メコンのナイアガラ
■旅のスキルを一つ習得
ラオスに入って毎日300キロから400キロ走った。サナブリ、ビエンチャン、タケークの3都市をただ寝るだけで通過し、4日目に目的地、パクセ―に到着した。パクセ―はチャンパサック県の県都、人口10万、ラオスとしては大都市である。ワット・プーやコーンパペーンの滝といったラオス南部の観光名所を巡る起点となる街だ。
パクセ―では初めて「ホテル」に宿泊した。それまではGHばかり。もっともホテルといっても一泊600B、日本円で2千円くらいか。2泊するのでホテルでTシャツや靴下の洗濯を頼んだ。1キロ40B、安いのか高いのかわからない。Nさんに洗濯の話をしたら、何だ、街に自動洗濯機がありますよ、という。チェンライの裏通りでもよく、20B、30Bと書かれた洗濯機をよく見かける。それと同じものがあるという。Nさんは、旅先でこの自動洗濯機を探して衣類を洗濯するという。そのために小さなポリ瓶に入れた洗剤を用意している。さすが旅慣れた人は違う。
雨にあって薄汚れたGパンを洗いに行った。洗濯機がいくつか並んでいる場所がある。そこにいるおばさんにお金を払う。洗濯機に衣類を放り込み、そこへNさんから貰った洗剤をふりかける、スイッチボタンを押す。そして1時間後に脱水済みの衣類をとりに行く。Gパンは脱水してあっても通常、一晩では乾かない。そこでクーラーやファンの風を使って乾かす。 大して難しいことではないのだが、初めてのことである。お陰で一つスキルが身に付いたようで嬉しかった。ホテルの洗面所では靴下やTシャツはともかく、Gパンの洗濯は無理だ。
■コーンパペンの滝
チェンライは盆地である。山に囲まれているから滝が多い。チェンライに来た頃、滝巡りに夢中になり、滝に着くなり水着に着替えて水に飛び込んだものだ。滝イコール水遊びのイメージがある。コーンパペンの滝でも泳げるのではないかと言って、Nさんに笑われた。ナイアガラに飛び込むようなものですよ、という。時には樽にはいって滝壺に落ちる冒険家もいますが?、まあやめときなさい、滝での水遊びなど死と隣り合わせですよ。
パクセ―から南に150キロほど13号線を下るとコーンパペンの滝に着く。まっすぐで眠くなるような単調な道路だ。コーンパペンの滝はメコンのナイアガラと言われている。滝の高さは21mでそれほどの落差ではないが、川沿いに10km以上に渡って滝が続いて、平均流量、約11,000km3/sという。この滝が、メコンを海から中国まで航行できない理由の1つになっている。19世紀後半にフランスの植民者が滝を航行しようと何度も試みたが、いずれも失敗に終わったという。
滝の公園入り口に駐車場があり、まずここで5000キップの駐車料を払う。駐車場の前の入場券売り場で入場料5万キップ(200B、約700円)を支払う。入口はかなり滝から離れているのだが轟々という水が流れ落ちる音が聞こえてくる。ここでもワットポーと同じく、観光用電気バスが走っていて、見晴らしのいい河岸に観光客を運んでくれる。
雨季とはいえ、まだ水量の少ない時期ではあるが大量の水が轟音と共に岩を噛んで流れ落ち、白く波飛沫が立っている。水が岩肌を噛むというと日本では渓谷の源流に近い川を想像するが、メコンもここでは下流域、どうしてこんなところに滝がと考えてしまう。原子力規制委員会の大好きな「活断層」がラオス、カンボジア国境近くに走っており、その影響で段差ができたという話をネットで見たが本当だろうか。
ともかくこの迫力は一見の価値はある。さすが景勝地ということで、ワット・ポーよりも多くの観光客でにぎわっている。滝壺近くの岩の上から投網を打つ漁民が何人も見られた。このあたりメコンオオナマズのほか、魚がたくさん生息していることで有名らしい。
■水遊びする人
滝は一直線の断崖を流れ落ちるわけではなく、河にいくつか張り出したり、引っ込んだりした岩の間を落ちてくる。河岸に近い岩の下はチョロチョロと水が流れ落ちる小さなプールとなっており、ラオス人のおばさんや若者が水着に着かえて水浴を楽しんでいた。どういうわけは水の透明度も50センチはある。メコンの川水はラテライトで赤茶色に濁っているという先入観を覆すものだった。パンツ一丁になって水に浸かろうと思ったが、観光客から丸見えだしと諦めた。
Nさん、滝壺で泳いでいましたねえ、というと、ええ、私も写真を撮りましたよ、と澄まして言う。ラオスのおばちゃんとパンツ姿の自分のツーショットを撮られなかっただけでも、やはり水浴びしなくてよかったのだ、と自分に言い聞かせた。
写真一番下は滝壺のプールで水遊びをする人