チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ホェイモ村のブランコ祭り 4

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ホェイモ村のブランコ祭り(4)

■ 夜の踊り
日帰りのブランコ祭り見物が、結局、村長宅に一泊することになった。夕食を食べて、くつろいでいる時に外でアカの伝統的な踊りが始まった。

踊りの会場になった道路沿いのテントには小さな蛍光灯はあったがほとんど暗闇である。クルーは電池式のLED照明器を持ち出した。折り畳み式で広げても20センチほどの小さなものだが、ビデオ撮影に充分な明るさがある。照明というと、昔は大型で、近くに寄るとやけどをするのではないかと思うくらい熱を持っていた。そして点灯、消灯の時にはバタンと大きな音が出たものだ。それが今では片手に持てる大きさになっている。熱も出ない。技術の進歩は素晴らしい。

アナウンサーのパットさんも女性に交じって、竹筒をトントンと打ちつける。ナンミョーホーレンゲーキョーの法華太鼓とほぼ同じリズムだ。踊り手は年配の女性が多いのだが、少し離れた所で少女たちも合わせて竹筒を打ちつけている。こうしてリズムや歌を自然と覚えていくのであろう。

踊りをバックにパットさんが村長夫人にインタビューを試みたが、いまいちタイ語が通じないようで、他の女性に代わった。この村では年配の人はもちろん、30代の人でもタイ語が流暢というわけではないらしい。

道を隔てた家の庭にはいくつかのテーブルが置かれ、男達が酒を飲みながら、時折、ホーイといった掛け声をかけている。赤い鉢巻をした老人は、アカ語でピマとかジュマと呼ばれる宗教指導者なのだろう。男達はビールやラオカオを飲んでいたが、ラオカオは市販の瓶入りだった。数年前はアカ族がビールを飲んでいるとびっくりしたものだが、この村も酒を買えるほどには豊かになってきているのだろう。

この踊り、テレビのためのヤラセですかねえ、などとI さんと話していた。ところが気がつくとテレビクルーが一斉に姿を消していた。時間は9時、パットさんはアカの衣装の着付けに15分かかったと言っていたが、脱ぐのには1分もかからなかったのだろう。
踊りはクルーがいなくなっても続いた、というより佳境に入ってきたというべきか。竹筒を打ちつける単調なリズムが踊り手を法悦境に招くのであろうか。竹筒を左右に振る珍しい踊りも披露された。

■暗闇の中の水浴び
この日は疲れてもいたので、10時前に村長宅へ引き上げた。2階の奥まったところが木壁に仕切られた個室になっている。従来は娘さんの寝室だったらしい。イケメンのブロマイドが何枚か壁に貼ってあった。ここが二人の今夜の寝場所。

寝る前にシャワーを浴びに行った。水浴びをする部屋は母屋から離れていて、途中は真っ暗だし、水浴び部屋には電気が点かない。曲がりなりにも村長の家なのだから温水シャワーくらいあるかと思ったが考えが甘かった。手探りで蛇口をあけ、水槽に溜まった水を体に掛ける。冷たいのは最初だけで、あとは冷水が体に心地よい。

さっぱりしたところで寝所に戻ったが、外ではまだ踊りが続いている。竹筒、シンバル、太鼓の音がほとんど枕もとで聞こえる。テレビのヤラセではなく、村人が心から楽しんで踊っているのだろう。踊りは結局、12時過ぎまで続いた。

■朝の踊り
朝4時に一番鶏が鳴いた。すると部屋の外で、ごそごそと人が起きる気配がする。バカに早いじゃないかと布団にくるまっていたら、つい3時間前に中断した竹筒リズムが力強く聞こえてきた。昨晩と違ってに賑やかな音楽も聞こえる。とても眠れたものではない。夜明けにはまだ2時間はある。
テレビクルーと一緒に山を下りてゲストハウスに泊り、ゆっくりと睡眠をとればよかった、と思ったが、待てよ、村に泊ったからこそ午前4時からの踊りを見る貴重な経験ができるのだ、と身支度し、外に出てみた。

普段着のおばちゃん連が、竹筒踊りをやっていた。近くに止めたトラックから大音量のタイかアカの民謡が流れている。この音楽に合わせてトントンをやっている。これでは村中の人が飛び起きてしまう。暗闇から顔を出した自分を見ておばさんたちは一瞬びっくりしたようだが、またすぐ楽しそうに竹筒リズムを刻む。踊りの外で一人のおばさんがラオカオの瓶とウィスキーグラスを持って、踊り手一人一人に注いで回る。皆一気飲みだ。朝早くてもおばさんたちが元気且つご機嫌な理由がわかった気がした。

竹筒を板や床に打ちつけて出る軽やかな音は、天国の門をノックする音であるとか、死者が天国への階段を上る時の足音をイメージすると聞いたことがある。天国の精霊たちもこの日は良く眠れなかったに違いない。(続く)

一番下の写真は朝の踊り