チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

孤独死予備軍

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孤独死予備軍

■知り合いの孤独死
2月の初めにチェンライの郊外に住むAさんが亡くなった。日本人会で時折お見掛けするだけで親しく話す機会はなかったが、長身で物静かな老人であった。相当年上と思っていたが享年は73、退職老人の多いチェンライでは「まだお若いのに」と言われる年である。彼はタイ女性と結婚していた。でもその奥さんに先立たれた後は一人暮しだった。警察の立会いの下で死亡が確認された、ということなので近所の人が早めに見つけてくれたのだろう。

タイでは最期を病院で迎えない限り、「変死」とされ、死因を解明するために死体検案および解剖が監察医によって行われる。もちろん彼の死は事件性のない病死と判定された。しかしながら問題はこれからである。日本人会の関係者が彼の部屋を調べてみたが、現金が12000Bしかない。いくらタイといってもこれだけでは葬儀費用を賄えない。チェンマイ総領事館では戸籍を頼りに親族を探し始めた。彼はタイで初めて結婚したので、多くの人のように前の奥さんの伝手を辿って、という親戚探しができなかった。兄弟姉妹もいなかったようだ。総領事館に提出してあった在留届には日本での連絡先として彼の友人の名前が記されていたそうだが、その「友人」に連絡を取ってみたところ、けんもほろろの応対で関わりあいを峻拒されたという。

親族を探す間、Aさんの遺体はずっと病院の霊安室に寝かされたままだった。寝ているだけでも1日350Bかかる。すぐに荼毘に付さないのはやっとのことで探し当てた親族が「なんで勝手に焼いてしまったのか」と総領事館にクレームをつけることがあるからだ。

死去から3週間以上経っても親族が見つからなかったので、と総領事館から火葬の許可が下りた。葬儀会場のチェンライ市営火葬場には日本人会を中心に邦人が十数名、それにAさんの村の人が数人集まった。僧侶の読経もあり、簡素な中にも形の整った葬儀となった。彼の部屋に残されていた写真が柩の中に納められた。背広にネクタイという姿が多く、多分サラリーマンだったのだろう。
やりたくはなかったが、人手が足りないため、ヤシの実に入った油を柩に注ぎこみ、柩を持ち上げて焼窯に入れる手伝いをした。見るともなしにAさんの顔が見えてしまった。霊安室であっても長期間経つと顔がまっ黒になってしまうということをはじめて知った。遺骨、遺灰はタイ式に散骨されたとのこと。

孤独死とは
孤独死」の明確な定義はないが、一般的には「自室内で、誰にも看取られず孤独のまま死亡すること」と解釈されている。第三者や身内の方に発見されるまで、しばらく期間が経過しているケースが多い。現在、日本では、年間の死亡者数130万人のうちの約3%が孤独死によって亡くなっていると推測され、いまやその人数は3.5万人~4万人にもなると言われている。

孤独死は、身寄りがなく、地域や社会とのつながりを持たない独居老人に起こる、というイメージがある。事実、孤独死の発生件数は60代、70代がピークとなっている。北タイでも同様の傾向がある。兄が帰国すれば自分も立派な孤独死予備軍だ。孤独死は友人、タイ人、親族、場合によっては総領事館、つまりお国に多大のご迷惑をかける。孤独死を避けるための傾向と対策はあるのか。

孤独死しやすい人
1.家事の苦手な中高年男性
かつて企業戦士と言われた団塊世代の熟年男性は、料理や掃除など家事全般を苦手とする傾向が強い。そのため、栄養状態や住居の衛生環境が悪化し、生活の質が低下しがちだ。不健康で食事もろくに食べられないにも関わらず、助けを求めることができず孤独死してしまう男性は多い。

2.人付き合いが苦手で社会から孤立しがちな人
男性は、退職により社会との接点が減ったうえに地域コミュニティへの参加を拒否するケースも多く、その分地域でも孤立しやすい。孤立してしまうとトラブルが発生した際に助けを求めたり、発見してもらえるチャンスが減り、そのまま亡くなる確率が高くなる。

3.病気や貧困を抱え暮らし向きが悪い人
経済的余裕がないために楽しみがもてない日常生活や、定年後の突然の熟年離婚で、金銭、伴侶を一気に喪失することも孤独死につながる要因のひとつと考えられている。

思い当たることが多々ある。今更、若い嫁さんを貰う気はないが、上記を克服するため、1.何でも自分でこなし、2.人付き合いを大切に、3.経済的に自立する、の3点には心していきたい。

Aさんの場合、身寄りがいないし、暗証番号が不明なので預金は全額銀行のものとなる。孤独死を喜ぶのはタイの銀行だけだ。自分もそれだけは避けたいと思っている。