チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

コラートのクメール遺跡 8

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

コラートのクメール遺跡(8)

■パノム・ワン遺跡
はい、クメール王国の神殿遺跡、パノム・ワンに間違いございません。同じナコンラチャシマー県にあるピマーイ遺跡と同じく11世紀から12世紀にかけての建立。ヒンドゥー、バケン様式の伽藍配置、東向きに建っていますね。その後何度か改築されて、今は仏教寺院として使用されています。

で、クメール王国はですね、アンコール朝ともいわれ、東南アジアに9世紀から15世紀まで存在した王国、今のカンボジアの元となった国なんですね。

12世紀の初め、クメールにスーリヤヴァルマン2世という王様が出て、シャム人やモン人のいたチャオプラヤーデルタを攻め、チャンパ王国李朝と戦い、タイ中部、マレー半島ベトナム南部に及ぶ大王国を作りあげました。彼は寺院建築に熱心で、アンコール・ワット、トマノン、バンテアイ・サムレ、ピマーイ遺跡などのヒンドゥー教寺院を造営しました。おそらく、このパノム・ワンもその時、ピマーイと一緒に造営されたんでしょうね。

■仏教王
12世紀から13世紀にかけて、ジャヤヴァルマン7世という王様が出て、クメール王国は最盛期を迎えます。ジャヤヴァルマン7世はそれまでの王が信じていたヒンドゥー教ではなく、仏教を信仰し、アンコール・トム(ノーコー・トム)を始めとする一連の仏教寺院を建立したんですねー。ピマーイもその時、仏教寺院になりました。
彼の治世は40年近くに及ぶのですが、その間、多くの仏教寺院を造営、改築するために莫大な国費を費やし、そのためにクメールは衰退していったといわれているんですねー。

クメール王国ではね、王様が即位すると新しく寺院を建立すると決っていたものですから、アンコールワットの周辺には千以上の遺跡が残っておりますし、王国の勢力下にあったタイ中部、東北部にも多数のクメール遺跡が残っているんですねー。

■クメール遺跡
ま、タイ国内で有名なクメール遺跡と言えば、ピマーイ遺跡、パノム・ルン遺跡、カオ・プラ・ウィハーン遺跡ということになるのですが、その他にもスリン周辺のシー・コーラプーム遺跡、バーン・プルアン遺跡、ブリラム県のムアン・タム遺跡、シーサケート周辺のサ・カンペーン・ノーイ遺跡、サ・カンペーン・ヤイ遺跡など、魅力あるクメール遺跡がタイ国内にはたくさんあります。11世紀から13世紀、クメール王国の最盛期に建てられたものが多いのですが、中にはタイ最古、8世紀にさかのぼる神殿遺跡もあります。興味のある人にはたまりませんねー。

さて、パノム・ワン遺跡ですが、この遺跡は1990年に発掘され、2001年に修復工事が終わりました。でもね、この修復が実にひどい。中央祠堂にかぶせられたドームは白いセメント作りのように見え、12世紀に遡る砂岩造りの本堂とは色も違って、見るからにアンバランスですね。
これはね、陶磁器で言うところの「景色(けしき)」を台無しにしています。景色というのはね、形、色、質、つや、趣、つまり作品の深み、品格を表わすものなんですねー。

■修復作業
実はね、ピマーイ遺跡も1964年から69年まで、タイ文部省芸術局が修復作業を行っています。この修復にはフランスの専門家チームも協力した。
パノム・ルン遺跡、ここもね、1988年から17年かけて修復工事が行われている。この修復作業はアナスティローシス(部材再配置)という方法で行われた。アナスティローシスとはね、現場で発見された部材を用いて建造物を再建する、ということでね、修復とは分からないほど自然な感じに仕上がるのが特徴です。

それに引き換え、パノム・ワンの修復はいけませんねー。ま、周りの回廊は往時の趣が残っていますが、ピマーイやパノム・ルン遺跡で多数見ることのできた宗教彫刻がほとんどない。本堂の尖塔はまるで白いお椀を被せたようで、全くヒンドゥーらしさが感じられません。やはり砂岩に彫られたヒンドゥー神や天女が躍動していなければ、クメール神殿遺跡と呼べませんねー。

でもコラートから北東へ20キロ、市内から一番近いクメール遺跡ですし、まだ拝観料は徴収されませんから、手軽にクメール遺跡を見たい人には向いているかもしれません。

■結論
というわけで、お値段は本人評価額とかけ離れたものとなってしまいましたが、これからクメールの遺跡がどんどん出てくるというわけでもありません。価値が上がることも考えられますが、何よりもご本人がいいと思われるのが一番です。

これからも是非、大切になさって下さい。


写真上から、「パノムワン全景」「修復中の尖塔」、以下その他遺跡。