チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ホェイモ村のブランコ祭り 5

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ホェイモ村のブランコ祭り(5)

■ 豚の解体
夜が明けた頃から、村は慌ただしくなってきた。こんなに男がいたのかと思うくらい、村長宅に男が集まってきた。
まず前夜から繋いであった20キロから30キロの小ぶりの豚を庭に引き出して、数人の男が手足を押さえつける。豚はピーピーと鳴き声を上げ、もがいている。豚の動きが一瞬止まったのを見計らって、男がすいと山刀を豚の胸に差し込む。刀を抜くと同時に傷口から血が噴き出す。これを予め用意した洗面器に取り移す。30秒ほどで血は止まり、豚はぐったりとなった。洗面器に一杯になった血は料理に欠かせない食材である。

山岳民族はタイ人と違って脂の多い黒豚を好む。黒豚はまるで猪のように毛が密生している。失血死した豚は焚火の中に放り込まれる。焼き豚にするわけではなくまんべんなく火にあてて、毛を焼く。煤で真っ黒になった豚の表皮を男達が匙でこそげとる。

鯛の鱗を取るのと同じですね、とIさんと話しあう。黒豚は毛を焼かれ、表皮を削り取られて、見た目、白豚となった。バナナの皮の上で男が慣れた手つきで豚の腹を切り裂き、四肢を切り離し、背骨を断ち切る。すべて山刀1本で作業する。豚の解体作業に女が加わることはない。屠殺から解体まですべて男の仕事だ。山岳民族を含め、アジアの男は日頃はブラブラしているが、祭りとなると異常に勤勉になる。

心臓がまな板の上に載せられ、ラオカオが供えられる。精霊に捧げるということだろう。

■ラープ
男達が、豚肉を山刀で叩いてミンチにしている。これに唐辛子などの香辛料、及び先ほどとっておいた血を混ぜる。これがラープだ。ラープとはもともとラオス語で幸福を意味する言葉で、ラオスの影響の強いタイ東北部イサーンのの名物料理である。アカ族の村では冠婚葬祭のときには水牛や豚を屠ってラープが供される。

血を食材にすることは世界では当たり前である。タイでは生魚は食べないが生肉や血は普通に食べる。タルタルステーキやサラミソーセージが食べられて、タイのラープは食べられない、などということがあろうか。。

今日の朝飯には間違いなく、あのラープが出てくるに違いない。楽しみだ。

外では50キロはある大きな豚が屠られた。解体は道端で行う。道いっぱいにバナナの葉が敷き詰められ、そこを村の戸数35区画に分けて、1キロほどの肉、小袋入りの血などを置いていく。肉の量は不公平にならないように秤で重さをはかる。村人が洗面器を持って集まってきて、大豚は村の各家族平等に分けられた。新鮮な肉と血を使って各家庭でもラープを作るのだろう。

■9時から朝食
朝4時過ぎから起きていたが、皆さん忙しそうに働いていて、食事はなかなか出ない。村長がソフトドリンクと豚モツの唐揚げを持ってきてくれた。カリカリに揚げたモツに塩を振りかけたものだが、新しいだけに本当にうまい。これでビールがあったら最高である。

9時にテレビクルーがやってきた。村長はクルーの朝食を用意していたのだが、GHで食べてきたのか、村長と我々2人だけの食事となった。ラープはもちろん臓物スープ、豚肉唐揚げ、豚皮サラダなど。
茹で野菜やご飯にちょっと漬けて食べる辛子味噌、ナムプリックはタイ料理の定番である。ここのナムプリックは液状で真っ黒だ。村長に聞いて見ると豚の血ナムプリックだという。恐る恐る匙ですくって口にしてみると思いの他、甘みがあっておいしい。この村だから味わえる逸品だ。

村長宅にはその後、着飾った婦人たちが集まり、楽しそうに食事を始めた。今日も祭りの続きがあるのだろう。
自分とIさんはあまり寝ていないし、お祭もアカのご飯も充分堪能したので、アカの食材を取材していたクルーに挨拶して山を下りることにした。少ない額だが村長が我々の心付けをすんなり受け取ってくれたことはありがたかった。

■テレビ出演
タイPBSから収録番組の放送予定日が1週間早まった、と連絡があった。放送2日前だ。この国では月間TVガイドはないのだろう。
我々の収録時間だけでも20分以上あったから、どんな形で出ているかと期待した。でも番組では祭り会場で、2人がお餅をモグモグ食べている場面が10秒ほど出ただけだった。女中さんの話だと、日本人が2名来ていて、お餅を食べていました、タイ語を少し喋りました、といったナレーションがかぶさっていたそうである。我々がブランコの前を横切るショットがいくつかあったが、これは本当はカットしたかったのではないか。

タイでのテレビ初出演は無言で餅を食べ、カメラの前をウロウロするだけという不名誉な結果に終わった。


写真上の三枚は「豚の解体」その下「ラープ、血のナムプリック」「各戸配分」「豚モツ唐揚げ」