チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ラフ正月

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ラフ正月

■餅と踊りのラフ正月
ラフ族の正月は中国と同じく旧暦で祝われる。今年の太陰暦1月1日は2月3日だ。3日をはさんで数日から10日ほどがお祭りの期間だ。村によって多少ずれがある。ラフの正月はその民族舞踊で知られている。
お祭りの初日、村の広場に生竹を4本組み合わせたコチェという櫓が立てられ、旗飾りや5色の吹き流しが取り付けられる。櫓は地面から2mほどの高さに一辺1.5mほどの台があり、そこに村人が寄進したお餅がおかれる。日暮れとともに笛、太鼓、シンバルの音に合わせてコチェを中心に村人が踊る。日本の盆踊りの小型版といったところか。ラフの踊りは足運びが重要でそのステップには32通りあるという。
昔は正月の踊りは若い男女がその思いを伝えあう歌垣の場でもあった。踊りの間にそっと自分のブレスレットを差し出す。彼女(または彼)が受け取って自分のブレスレットと交換してくれたら「脈あり」、受取ってもらえなかったら「脈なし」ということになる。

Hさんの家に着くと早速、搗きたての丸餅、各種豚肉料理で歓待を受けた。豚は今朝、神様に捧げられたものである。ラフ料理は大変美味しい。餅も自家製の天日干し餅米使用であるから、日本のコーンスターチ入り切り餅とは全然味が違う。
祭りの期間中、ラフの人は毎日、臼と杵で餅を搗く。杵は丸太の中央が細く、お月さまでウサギが使っている杵と同じ形。各家で餅をつき、村中の家に餅を配る。それぞれの家で搗いた餅を持ち寄って、また杵で搗き、それを再度、各家に分けるという風習をもつ村もある。

村人全員参加の踊りといい、宗教儀式と結び付いた餅の役割といい、日本の民俗との関係をうかがわせるものがある。

■ラフ族早わかり
ラフ族はチベットビルマ系、中国雲南省に45万人、ビルマに15万人、タイにはチェンライ県を中心に約10万人が暮らす。ラフとは「勇敢な人」を意味する。タイ人は彼らを「ムソー」と呼ぶが、これは「狩りをする人」の意味だ。狩猟、焼き畑農民で、15から40戸の家を1単位とした村を形成し、移動焼き畑を繰り返していく。最近はタイ政府の政策で、定住生活を送っているラフが多い。
女性は黒木綿地の長袖の短い上着、踝まである腰巻きスカートを着用する。衣装はステッチ、刺繍などで装飾されており、シックかつあでやかでもある。男も黒基調のジャケット、ズボンを穿く。ラフは文字を持たないので衣装の模様でラフの歴史や物語を表現しているという。但し、他の山岳民族と同じく、正月など特別の機会でなければ民族衣装は着用しないようだ。ラフ語はアカ語、リス語と似ているので山岳民族の共通語として使用されているとのこと。

■踊りに参加
村のあちこちで爆竹が鳴っている。中国正月の影響か。幼稚園児と見える子がライターで爆竹に火をつけ、ぽいと投げる。3秒後に辺りの空気を震わせて爆発音が響く。皆、手慣れたもので爆竹や花火を投げあって遊んでいる。
Hさんの村でも踊りはあるのだが、奥さんの姉さんが隣村の婦人部長で踊りが上手、というのでお姉さんの家に移動。古いラフ様式の家で、床、壁は竹、屋根は萱だ。家は半高床式で、部屋の半分が寝室、入り口に近い残り半分が居間でそこに囲炉裏が切ってある。お姉さんは竹と薪を囲炉裏にくべ、お茶を沸かし、包丁で切った丸餅を焼いて歓待してくれた。部屋は小さな蛍光灯一つだけ。囲炉裏に上がる火が我々の顔を照らす。梁や天井は黒く煤けている。煙には防虫効果があるので穀類の種が天井近くに保存されている。何人かの日本人がいたが、それぞれ、幼い日の囲炉裏の思い出を語ってくれた。4,50年前、地方ではこの様な囲炉裏のある生活が普通だったのだ。

村の広場で踊りが始まった。コチェを時計回りに輪になって踊る。40戸ほどの村であるから人数は決して多くない。昔は蜜蝋燭の明かり、今は小さな蛍光灯がコチェに取り付けられているが踊り手の顔が識別できないほどのほの暗さだ。晴れ着をまとった清楚な女の子が数名、あとはおばさんと子供だが4,5歳の幼女でもしっかりとしたステップを踏む。肩から掛けた太鼓と小さなシンバルが単調なリズムを刻む。誘われるまま、我々ゲストも鄙びた踊りの輪に加わる。熟年の兄に、12,3歳の村の少女が一緒に踊りましょうと手を繋いでくれた。日本で女子中学生が見知らぬ年寄りにこんなにやさしくしてくれるだろうか。

踊りの輪を離れて空を見上げると天の川が流れる満天の星空が見えた。

たくさんの丸餅をお土産にもらった。この土産もラフの風習だ。村を後にしたのは10時近かったが踊りは夜を徹して行われるのだという。



画像は全てラフ正月。上から「コチェという櫓の基での踊り」
以下祭の風景、踊りの輪
下から二枚は「お姉さん宅の囲炉裏、餅」