チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ツーリングに慣れる

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ツーリングに慣れる

■陥没個所に注意しながら
バイクツーリングの時、どんなことを考えるか。何も考えない、心が解放され、無心の境地に至る、という人がいる。「ツーリング禅」を説くライダー僧侶さえいる。

ラオスでは無心どころか、ほとんど心の余裕がなかった。ラオスの道路は中央線のない片側1車線道路。メコンの洪水対策のためか左右の平地より一段、高い場所を走っている。下は田んぼや沼地、そこに水牛がのんびりと草を食んでいる。もしちょっと方向を間違ったら道路から転げ落ち、水牛のいる沼にまっしぐら、そこで水死か。ガードレールはないが時折、防護の石柱が並んでいる。これに激突すれば体は宙に飛び、首の骨を折る。前に青竹を積んだトラックが走っている。もし、急停止したトラックに気づくのが遅れたら、青竹が胸を貫通、串刺しになってしまう。脳裡に浮かぶのは不吉なことばかり。

西洋の格言に、「最善を願い、最悪に備えよ(Hope for the best and prepare for the worst)」とある。事故を起こしては多くの人に迷惑をかける。ラオスに入って暫くは小心なほど運転に気をつけた。

ラオスを南北に走る13号線には時折、陥没個所がある。これは道路を痛める大型トラックが走ることと、アスファルトやセメントの使用量が少ないせいと思われる。気づくのが遅れて穴ぼこを避けられないことがあった。大型スクータであるから、小さい穴ならそのまま、大きい穴の場合、機体からガチャンという衝撃音が出るが、そのまま通り過ぎることができた。陥没に車輪をとられて転倒するということは殆どないのではないか。もちろん、好んで陥没個所を走ったわけではなく、最低限スピードを緩めて穴ぼこを通過した経験から言えることである。

ラオスの道に慣れる
ひたすらメコンに沿って13号線を下り、ラオス南部の観光拠点、パクセに着いたのはチェンライを出て4日目だった。パクセは人口10万、空港もある南ラオスの最大都市だ。4日目ともなるとラオスの右側通行にも慣れてきた。日本とタイは左側通行だが、世界の道路の90%は右側通行という。右側通行を広めたのはナポレオン、ラオスはフランスの植民地だったから右側通行は当たり前か。

観光開発、そしてラオス、タイ、カンボジアベトナム有機的な交通網整備を目的として、日本の援助によるラオ・ニッポンブリッジ、通称パクセ橋がパクセ市内を流れるメコンに架かっている。全長1380m、このあたり、乾季と雨季の水位差が12mもあるため、施工にあたった清水建設間組は特殊工法を用い、昼夜兼行、国内における同種工事の2倍以上のスピードにあたる月平均106mという高速での橋桁架設を実現したという。パクセ滞在中、何度かこの橋を渡った。歩行者通路があり、多少車道が狭く感じるなど、どことなく日本の橋を思わせる。

パクセを拠点にして、メコンのナイアガラと呼ばれるコーンパペン、ラオス2つ目の世界遺産、ワット・プーに行くことができる。パクセと観光地を結ぶ道路は、日本並みに整備されており、いわゆるツーリングの醍醐味が味わえる。

■爽快感を味わう
Nさんがタイの道路は走りやすいですよ、と言っていた。ラオス国境、チョンメックからウボンラチャタニへの道路に入ってNさんの言った通りと実感した。片側2車線、中央分離帯があり、道路上には白線が引いてある。道路を横切る牛やヤギは見当たらない。中進国と後進国ではこうも違うか。

ラオスでは、バイクなら横幅2mあればすれちがえるんだよ、とこちらが端に寄ることを前提にトラックやバスが正面から突っ込んでくる。タイでは中央分離帯があるから正面衝突覚悟の対向車はこない。安心してスピードを出せる。タイに入って初めて無心のツーリングを経験することができた。無心となった時、人は素晴らしいアイデアが閃く。

湯川秀樹博士は寝床でぼんやりしている時に中間子理論を思いついたというし、ノーベル化学賞福井謙一先生も寝床で横になっている時に「フロンティア電子理論」が閃いたという。
チェコ出身の化学者、オーギュスト・ケクレは6匹のヘビが互いのしっぽをくわえて輪になっている夢を見て、ベンゼン核、いわゆる亀の甲構造を思いついたと言われている

作家の遠藤周作氏は電車や車に乗って景色などをぼんやりながめているときに、突然、あるイメージが明瞭な形で浮かび上がってきて創作を助けてくれたそうだ。遠藤氏によれば、その現象はまったく不意に訪れるということなので、前もって期待はできないのだという。

ノーベル賞や小説は無理にしても、ツーリング中に仕事や生き方のヒントが閃くライダーは少なくないのではないか。




写真はラオスの道路とパクセの街かどで。