チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

スリランカ旅行(17)

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

スリランカ旅行(17)

■政治混乱のさなか
我々が旅行していた昨年の11月はスリランカの政治が大混乱していた。キャンディのGHでテレビを見ていたら国会で議員たちが取っ組み合いのけんかをしている様子が映し出されていた。混乱の原因は何か。岡崎研究所論評集、「中国を利するスリランカの政治的混乱」というレポートの一部をご紹介したい。


10月29日、スリランカのシリセーナ大統領が、突如、ウィクラマシンハ首相を解任し、前大統領のラージャパクサを首相に任命した。10月30日、シリセーナ大統領は、議会を一時的に11月16日まで停止することを決め、憲法上の混乱をもたらしている。


 今回、シリセーナ大統領が首相に任命したラージャパクサ前大統領と言えば、強権派、親中派として有名である。ラージャパクサ政権時代、スリランカ南部のハンバントタ港の建設が着工され、その資金の大半を中国からの融資で賄った。しかし、高金利の融資を財政の厳しいスリランカが返せるわけはなく、結局、債務は膨らみ、2017年7月、スリランカは、中国に、港の管理会社の株を70%、99年間、譲渡することに合意せざるを得なかった。

ハンバントタ港は、中国の手に渡った。この港を中国が実質的に取得したことは、自由で開かれたインド太平洋地域の維持・発展を願う自由主義諸国には、戦略的脅威となった。インド洋の要所に、中国が深海港を管理するということは、潜水艦を含む中国海軍が自由に港に停泊できることになる。それどころか、中国が管理権を有するということは、他諸国の寄港等を拒否することも出来るようになる。


 シリセーナ大統領は、もともと、ラージャパクサ前大統領の権力乱用を是正すると約束し、大統領になったはずだったが、今年7月、中国共産党政府からスリランカ政府のために20億元(約2億9千万ドル)の無償資金が提供され、シリセーナ大統領が個人的に受け取ったとさえ噂されている。それが、今回の政変劇につながったのではないかと憶測できる。

 それにしても、スリランカにおける政治的混乱はひどい。スリランカ大統領は憲法上、首相を任命する権限を持つが、シリセーナ大統領がラージャパクサの強権政治への反省から行った2015年の憲法改正で、大統領は首相を罷免する権限はないことになっている。ジャヤスリア議会議長はしたがって前首相が依然首相であるとしている。

 これに対抗して、大統領は11月16日まで議会を停止した。 2人の首相が並立する状況になっているが、こんなことで行政府が適切に機能を果たせるわけがない。まさに憲法上の危機を大統領が作り出している異常事態である。議会ではウィクラマシンハ首相の党が多数を抑えており、両者がどういう妥協にいたるか、よくわからない。

 シリセーナ大統領は、ラージャパクサの強権政治、中国傾斜を批判して選挙に勝ったのであり、中国の影響力からの離脱を図るものと期待されていたが、その期待には応えていない。

■一帯一路
習近平政権の巨大経済圏構想「一帯一路」は、中国の過剰生産のはけ口であることが動機であるが、米国の世界覇権に対する挑戦でもある。それを実現するための融資はえげつない。相手国に高利で貸し付け、返済不能になれば港などを借金のカタとして巻き上げる。一帯一路は「One Belt One Road」と訳されているが、西欧から「One Bribe One Rebate」と揶揄されている。賄賂と割り戻しだ。スリランカも前大統領が賄賂漬けになって港を取られてしまったので、その反動として反中の新大統領が選ばれた。でも新大統領も中国の賄賂を受け取って、親中の元大統領を首相に据えるという暴挙に出た。中国の高利貸的融資は感心しないが、借りる国には責任がないと言えるだろうか。

中国は露骨に為政者に賄賂を提供する。政治家も国の将来より自分や親族の利益を優先する。日本の政治家や知識人と言われる人の中にもどこかの国からお金を貰って、その意に沿うような発言をする人はいるが、発展途上国の賄賂まみれはその比ではない。親中派で有名だったマレーシアのナジブ前首相は45億ドルの不正流用で起訴されている。その金で豪華ヨット、美術品を指摘に購入していたとか。このほかにも数億ドルの賄賂を受け取ったと言われている。
マレーシアの他にも、ラオスカンボジアミャンマーベトナムモルジブバングラディッシュなど多くの国が「借金の罠」に陥っているが、元はと言えば、政治家が巨額の賄賂を受け取るからだ。

スリランカでは前大統領ラージャパクサ氏が首相職を退いたので混乱は一応解消した。でも途上国の腐敗体質が続くかぎり、中国の付け入る隙はなくならない。


写真はスリランカ旅行から