チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ 4年

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介護ロングステイ 4年

■ 多くの人のお陰で
4年前の1月28日に母と兄と3人でチェンマイ空港に降り立った。丸4年、正確には本日28日からタイ生活5年目に入る。思えばあっという間の4年だった。月日のたつのも夢のうち、浦島太郎もきっと東南アジアのどこかで暮らしていたに違いない。

追いつめられるようにして日本を脱出し、チェンマイに着いたはいいが、タイでこれから暮らしていけるのか、環境の変化が母の病に悪影響を与えるのでは、と不安を感じていたのが昨日のことのようだ。

「お母様は幸せですね」と皆さんが声をかけて下さる。でも余命3カ月と言われた母が、衰えたと言えども息災に平穏に4年暮らしている。また女中さんはじめ多くの人の助けがあって、介護する我々の生活の質も東京にいた時と比べれば格段の差がある。
母が今の生活を幸せと思っているかどうかはわからない。しかし、我々は少なくとも今の状態を「幸せ」と感じている。

来た当初、母はいくらか元気を取り戻し、徘徊になるのではとこちらが心配するほど家の中を歩き回っていた。我が家を訪れる邦人にも愛想良く応対し、時にはジョークを飛ばして周りを喜ばせていた。
しかし、月並みな言い方だが、寄る年波には勝てない。だんだんと衰えてきた。ここ半年、整体を続けているがもう歩行は困難だ。整体師のジェニさんが女中さんと一緒に脇の下に腕を差し込んで母を立ち上がらせるのだが、まるで文楽人形のように足が心もとない。ジェニさんに「もう歩く練習はいいです」と伝えた。

両腕をとって立たせれば数秒は立っていられる。8年前、大腿骨を骨折して左足に人工骨が埋め込まれている。骨の自然収縮と合わないのか、立つ時に左足にはほとんど力が入らない。右足1本だけで体重を支えるから長くは立っていられない。

大吟醸も受け付けず
食事の時、長椅子に腰かけ、前に置いたソファに足を乗せる。以前は自分で両足を乗せていたが、今は右足のみ。左足は介助がなければ乗せることができない。食事は女中さんがスプーンで口に運ぶ。タイでは老人食としてバナナが使われる。赤ちゃんの離乳食としてもバナナは不可欠である。タイ人の一生はバナナに始まり、バナナに終わる、と言ってもいい。タイに来てバナナにも多くの種類があることを知った。母の食べるバナナは女中さんが特別に仕入れてくる。老人の体に良くないバナナもあるという。噛まなくても食べられる「筑前煮」とか「筍と鳥含め煮」のレトルトパックを日本から買ってきてある。しかし食べ過ぎてママさんの体重が増えると言って、女中さんがたまにしか食べさせない。食事の差配は女中さん任せになっている。

水はコップから自分で飲むこともあるが咽ることがあるので、女中さんが注射器で少しずつ口へ入れる。正月に到来物の大吟醸があったので、小さなグラスに入れて母にも味見をしてもらった。でもちょっと口に含むと顔をしかめ、身震いをして嫌がった。

決して母は酒が嫌いではなかった。タイに来てからもビール1缶の晩酌を楽しんでいた。ところがある日、もういらない、と言って、それ以来アルコール類を受け付けなくなった。

そんな母を見て、人間、飲めるうちが花、うまいと思えるときにしっかり飲んでおこう、が兄の口癖になっている。

■変わらぬことが第一
今年は例年にない寒波が日本を襲っていると聞く。チェンライにも寒波がやってきた。最低気温が15度を下回ると寒冷対策として貧困所帯に毛布が支給されるお国柄であるが、1月は最低気温12度台という日が何日もあった。日が差せば27-28度に気温が上がるのだが、曇っていると日中でも23-24度位だ。暖房設備はないから厚着をするか、ペットボトルの湯たんぽで凌ぐ。

寒さのせいか母が風邪をひいた。熱はほとんどないし、食欲も落ちていないのでそれほど心配はしなかったが、1,2日、声が嗄れていた。女中さんに飲まされた売薬がよかったのか、また元気に大声をあげている。大きな声を出すとね、みんなが心配するから静かにね、と言うと「わかった」と答えて、また大きな声を出す。
最近は「わかった」、「そうなの」、「ありがとう」といった短いフレーズしか話さなくなった。何か呟いている時もあるが、こちらが聞き取れない。

たまに「おかあさん、悲しい」という呟きが聞きとれると、こちらまで悲しい気分になる。でも、長生きしてくれるとみんな嬉しいからね、と大きな声で言う。すると「わかった」と答える。この繰り返しが今年も続けばと願っている。


写真はラオス、ボケオ県のアカ族の家です。
高床式、入母屋造り、テラス(サラ)があります。
屋根や壁は竹造りです。