■ 結婚式
2月に三男の結婚式があった。昨年、2月に式あげるんだけど来てくれる？、という打診があった時は、何でそんな寒い時にやるんだよ、冬の式服も買わなくちゃならない。どうしようかな、と正直思ったものだ。しかし、挙式するのは日本でなく、インドネシアのバリ島だという。ご両人の趣味がサーフィンで、その縁で挙式はバリ島で、ということになったらしい。
バリならタイから近いし、暖かい。式服など着なくてもいいだろう。それじゃ行くよ、と答えておいた。自分が左足首を骨折した時、参列できるかどうか息子は心配したようだが、2月はもうギプスが取れていたし、別に結婚式で走り回るわけではないから予定通りバリ島に行った。
もともと女中さんたちは兄と自分が2ヶ月くらい日本に帰ってくれないか、などと言っているくらいだから、数日間の留守は何も問題はない。
母の日常は安定している。7時半起床、清拭、朝食、ベットで一休み、昼食、午後にシャワー、夕方に整体師が来て女中さんと1時間の整体、夕食、就寝というサイクルだ。テレビやラジオにはもう興味を示さない。脳の右側が委縮しているため、左目はもう見えない。左足も曲がったままなので、自分から歩くことはできない。ベッドと長椅子中心の生活だ。女中さんにしてみれば歩き回る兄や自分に比べれば手間がかからない。
孫のXXの結婚式に行ってくるから留守番していてね、こないだまで赤ん坊だったXXがお嫁さんもらうんだって。母は「そうなの」とはいうがどのくらいわかっているのか心もとない。
■海辺の教会で
以前、有名お笑いタレントがバリの５星ホテル、コンラッド・バリで結婚式を挙げた。その模様が放映されたため、ここが人気の結婚式場となっているらしい。
コンラッド・バリはアゴダで調べても、一泊2万円以上する。ついこないだまで一泊500円のゲストハウスを値切るような外人とラオス旅行をしていた。とても予約する気になれない。幸いコンラッド・バリの近くに新しくできたホテルがあった。宿泊費もそこそこ。実は近くに一泊2300円のGHがあったのだが、同行者がそれはねーだろうというのでやめた。
式はホテルの広大な庭の一角にあるガラス張りの教会で行われた。背景は青い空、白い雲、そして白波の打ちよせる海原だ。
バリではフライフィッシュというマリンスポーツが盛んだ。イカダのようなボートに乗り、モーターボートで引っ張ってもらう。スピードが乗ってきて、向かい風を受けると大空に飛び上がる。結婚するカップルは天にも昇る気持ちと思うが、司祭の後ろを実際に空に浮き上がるフライフィッシュが通り過ぎていく。
バリで結婚式を挙げるメリットは、まず参列者が少ないことである。会食の際、変な余興を見なくてすむし、両家を代表して父親が一席述べる必要もない。また服装も自由だ。自分もさすがに長ズボンを着用したが、足はサンダル履き。これはまだ足が腫れていて靴が履けなかったためである。
新郎新婦が、これから貯金頑張って、チェンライに母を見舞いに行くからと言ってくれた。二人とも仕事が忙しいようだが、いつか来てくれるといいなと思っている。
■バリから帰って
日本から来た連中は食事に行っても観光に行っても「安い、安い」を連発していたが、自分はバリの物価の高さにびっくりした。ビンタンの瓶ビールが350円、缶ビールが150円、タイの倍以上である。ガソリンは産油国だけあって、リッター45円と安かったが、それを除けば相対的に物価は高い。物価のことを考えるともう東京での生活は絶望的、チェンライにしか住めない人間になってしまったかもしれない。
バリではキンタマーニ湖に行き、ケチャ踊りを鑑賞し、プールや海でも泳いだ。足の回復も順調だ。
帰国してすぐに術後検診のため病院に行った。トコトコ診察室に入って来た自分を医師が目を丸くして見ている。どうして松葉杖を使わないの、捻ったりしたら、このボルトと金属板がぽろっと外れちゃうんだよ、とレントゲン写真を指さしながら脅かす。
えっ、リハビリにいいかと思って無理して一生懸命歩いていました。あんた、幸運だったと思わないといけないよ。診察室にはスタスタ歩いてきたが、帰りは左足を引きずりながらゆっくり歩いた。
母はここ数カ月病院に行っていない。特に体調、病状に変化がないからだ。それに引き換え息子は入院、検診と病院通い。兄に、バリ島から戻ってから足の具合が悪くなったみたいと言われた。ボルトがポロリと取れると脅かされて急に足の運びがおかしくなってしまったようだ。テニス再開はいつのことか。
「キンタマーニ湖」「ケチャ踊り開始前」「ホテルのプールと海」「ホテルの教会」
