チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

能力を優先する社会

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能力を優先する社会

■瞬間最高視聴率50.4%
ビデオリサーチの調査によると、TBSのテレビドラマ、「半沢直樹」最終回の平均視聴率が関東地区で42.2%だったという。関西地区では半沢が頭取から子会社への出向を告げられるシーンの直後、瞬間最高視聴率50.4%という驚異的数字を示した。
ドラマの視聴率が40%に達するのは、2011年12月に放送された日本テレビ系の「家政婦のミタ」最終回の40.0%以来。平成の民放ドラマではトップを記録した。

銀行にいた友人によれば、「昔の銀行の大蔵検査対応はあの通り、書類を女子ロッカーに隠したり、融資審査書類を「大蔵省検査」のために徹夜で書き直したりしてました。あそこまで現実バラして良いのかなと心配してました」とのことだ。ドラマが真に迫っているのは原作者の池井戸潤氏が元三菱銀行員で、銀行内部の状況をよく知っているからだろう。続作も企画されているし、島耕作のように半沢がトップまで上り詰めるという話もあるから楽しみである。

■黒崎統括官
ドラマでは脇役の香川照之(大和田常務)、片岡愛之助(黒崎大阪国税局査察部統括官)等の演技が光る。特に傲慢かつヒステリックでありながらおねえ言葉でしゃべる黒崎統括官は秀逸。半沢に出し抜かれ「あの半沢という男、うざいのよねえ」と言って斜め上を見る目つきは凄味がある。

片岡愛之助という俳優は知らなかった。ネットで調べてみると歌舞伎役者である。もともと梨園の出身ではなく、父親はスクリュー製造の工場を経営していたという。子役でテレビ出演していたが、その才能と歌舞伎への関心の高さを片岡仁左衛門に見出され、片岡秀太郎の勧めで片岡一門の部屋子へ転身。長男であったが片岡秀太郎の養子となって六代目片岡愛之助を襲名、上方歌舞伎で活動中。愛称はラブリンで関西では人気の役者という。

■実力本位
坂東玉三郎は現代の歌舞伎界をしょって立つ立女形であるが、彼も実は歌舞伎とは縁のない料亭の息子として生まれている。6歳の時、小児麻痺後遺症のリハビリとして始めた日本舞踊で才能を現わす。稽古に通っていた縁で守田勘弥の部屋子となる。のちに勘弥の養子となって五代目坂東玉三郎を襲名する。

「部屋子(へやご)」とは、歌舞伎の場合、子役の時分から幹部俳優の楽屋にあずけられ、鏡台を並べて楽屋での行儀から舞台での芸など、役者として必要なことを仕込まれる立場をいう。いわば幹部候補生として英才教育を受けるわけであるから、まだ正式な歌舞伎役者の資格である名題資格を取得していなくとも、名題と同格の扱いをうけることになる。いわゆる「御曹司」は有力な俳優の子弟をさすが、部屋子というのは何らかの理由で親以外の幹部俳優に預けられる御曹司も含めた呼称といえる。

歌舞伎ではこうした部屋子制度を維持する一方で、名題下(大部屋俳優)から実力で大看板にまで昇りつめる道も確保しておくことで、たえず新しい血と才能を採り入れてきた。ただし御曹司も部屋子も、成長して一人前の俳優になるには、日本俳優協会の行う名題資格審査試験を受けて合格する必要があるので、その点はほかの名題下俳優とかわらない。

中村屋成田屋の家に生まれたからといって自動的に名跡を継げるわけではない。実力、能力優先の世界なのだ。

■能力か、家柄か
江戸時代、大店(おおだな)といわれる商家では、跡取り息子がボンクラだと、番頭の中から優秀なものを選んで娘と娶わせて婿養子にして家業を守るという方法をとっていた。大名家でも殿様が無能となると家来が殿様を押し込めにして、養子を迎えてお家の安泰をはかるということが行われた。

こうして見ると、伝統芸能や組織の存続には血統も大切だが、能力はもっと大切という考えがあるようだ。小普請組の御家人の倅でも、能力さえあれば海軍奉行まで出世できた。現代でも僻地の山村出身であろうと東大法学部出て公務員試験に受かれば、ま、能力があるということで中央官庁に入れるだろう。

まず能力、それに学歴、人柄、この3つが揃っていれば何とかなるという考えは世界標準ではない。チュラロンコン大学を出て、米国の大学で遺伝子工学修士号をとって帰国した若者が、就職口がなく、欧米系の航空会社のパーサーになったという。タイでは能力も大切だが、その前に家柄がよくないといけない。その若者はチェンライの貧農の出だったため、タイの一流企業には採用されなかったのだ。
少数山岳民族であれば大学を出ても就職は難しい。

才能さえあれば、誰かが見出してくれる、頑張ったらその分だけ可能性が増える、こういった社会を育んできた日本をすごいと思う。


写真上から「歌舞伎座」「坂東玉三郎」「片岡愛之助