チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

麻薬撲滅決起集会

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麻薬撲滅決起集会

■女中のジンさん
サオさんが豪邸を建設中で、4,5月と工事監督のために村に帰っている。サオさんの代わりにジンさんという45歳になる女性が来ている。
市内から15キロほど離れたメーヤオの村の出身。カレン族とのこと。メーヤオにはカレン族のほかアカ族、ラフ族の集落がある。少数山岳民族と言っても全員が山奥に住んでいるわけではない。

自分が山岳民族に興味を持っていることを知って、メーヤオでアカ族など山岳民族の集まりがあるから一緒に行かないか、と誘ってくれた。お祭りなのだろうか。9時過ぎに行って食事をして帰る、ということだが、どんな集まりであるのかはわからない。

メーヤオは家から車で30分足らずで着く。国道を右に入ってデコボコ道を5分ほど登って行ったら、交通整理の警官がいた。会場はノンパクナム村の広場。広場を挟んで村人のテントと、役場、警察などお上の人々専用テントが向かい合わせに張られている。

ジンさんがジェサダという青年を自分の通訳として紹介してくれた。カレン族には流暢な英語を話す人が少なくない。この集まりはお祭りではなく、メーヤオ地区の官民共同主催の「麻薬撲滅決起集会」と教えてくれた。

■北タイは麻薬王
北タイと言えば反射的に麻薬というほど、北タイは麻薬と縁が深い。ヤーバー(覚醒剤)、ガンジャ大麻)それに阿片、ヘロイン何でもあり。今でもドラッグ目的で北タイを訪れるファランは少なくない。

覚醒剤やヘロインはミャンマーが主要製造元で、北タイを経由して国内に流れ込む。現地新聞には麻薬関係者と警察の銃撃戦のニュースが時折報じられる。大きな金をつかむには危ない橋を渡らなくては、と麻薬の運び屋になり、警察に捕まる山岳民族はあとを絶たない。

タイでは麻薬がらみの犯罪は原則的に死刑となっている。麻薬所持のため逮捕され、現在タイの刑務所に収監されている邦人がいるが、刑期は25年という。とにかく麻薬に関しては刑が厳しく、タイで服役中の囚人の8割は麻薬関連と言われている。
国連の各国薬物犯罪発生件数一覧によると人口10万人当たりタイの麻薬事件発生件数は429件、日本の22件に比べると圧倒的に多い。
それだけ麻薬が生活に浸透しているともいえる。

■麻薬焼却イベント
お上専用テントの前にドラム缶を半分に切った台が置かれ、台の上に村人が阿片吸引パイプや阿片をいぶした皿、あるいは大麻樹脂入りの袋を置いていく。本日のハイライト、麻薬焼却式のために各自、家から持ってきたものだ。昨日まで吸引していた、ということははっきりしているが、本日に限りお咎めなし。お上にも慈悲はあるぞ、ということか。

会場に集まった村人はカレン、アカ、ラフ族など50人位、子供、老人中心で、お茶とロールケーキが接待されるので仕方なく来ましたというやる気の無さが漂う。村人より役場、警察関係者の方が多い。

村人代表やお上の人の「成果発表」の長い演説が続いたあと、集められた麻薬や吸引道具にガソリンが掛けられ、火がつけられた。みんなで拍手し、村人と関係者が会場入り口の「麻薬没滅キャンペーン」と書かれた大きなボードの前で集合写真を撮って、式は無事終了した。

■貧困を無くすことが
ジェサダ君は20歳の頃、覚醒剤をやったことがあるという。でも体に悪いと思って村を出て、キリスト教の学校に入り、薬から足を洗った、自分でやめられた、と嬉しそうだった。今の仕事は教会の牧師さんの手伝いとのこと。

式が終わった後、役場の人が村人の出欠をとり、首からかける名札を渡している。これから20日間、役場の人が村に泊まり込み、各家を回って、例えば「アトゥさん、麻薬やってないですね」と家の中を確認して回るのだそうだ。阿片の煙の臭いは特徴があり、誰にでもすぐ分かる。覚醒剤は面談して様子を見るのだろう。そして、どうしても薬をやめられない人を調べ出して、警察や矯正施設送りの措置を取るという。

だから20日間はなんとか我慢するが、役場の人がいなくなったら、また薬を始める人は出てくる。村人のうち、麻薬中毒患者の割合は20%、麻薬経験者の割合は50%という。

この麻薬撲滅キャンペーンの催しは、今回で3回目だそうだ。2年に1回くらいの割合で開催される。第1回目の時、集まった吸引道具や麻薬がうずたかく積み上げられるほどあったという。ジェサダ君曰く、「だんだん出す人が少なくなってきたなあ」。

吸引具の提出が少なくなったのはキャンペーンの効果と信じたいが、麻薬問題は貧困と密接な関係がある。麻薬撲滅にはまだ時間がかかりそうだ。

写真上から「ジェサダ君とジンさん」「集まった麻薬」「集合写真」「集まった村人」「麻薬吸引パイプ」「吸引具焼却」