■今がベストシーズン
2月に入って最低気温が17度くらいに上がってきた。1月は最低気温が10度くらいの日があり、タイの暑さに馴化した体にはかなりこたえた。
チェンライには街の中にも郊外の村にもお寺にも何処にでも放し飼いの犬がいる。寒さは和らいだが、まだシャツを着せられている犬を多く見かける。犬に着せるのだから着古したTシャツで、洗濯などしない。アカ抜けない雑種ばかりなのによれよれのTシャツ姿でさらにみじめに見える。小型犬や時には猫もシャツを着ている。猫だと赤ん坊のシャツでも大きすぎる。ちゃんと動物用のシャツも売られているのだろう。
最近は日中、30度近くに上がる。自前の毛皮を着ている犬猫にとってシャツは迷惑ではないかと思うのだが、タイ人の過度の優しさはそこまで考慮していないようだ。
チェンライのベストシーズンは乾季の11月終わりから2月まで。雨が全く降らないわけではないが月間平均雨量は20mmを下回る。まず天気の心配をする必要が無い。主催者並びに参加者の一番の心配、「雨天順延」が無いので、この時期、野外イベント、スポーツ大会が盛んに開催される。
■冬トレのメッカ
自転車競技の邦人選手がチェンライで冬季練習をしているということは以前書いたことがある。チェンライから南東へ70キロ、国境の観光地プーチーファへ行く途中にトゥーンという街がある。いつの頃からか、この街に日本から自転車競技の一流選手がやってくるようになった。トゥーンでGHを営むNさんは元国体の自転車競技の選手だった。20人以上の自転車競技の選手がここにやってくるのはNさんの人徳もさることながら、自転車トレーニングに絶好の条件をチェンライ県が備えているからに他ならない。坂あり、平地ありの変化に富んだ、通行量の少ない舗装道路、暑くもなく寒くもない気候。それにまず雨が降る心配が無い。好きなだけ練習できる。
日本の一流選手と一緒に練習できるという噂が広まり、シンガポール、マレーシア、台湾、韓国からもアスリートがNさんのGHに集うようになった。チェンライは自転車の冬トレのメッカと言われる所以である。
■出走時間の変更
例年、1月にチェンライで自転車レースが開かれる。国内レースであるがタイ国内はもとより海外からもアスリートが集まる。NさんのGHにいる選手もトレーニングの一つとしてこのレースに参加する。今年の会場はチェンライ市内から30キロほど北に上がったメチャン。一昨年もここでレースが行われ、1位から4位までをトゥーンの冬トレ組が独占した。あの時、日本人選手は宿舎のあるトゥーンから競技会場のあるメチャンまで100キロを自転車に乗って来て、レース終了後、100キロをまた余裕で帰った。1日200キロの走行は通常の練習量だそうだ。
さて、レースは女子、ジュニアなどいくつかのカテゴリーに分かれて行われるが、強豪がひしめくオープンレースは通常、午後行われる。相撲でも落語でも結びの一番や真打のトリは最後と決まっている。ところがレース前夜20時ごろになってオープンレースは開会式直後、午前8時出走という連絡があった。こうなると選手はトゥーンを夜明け前に出発しないと間に合わない。これは優勝候補の日本チームに対する牽制か、吉良上野介の手口にヒントを得たのか、と一瞬、あらぬ疑いを抱いた。でも真実はタイのイベント進行の融通無碍、言い換えればいい加減さの表れであろう。開会式だけで帰る偉い人がメインレースを見たいとでも言いだしたのではないか。
そう言えば一昨年も50歳以上のカテゴリーに登録し、わざわざ日本から来た60歳の方がレース時間の変更を知らされず、いつの間にか棄権ということになっていた。怒るよりも落胆していた彼を慰める言葉もなかった。
■入賞を逸す
午前8時10分、数十人の選手が一斉にスタート。1.7キロの周回コースを30周、50キロの短距離レースだ。50キロを1時間ほどで走りぬける。シャーという音と共にトップ集団が走り抜けると風が巻き起こり、持っていた日章旗がはためく。日本のトップ級が3人出るから、こんな草レース、1-3位を独占だ、と思っていたが、斜行してきた外人選手に接触し、全日本代表が跳ね飛ばされてしまった。サドルが飛び去って行方不明、ジャージもレーサーパンツもビリビリ、擦り傷だらけだが、本人は、あー、こけちゃいました、と明るかったのは幸い。
自転車レースはチームプレー、選手を一人失った日本チーム結局、入賞できなかった。でも本番は2月中旬にタイ東北部コラートで行われるアジア選手権大会、ここで好成績をあげてリオ五輪出場枠を獲得して欲しいものだ。