チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

頑張らない風土(4)

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頑張らない風土(4)

■頭の中身は変わりない
国籍や肌の色によって頭の良さは違うか。決してそんなことは無い。筑波大学の経済博士号を取ったタイ女性と会ったことがある。性格もさることながら言葉の端々に彼女の明晰さが見て取れた。ウズベクに法科大学という大学がある。卒業すれば弁護士、判事、検察官などの法曹資格が自動的に付与されるエリート養成大学だ。その大学から日本の大学院へ留学するという学生数人と会食する機会があった。全員、法律を学びながら、4年で「日本語検定1級」を取得している。日本人でも1級を取るのはむつかしい。自分の知らないコトワザを駆使しながらの歓談は楽しいものだった。例えば、「這っても黒豆」という諺をご存じだろうか。これは、これは虫だ、とみんなが言うのに、いや黒豆だと言い張る。やがてその黒い粒がもぞもぞ這い出しても、いやこれは黒豆だと言い張る。負け惜しみの強い人のことを言うらしい。
後々、落語のマクラで聞いたことがあるが、後にも先にも日本で「這っても黒豆」に接したのはこの時だけ。専攻の学業の傍らにウズベク語を学び、4年でウズベク人も知らない諺を駆使して、相手をやりこめるような日本の学生さんはいるだろうか。それにしてもすごい頭脳の若者たち、と舌を巻いた覚えがある。

何処の国であろうと頭のいい人はいるし、そうでない人もいる。押し並べて「有色人種はバカだ」などということはないし、「白人だから優秀だ」ということもない。ユネスコは1951年に出した「人種と人種差別の本質に関する声明」の中で、人種の優劣には根拠がない、と言っている。国連に言われなくても、外国人に接したことのある人ならば当たり前のことと思うだろう。
でも頭の良し悪し、人種の優劣は無いのに、どうして国に経済格差があるのか。

■能力よりもコネとカネ
ウズベキスタンは階級社会だ。1989年、ソ連から独立したが、共産主義の残滓が残っている。中国でもそうだが政府関係者、役人は特権階級である。運よく特権階級の家に生まれれば、国立大学でも優先的に入学できるし、海外留学も容易だ。では一部特権階級に属さない人はどうするか。コネのある人にお金を渡して有力者にクチを聞いてもらう。
入学、国家試験、就職、何でもカネが必要。学校の成績もカネ次第。期末試験が終わると教師が成績を発表し、成績を上げたい人はXX円持ってくるように、と言う。その金額は日本円にして数百円だったと思うが自分のいた頃、教師の月給が100ドルくらいだったから、バカにならない臨時収入となる。どの教師もワイロを要求するわけではない。でも教頭先生に頼めば成績を上げてもらえる。

「中西先生のいいところはワイロを取らないことです」と学生に言われたことがある。オレのいいところはそれだけかよ、と落ち込んだものだが、学生さんにしてみれば褒め言葉だったのだろう。

ウズベクも中国と同じく、都市在住者と農村部在住者の戸籍は違っていて、地方の人は都市戸籍が無いので原則、タシケントで就職できない。農村の土壁の家に生れたら、少々頭がよかろうか、性格がよかろうが出世の道は殆どない。いくら勉強を頑張っても、自分より成績の悪い生徒がコネやカネで合格していく。協力隊員がウズの生徒に「頑張ってね」と言っても彼らはその意味が理解できなかったという。えっ、頑張るといいことでもあるの?
大学でも定員の1割程度は実力で合格するそうだから、コネもカネもなければ死に物狂いで頑張るしかない。でも普通の人は「どーせ無理」だから初めから頑張らない。地道な努力を放棄して、コネとカネの世界に走る。

■何年経ったらウズベクは日本に追付けますか?
という質問を何度もウズで受けた。「百年たっても追いつけねえよ」と正直には言えないから、当たらず障らず、「製造業の伝統もありますし、社会システムがちょっと変われば、ウズベクが日本に追い付くのもそう遠い将来ではないでしょう」と答えたものだ。社会システムと簡単に言うが、ウズに蔓延した階級制度、差別のシステムがすぐ変わるとは思えない。

どこの国でも一部のエリートが頑張るのは当たり前だが、国が豊かになっていくためには一般庶民が頑張って、その頑張りが正当に評価される社会でなければならない。10の能力の人は10か11の,7の能力の人は7の、3の能力の人は3の能力を出し切って、みんなが満足した日々を送る。家柄ではなく能力本位、こういう社会のほうが発展しやすいような気がする。

何度か書いているがタイは階級社会、頑張らない合理的理由があると思うが1800字を越えたのでこれにて打ちきり。




写真はチェンライの花博から