チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ラオス、アカ族の村を訪ねる 15

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ラオス、アカ族の村を訪ねる(15)

■かわいそうな国
「そういえば世の中には分かちがたいものがたくさんあるような気がする -男と女、山と平野、人間と神、インドシナとフランス」。

これはクリスチャン・モンデラというフランス人女性の書いた小説、「インドシナ」の冒頭だ。1930年代から1954年までの仏領インドシナが舞台。
この小説は1992年にカトリーヌ・ドヌーブの主演で映画化(監督:レジス・ヴァルニエ)された。映画は大ヒットし、1992年のアカデミー外国語映画賞を受賞している。映画でもヒロインが冒頭のせりふを呟くところから始まる。
カトリーヌ・ドヌーブ演じるエリアーヌはインドシナの大ゴム園を経営するフランス人女性だ。彼女の恋やインドシナ独立を軸に壮大なドラマが展開されていく。あらすじはネットでも見ることができるし、小説も映画のDVDもネット購入できる。

でも自分が衝撃を受けたのは、世の中の分かちがたいものの中にインドシナとフランス、とさらりと言える白人の神経である。勝手に分かちがたくされてしまったベトナムカンボジアラオスの人の気持ちは一顧だに考慮されていない。映画ではエリアーヌが現地人を鞭で思い切り打ちすえる場面があるが、それが植民地における白人と有色人種の関係をわかりやすく示すものといえよう。

■内戦に明け暮れた国
フランスは1899年にラオスを仏領インドシナ編入した。ラオスを統治するに当たってフランス人はベトナム人を行政職に多く採用し、ラオス人愚民化政策をとった。
大東亜戦争に突入した日本は仏領インドシナを攻略し、1945年4月8日 日本軍はルアンパバーン王国の王シーサワンウォンをラオスの王としてラオスを独立させた。シーサワンウォン国王は有色人種である日本人がフランス人を追い払ったことを暫く信じていなかったそうである。

しかしラオスの独立は長く続かない。日本軍が引いたと見るやフランスは厚かましくも再度インドシナを植民地にしようと本国から軍隊を送って来た。
オランダ軍もインドネシアに進駐した。マラヤにも英国軍がやって来た。
アジアを何世紀にもわたって侵略し、収奪し、やっと手に入れた独立をも踏みにじったのはどこの国であったか。ラオスベトナムカンボジアミャンマー、マレーシア、インドネシア、アジア各国の独立を援助し、タイにも英国に奪われた領土を返還した。それこそ当時の人民解放軍はどこの国の軍隊であったか。

ラオスは1949年にフランスの後押しがあって独立したのであるが、すでに国内に共産勢力パテトラオが存在していて、国は内戦状態となる。北ベトナムから南ベトナムの補給路、ホーチミンルートの90%がラオス領にあったため、ラオスは米軍による徹底的な爆撃を受ける。米国のCIAに訓練されたモン族がラオス王国右派に編入され、パテトラオと戦った。ラオスは30年に亘って内戦を繰り広げた。
1973年パリ和平協定が成立し、内戦にパテトラオが勝利、1975年に現在のラオス人民民主共和国が成立したが、その前後には右派に属した人々が大量に虐殺されている。

■中国ラオス自治区
バスから見える風景は山である。山は2次林ばかりだ。2次林というのは一度、山の木を切り倒してしまい、あとに生えてきた木々で成り立っている林のことだ。
15年ほど前、北ラオスを旅した人の話では山には直径2mを超えるような大木が林立していたという。北ラオスには沈香木、白檀など高級な線香の材料となる大木も多数存在していた。北ラオスと中国を結ぶ道路ができると北ラオスの山は一変する。大木は次から次へと伐採されて雲南省へ運ばれていった。JICAの資料によれば、ラオス国は1940年代には70%であった森林率が、2002年には41.5%まで低下しているという。

ラオス共産国家であるから山林は原則、国家の所有である。道路から見える山にはゴムの木が植えられている。ラオス政府は山林を中国の会社に55年リースで貸し出している。そういった山がゴム林になっているのだ。生産された生ゴムはもちろんすべて中国に輸出される。
時折、道路沿いに大きな工場があるが、その門には「雲南XX投資公司」とか「中華XX有限公司」といった中国語の大きな看板が見える。雲南ナンバーのトラック、乗用車も多い。
ラオスの輸出物の6割は金、銅などの鉱物資源である。最近はボーキサイト、鉄鉱石の大鉱山も発見されて、将来が期待されているが、鉱区の4割はすでに中国が押さえている。

中国とラオスは分かちがたく結びついているとか、中国にとってラオスは核心的利益などと中国は言わない。今更、そんなことをいう必要がないからだ。


写真は上から「ウドンムサイ行きミニバス」,その下の三枚は「車窓からのスナップ」、一番下は「雲南ナンバーの車」