9月の末に、チェンマイ日本総領事館の邦人保護担当の領事さんから安全対策の講話があった。総領事館には警察庁の領事ポストがあるようで、各県警の中堅幹部が交代で派遣されてくる。赴任して5ヶ月目というＭ領事はＫ県警の出身、30代の快活そうな人、まず、8月の爆弾テロの話から。すでに数人が逮捕され、17人に逮捕状が出ているのであるが、領事にもさっぱり犯行の全貌が分からない、とのこと。
実行犯もカンボジア国境で捕まったウイグル人という話だったが、最近の報道では、警察は最初に逮捕されたトルコ人を黄色シャツの実行犯と断定した。この男は200通の偽造パスポートを持っていて、爆弾を実行犯に渡しただけといわれていた。逮捕からひと月もたってから実は私が実行犯でした、と白状したのだろうか。警察の発表する爆弾テロ実行犯、つまり黄シャツの男の似顔絵が、だんだん、最初に逮捕された男の顔に近くなってくるのが笑える。
この爆弾テロでは、タイ人、トルコ人、中国系ウイグル人、マレーシア人などが逮捕されているが、国際テロ組織からの犯行声明はない。
CIAやMI6など西側謀略機関が中国にすりよるプラユット政権に警告を発した、という見方があることを紹介した。西側諸国の忠告を無視し、ウイグル人を強制帰国させたり、中国に鉄道工事を発注していると、タイの治安はガタガタになり、頼みの観光収入に影響が出るぞ、という脅し、というわけだが、多分、この爆弾テロの全貌が明らかになることはないだろう。
クアラルンプールから北京に向かっていたが、そのまま姿を消したマレーシア航空機370便ほどではないが、謎の残る事件ではある。
ともあれ、事件の背景、犯行理由がはっきりしていない以上、一般邦人に置かれましては、ナイトバザール、繁華街など大勢の人が集まる場所には可能な限り、近づかないで下さい、万一、不審物を発見した場合は「踏むな、触るな、蹴飛ばすな」を心掛けるように、と領事さんは締めた。至極御尤も。
■交通事故防止対策
領事さんは交通課の出身らしい。チェンマイに来て、街の交通事情を見て衝撃を受けたと言う。ノーヘル、バイクの3人乗り、4人乗りは当たり前、傘差し運転、運転中の携帯電話、バイクで電話はまだいい方で、アイスクリームや玉蜀黍をかじりながらバイクを走らせている。もし彼が警笛を口にくわえて街角に立ったら、ずっと笛を鳴らし通しだろう。
チェンライでは国道を逆走するバイクや自動車を時折見かける。日本からのお客さんが、「ああっ、逆走だ」と絶叫したことがあって、運転していた自分は逆走車より、声の方にびっくりした。路肩を走るから、正面衝突という恐れは殆どないが、確かに初めて逆走車を見た時はビビった。逆走する理由は、Ｕターン個所が遠くにあるので、時間と燃料を節約するため。逆走してすぐ右折、というケースがほとんど。
飲酒運転はしないこと、飲んだ時はトゥク・トゥク、あるいはタクシーで帰宅するように、と領事さんは言われていたが、夜半のチェンライではなかなか難しい。市内の飲み屋の前はいつも車が一杯。全員飲酒運転で帰宅に決まっている。ある食堂でトラックの運転手と助手が降りるなり、食前にラオカオを飲み始めたのを見てびっくりしたことがある。新築祝いにやってきた制服警官が泥酔しているにもかかわらず、バイクに乗って署に戻った、こんな話を聞いたら、また衝撃を受けるのではないか。
■無免許運転
もし、領事さんがアカ族の村など山間部に行ったら更に衝撃を受けると思う。山では小学生が坂道でバイクを飛ばしている。当然ノーヘル、時には弟や妹か、幼児を後ろに乗せている。幼い妹が泣くのでバイクで子守りをしているのだろうか。二輪免許は16歳からだから、見た瞬間に無免許とわかる。
市内で時折、交通検問を実施しているが反則金支払い所はいつも長蛇の列だ。多くはノーヘルと無免許運転、200Ｂ払えば、またバイクに乗って帰れる。バンコクのタクシー運転者の約1割が無免許というからチェンライの無免許運転者の割合は50%を越えているだろう。ブアさんも何度言ってもバイクの免許をとりにいかない。バイクで陸運試験場に行って、実地に落ちてもそのままバイクで帰れるのだが、学科に自信がないと言う。それに警察に捕まっても200Ｂだし、と思っているのだろう。
「郷に入りては郷に従え」という言葉があります。しかしながら、こと交通安全に関しては、是非、日本のルールに則った交通マナーを厳守して頂きたい、が領事さんの結論。郷の慣習に少し染まってしまった自分はもう日本では運転できないと思う。
写真は似顔絵の移り変わりと爆弾実行犯、3人乗りバイクなど。
