チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

現代伊勢参り

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現代伊勢参り

剣客商売
「戦国乱世は遠い昔のことながら、武士の魂、やはり剣。あえて戦がなければこそ、腕に覚えの剣客どもは、売り込み合戦に明け暮れる。いや、まさしく昨今、剣術は商売なり」。橋爪功のナレーションをほとんど諳んじるくらいに、藤田まこと主演、フジテレビ放映の「剣客商売」を見続けている。「剣客商売」は池波正太郎の原作、小説新潮に1970年代から80年代にかけて連載されていた。母が、オール読物、文芸春秋中央公論、それに悪書であった婦人公論などと一緒に小説新潮を購読していたので、「剣客商売」を毎号、愛読していた。ドラマを見ていて、原作の筋をうっすら思いだすことがある。

藤田まことはもとより、大滝秀治山本学北村和夫米倉斉加年日下武史内藤武敏、夏八木功、古谷一行など多くは鬼籍に入った名優の演技を見るのが楽しみである。原作がしっかりしているせいか、登場人物の台詞もそれほど違和感がない。時代考証家、稲垣史生先生ご存命なれば、幾つも突っ込みどころがあるのだろうが、今時のテレビ時代劇に比べると安心してみていられる。

■路銀がなくても
時代は明和、安永の江戸中期である。田沼便という速達は江戸から上方まで3日で着いたというし、物品、人の往来も盛んであった。明和8年(1771年)に山城・宇治で女・子供が着の身着のまま、伊勢参りに出かけるという事件があった。明和のお陰参りの発端である。当時の人口3100万人のうち200万人がお陰参りに参加したという。彼らの旅費は街道沿いの篤志家の「施行」によって賄われた。無一文で出かけた子供が帰ってきたら結構の銀を持っていた、という記録もある。

剣客商売にお陰参りの場面はないが、当時、路銀なしに旅をすることは不可能ではなかった。敵討ちのため諸国を流浪する武士(日下武史)が目を患い、ほとんど廃人になる。病身の彼を支え、共に旅する老僧(内藤武敏)、実は武士が追い求める敵そのもの。秋山小兵衛の一子、大治郎は街道で二人に出会い、思わず「ご報謝」と言って幾ばくかの金子を差し出す。「ご報謝」でなくとも一夜の宿を貸したり、握り飯の一つも「ご接待」するのは普通だったのだろう。今でも四国八十八カ所の巡拝にその名残はある。

■おばさん登場
友人の家に日本人女性がやってきた。タクシー運転手が言葉が通じず、困って彼の家に連れてきたのだ。彼女は50代後半のおばさん。「海外で介護活動を推進する会代表」という名刺を友人に見せ、北タイに介護施設を作りたい、という。老人たちがアパートを借りて、自分や元気な老人が体が不自由になった仲間をみる、という話だ。タイ人の嫁さんがいるのにどうして一人でアパートに移り住まないといけないのか、またゴルフや旅行を楽しんでいるのにどうして、爺さんの介護をしなければならないのか、自分は一銭も出さないところから怪しい話だが、友人は女性の話を聞いて、介護ならこの人、と自分のブログも紹介したらしい。

女性はたまたま訪ねてきた邦人にチェンライを案内してもらった後、ホテルに帰った。そのあと友人達には何度も電話、メールが来て、どこそこへ行きたい、ホテルを替わりたい、など細々した用事を頼んできた。

■ご報謝の心
知人が調べたところ、この女性はタイの邦人社会ではかなり有名人ということがわかった。まずミクシィやFブックで書き込みをして、相手を誉めあげる。何度かやり取りがあった後、実はタイに行くので泊めてほしい・・・。
通常タイの家は広いし、ご飯代だってたかが知れている。どうぞ、というとやってきて1週間ほど滞在する。とにかく何もできないので人に頼る。バンコクで彼女を泊めた人はタイ人の嫁さんをチェンライまで同行させた、という。こういった形でタイをはじめ東南アジアをまわっているらしい。

2チャンネルでは「詐欺女」と炎上しているが、聞くところ、お金を借りたり、盗むようなことはしない。NGOです、と言って現地の邦人の好意にすがる。それだけである。人の家に泊れないときは一泊300BほどのGHに泊る。GHを探したり、予約するのは現地の邦人にやらせる。

60近くとは言っても、女性だから皆、鼻の下を長くしたのでは、とからかうと、「そんなご面相ではないです」と言下に否定された。本人は憤懣やるかたないといった表情だったが、実害があったわけではないのだからいいではないか。

「ご報謝」を当てにして女一人海外旅行ができる。
「大治郎よ、いつの世でも日本人の心は変わらぬものよのう」と秋山小兵衛ならそう言うにちがいない。



写真は近くのお寺で行われた棟上げ式の様子。
屋台は塩味のパンにアイスクリームを挟んだ10バーツのサンドイッチ