介護ロングステイ8年1カ月
■変わらぬ日々
2カ月毎に高松とチェンライを往復している弟夫婦がやってきた。これからしばらく食生活が大幅に改善されて太ると思う。でもこの年になると楽しみは食べることくらいであるから、美味しいものが食べられるうちは、弟の嫁さんの好意に従って、素直に食べておきたい。
夫婦は早速、母に挨拶に来たがベッドの上の母の反応は心もとない。見つめたり、声を発するが弟たちを認識しているかどうかわからない。2ヶ月前と変わらないよ、と弟は言う。まあ変わらないことが今の母にとっては一番である。
変わらぬと言えば、息子として多少申し訳ないと思っていることがある。それは母の食事だ。野菜、卵入りお粥、それにバナナ3本、ふりかけで変化をつけているが、ここ数年、全く同じものを食べている。食べている、というよりメバーンに食べさせられている。毎日、同じで飽きちゃうよ、たまにはウナギでも食べさせておくれ、と言ってくれれば、冷凍食品を買いに走るのであるが、今は不満を伝えることもできない。
時折、ケーキや果物を少し食べさせると、黙っていてもブアさんやニイさんにばれる。ママさんのおなかの調子が悪くなりますからもうあげないように、と苦情がくる。先日、チェンマイ、チェンライの県境にある山岳民族の露店で、よく熟れたイチゴを買ってきたが、ブアさんの判断で母の口には一個しか入らなかった。
■バナナと健康
いつもブアさんは、ママさんケンレーン(健康)、と言っている。確かに熱も出さず、おなかも壊さず、気温の下がる乾季も風邪をひくことはなかった。ブアさんたちの小まめな世話のお陰もあるが、健康のカギほとんど変わらぬ食生活にありそうだ。注目されるのはバナナ、毎食3本、1日9本、週に63本、月に170本、母はここ数年で数千本のバナナを食べている。毎食3本食べさせるように、と自分が指示したことはない。ブアさんがバナナは老人食に良いというタイの習慣を踏襲したものだろう。気が付いたら毎食バナナを食べていました、という感じだ。
バナナにはビタミンB₁、B₂、B₆、C、カリウム、オリゴ糖などが含まれ、食物繊維が豊富なことから整腸作用がある。女性の敵、便秘解消に効果があるところから、バナナを食べると肌が美しくなるという。またバナナには赤ワインやお茶に含まれるポリフェノールも多く含まれているので、高血圧などの生活習慣病や花粉症の改善にも役立つ、更には免疫機能を高めるので、がんの予防にもよい、とされている。
「食と健康」といった記事を読むと、1日1本、バナナを食べるだけで上記の効果が得られるという。母の場合、トイレに行く回数が一定しており、これはバナナの整腸作用が機能しているのではないかと思われる。バナナ健康法についての記事は山ほどあるが、若い人にはいいが年寄が食べていけないバナナといった、バナナの種類、適性について書かれた記事はない。やはりバナナの種類が豊富なタイならではの知識をブアさんは言い伝えで身につけているのだろう。
■食と健康
健康長寿は人類の願い。バナナに限らず、これを食べれば健康になる、がんにはこれが効く、認知症はこれで防げるといった記事が山ほど出回っている。納豆、牛乳、リンゴ、スイカ、ナス、モロヘイヤ、なんでも食物の名前のあとに「健康法」をつけてググると、へー、こんなに体に良かったのか、という解説が読める。
現役の頃に比べれば、ストレスもなく、適度な運動をして健康な生活を送っていると思うが、寄る年波、体に良いと聞けば一応耳を傾け、時には実践することもある。
フェイスブックでシナモンを用いる健康法を知った。朝夕、小さじ一杯のシナモンの粉末に大匙1,2杯の蜂蜜を加え、熱湯で溶かして飲む。効能は血糖値を下げ、免疫力を高め、関節の炎症を改善し、消化を助け、不眠にも効く、自分にはあまり関係はないが性欲を高める作用もあるとのこと。
北タイに住む地の利、純粋蜂蜜も安価な肉桂の粉も簡単に手に入る。テニスで右ひじに違和感があったから、まじめに朝晩、シナモン蜂蜜を飲み続けた。確かに関節の痛みは消え、おなかの調子もよくなったように思う。でも味に飽きてしまって今は中断している。いくら体に良くても美味しくないと続かない。
最近、ビール健康法を紹介して貰った。これなら続けられそうだ。骨密度を高め、心臓病のリスクを減らし、認知症の予防になるという。母もビールが好きだったけれど、一緒にジョッキを傾けることはもうできない。
ビール愛好家に朗報です。ビールに健康増進作用があることが発見されました、の記事はこちらから。
http://www.imishin.jp/more-beer/
写真はバガンの考古学博物館とその収蔵品。