チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

塩の井戸 1

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塩の井戸(1)

■旅に出よう
週に3回のタイ語授業、3,4回のテニス、それに週2回アップしているブログの原稿書き、これがチェンライの生活をけじめあるものとしている。しかし、せっかく外国に来ているのに、ずっと家で過ごすのもどうかと思われる。知らない街に出かけて新しい体験をしてもいいのではないか。

女中さん達は兄と自分が家にいなければ、ご飯は作らなくていいし、朝寝はできるし、1週間くらいどこかお出かけになっては、などと勧める。幸い、母の状態も落ち着いている。女中さんの骨休めのためにもちょっと出かけるか。

3月にカリビアンのエンジンオイル交換に合わせ、タイヤを総入れ替えした。新品のタイヤだと1本4000B、中古タイヤなら1500Bとのこと。80歳の老人に50年以上もつ総入れ歯を入れる必要はないと考え、中古を選択。しかし中古でも4本のタイヤを入れ替えると、足回りがしっかりして、車が「バンコクだろうとプーケットだろうと何処でも行けますよ、お任せ下さい」と言っているような気がする。

2月に2泊ほど北タイの古都、ナーンを旅した。この時は日程の関係でナーン県のボークルアには行けなかった。ボークルアでは井戸から古代の塩水を汲んで、ミネラル塩を生産している。ボークルアの塩というと知る人ぞ知る幻の塩で、仄かな甘みがあり、料理の味を引き立てるという。茹で卵に付けるだけでもその旨さがはっきり分かるらしい。
授業を休んで塩を買いに行こう。

■塩の井戸
太古に海だった地域が、長い年月の間に陸となり、海水が地中に残存して地下水となったものがある。こうした地下水を化石塩水と呼ぶ。化石塩水となるまで数千万年から数億年かかる。ボークルアの塩水はまさに化石塩水である。

実は東京にもこの化石塩水が存在する。自分の住んでいた品川区に武蔵小山温泉という銭湯がある。銭湯ではあるが、化石塩水の天然温泉が売り物となっている。古代の海水に海藻や植物の成分が溶け込み、醤油のような色をしている。舐めるとしょっぱい。東京湾周辺の「黒湯」と呼ばれる温泉はすべてこの系統。雨水などの循環水ではないでの化石塩水の温泉はいずれ枯渇する運命にあると考えられている。

中国四川省南部にある自貢市は別名「千年塩都」、後漢の時代から塩井戸からくみ上げた塩水を乾燥させる製塩業が盛んに行われ、中華民国初期まで二千年にわたって経済繁栄が続いた。
近代に入り、西洋の製塩技術の導入で海塩や岩塩が輸入されるようになり、1930年には自貢市の製塩業は下火になった。しかし、今でも千mを越える深い井戸から塩水を汲みあげ、古来製法による製塩を続けている。自貢市の「井塩」は中国最高の品質と珍重され、四川料理の達人は自貢の井塩しか使わないという。

千葉県の館山市には神余の弘法井戸(かなまりのこうぼういど)という井戸がある。黄色味をおびた塩水が湧き出ており、地元では弘法井戸とか塩井戸、弘法水などと呼ばれている。県の指定有形民俗文化財となっている。

「昔々、この地に訪れた僧侶がある農家に立ち寄り、食事を求めたところ里人の快いもてなしを受けた。ところが出された料理には塩気がないものばかりだったため、里人に尋ねると塩が買えないと答えた。これを聞いた僧侶は礼に塩水を授けようと川に錫杖を突き刺し祈ると塩水が噴出し、井戸ができた。後日、僧侶が弘法大師とわかり、里人は感謝の意をこめて無量山来仰寺を建立したという」。

この井戸水は天然ガスを含んでいるため、飲用できないという。館山は海に近いし、塩が手に入らぬはずはない。弘法様が飲めない塩井戸を作ったとも思われず、全国各地あまねく存在する弘法井戸や温泉と同じく、いわゆる言い伝えに属するものだろう。

■美味しい塩
日本では塩専売法が施行されていて、塩というと限りなく純粋な塩化ナトリウムに近い再化学合成塩しかなかった。1997年に塩専売法が廃止され、グルメ志向と相まっていわゆる自然塩が復活した。しかし、スーパーで売られている天然塩と称される塩のほとんどはオーストラリアやメキシコから輸入された天然塩(ほぼ純粋塩化ナトリウム)に中国産や合成のにがりを添加して「再構成」したものだ。

きれいな海水を煮詰めて作った本当の天然塩も存在するが1キロ1000円はする。欧州から輸入される岩塩は海塩にはないミネラル、特に硝酸塩を多く含み、肉料理だけでなくハム、ベーコン、ソーセージ作りには欠かせない。値段はやはり1キロ1000円以上。

海塩、岩塩とも製法や産地により成分が微妙に違い、味も様々。さて、ボークルアの塩の味とはいかなるものか。

写真上から「ジアップ先生」「市営コート」「川縁のコート」