなことできないよ、と満足しながら、早めの一杯、あれ、1番、取組みが終わってしまったよー。ま、お目当ての相撲はこれからだ、慌てる必要はない。

のんびりと観戦できるスポーツは相撲をおいて他にはないような気がする。サッカーやラグビーだといつ攻守が逆転するかわからない。ぼんやりしていたらゴールやタッチダウンの決定的瞬間を見逃してしまう。

国技館の入場時間は13時からであるが、朝から夕方までだらだらと繰り広げられるスポーツは相撲くらいだ。今場所の初日、友人の好意で国技館へ相撲観戦に行った。桟敷に座った時、幕下上位の取り組みが始まっていたが、相撲好きが集まる館内は独特ののんびりとした雰囲気がある。

10年ほど前に亡くなった俳優、小沢昭一がこういっている。「昔の寄席にはとろんとした空気がありました。今、そんな空気が残っているのは相撲くらいのものじゃないですか」。

■場内飲食禁止
昔は芝居も寄席も相撲も朝から入れ替えなし、観客は弁当や酒を持ち込んで、1日を家族や仲間と楽しんだらしい。今、感染症のせいで国技館での飲食は禁止となっているが、以前はお茶屋さんから桟敷へ焼鳥や酒、ビールが次から次へ運ばれてきた。

独文学者で高橋義孝という先生がいた。横綱審議会の委員長を務めている。彼の言う最高にうまい酒とは「ご招待の桟敷で飲む酒だ」と書き残している。桟敷席の飲食代はすべて招待側の負担、懐の心配なしに好きな相撲を観戦できるのだから、酒の味も一段とうまく感じるに違いない。

寄席もつい最近まで客席での飲食は自由だった。弁当、酒の持ち込みは勿論、幕間には2つ目が籠を持って「えー、おせんにキャラメル、」などと売り歩いていたらしい。酔って、落語の途中に睡魔に誘われてしまう。そして夢見心地で語りが耳に入ってきてまた目が覚める。これを幸せな瞬間と言わずして何を幸せというか、と書いている人もいた。
今は椅子席であるが、昔は高座から見て両端が桟敷、観客席は座布団だけの平場だった。今のように開演から満席なることは少なくて、午前中、修行の足りない二つ目が噺を始めると、くるりと高座に背中を向ける老人がいる。落語家は、何とかその爺さんにこちらを振り向かせようと躍起になったという。

歌舞伎座では昨年8月から劇場内での飲食が禁止になった。それまではデパ地下で買ってきたお弁当を幕間に座席やロビーで食べることができた。今は劇場内の一部の食堂以外では食事できない。でも入場券の半券を持っていれば幕間に劇場外に出て飲食できるようだ。

自分の行く2本立て映画館では飲食が自由で、座席でホカ弁を搔き込む老人を見かけたものだが今は禁止。30分の幕間に一時外出カードを受け取って食事をする。日比谷シャンテなどの封切り館では上映中の飲食は原則禁止だが、場内販売のポップコーン、コーラ等は許されている。

■テレビ中継との違い
館内で見る相撲はテレビと違って再生がない。そのまま淡々と相撲が流れていく。テレビに「分解写真」が登場し、一番を振り返るようになってから相撲観戦は変質したと思う。呼び出しの朗々たる声、力士が土俵上へ上がってくる、行司の仕切り、次第に緊張が高まって制限一杯、待ったなし、となる。この一連の盛り上がりがテレビの相撲観戦ではブツブツと切れるのだ。

土俵上の行司の動きだけを注視していた。相撲が神事と言われる所以もこの無駄な動きのない行司の所作にあることがわかる。力士が動であれば行司は静、英語で力士はスモウレスラー、行司はレフェリーというのかもしれないが、英訳したとたんに1500年の歴史を持つ相撲が汚される気がする。
懸賞旗を持って呼び出しが土俵を一周するが、NHKは企業名を映すまいとカメラをスーッと引いてしまう。「お茶漬けの永谷園清酒大関、ラーメンひとすじ万珍軒、」といったテレビでは聞けない懸賞読み上げが館内に流れる。これも相撲の一部だ。

相撲の桟敷席から煙草盆が外され、館内禁煙となったのは平成25年だそうだ。いろいろ批判のあるお茶屋制度も300年以上の伝統がある。桟敷席の差配をほぼ独占と言っても、これでずっとやってきたんですから、だ。

国技館でも寄席でも劇場でも、早く飲食しながら楽しめるようになって欲しい、それが何百年も続く伝統なのだし。